16. そういうことだったのね




翌日、話があると呼び出された空き教室。
最近何かと絡んでくる例の後輩ちゃんは、数人のお友達と先に待っていた。え、なに、いじめられるの?



「私、孤爪先輩が好きなんですよぉ」



そ う き た か 。
おかしいなとは思っていたけど、そうきちゃったかー。鉄朗じゃなくて研磨くんか… まあ研磨くんもステキな人だからしょうがないか。
それで、この子たちはどうしたいんだろう。私は研磨くんと仲の良いだけの先輩後輩の関係で、仲を取り持つことも研磨くんの性格上無理だろう。



「昨日の話だと、先輩には黒尾先輩も夜久先輩もいるじゃないですかぁ」

「は?」

「よりどりみどりなんですから、孤爪先輩くらい譲ってくださいよぉ。」

「譲ってって…」

「孤爪先輩ちょっと内気っぽいですけど、案外ヤバそうじゃないですかぁ。」

「わかる〜!ヤバそう!」

「……?」



なにが?なにがヤバそうなの?え、いまのわかったの?まじかよ、まさにヤバいな。
だいたい譲って、ってどういうことだ。残念なことに研磨くんはただの後輩でそれ以上の関係ではないし、そもそも所有物でもないので譲るなんて以ての外だ。人のことを譲るとか譲らないとか、とにかくそういう価値観で挑んでくることがまず間違っている。



「だからぁ、先輩は孤爪先輩から手を引いてくださいね?」

「いくら美人でも、三人も手ぇ出してたら罰当たりますよ〜」

「わたしたちは三人で一つなんで、何人いてもテキトーにローテーションするだけですけどねぇ」

「ごめん、ちょっと話が見えないんだけど…」

「はぁ?だからぁ、先輩は孤爪先輩から手を引けばいいんですよ。それだけです」

「あっでもお手伝いしてくれるって言うなら、それはそれでありですよっ」

「いいねぇ!可愛い後輩のために手引きしてくださーい!」

「きゃー、先輩ありがとうございますぅ!嬉しい!」



稀子、今までアンタが可愛い後輩、って自分で言ってたときに無視してごめん。アンタは可愛い。しかしこの目の前にいる三人はなんなんの… ちょっともう私わけわからないし疲れた。要は研磨くんから身を引けと?別に私は研磨くんに手を出しているつもりはないんだけど… むしろ研磨くんが私に、って感じは… ある…



「じゃ、そういうことでー よろしくお願いしまーす」

「お願いしまーす」

「お先でーす」



タイミングよく予鈴が鳴ると彼女たちはきゃっきゃと楽しそうにしながら教室を去って行った。ええっと… 私はこれからどうしたら?考えているうちに本鈴が鳴り、意図せず授業をサボる羽目になってしまったけれど、本格的にわたしはどうしたらいいのだろうか…





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