14. こんなところで会わなくても




神様、ねぇ神様
神様はわたしが嫌いでしょう?
ていうかもう神なんていないよね?そうでしょう?だからこうやって…



「……ひ、久しぶり…」

「そんなに久しぶりってほどでもないけど。」

「そうだね……」



研磨くんに遭遇しちゃったじゃん…
連休ばんざーい!って過ごして2日目、本屋さんに行こうと街に繰り出したらこれだよ!どうなってんの?!
通りを歩いてたら前方からやってくる赤ジャージのプリンヘアーは紛れもなく研磨くんで、ひぃ!なんて思ってる間にも研磨くんがわたしに気づいてこちらにやってきてしまった。慌てて辺りをキョロキョロ見渡しても、でっかい赤ジャージの姿はなし。なんで鉄朗いないのよ!



「……て、鉄朗は?」

「………顧問の先生と話してる。今度の試合のことで、」

「へっ、へー…」



なんで鉄朗の所在を聞いちゃったかなあ!絶対聞いちゃいけなかったよね、うん、さすがの私でもそれくらいわかるわ!研磨くんの表情だって一瞬、ほんの一瞬歪んだもの… ああ、どうしよう。



「…どこか行くの?」

「えっ、あ、本屋さんに行こうかなー、って…」

「ふーん… …行こうか」

「へっ?」

「本屋さん、行くんでしょ。行こう。」

「あっ… うん、」

「早く」

「はいっ」



急展開についていけない。やっぱり神様は私が嫌いですね?運命のいたずらとかそういうんじゃないよこれ… わけもわからないまま何故か私は研磨くんと一緒に本屋さんへ。私が欲しかった文庫本を探し、二人で雑誌を立ち読みし、それぞれ買って本屋さんを出ると一時間以上が経っていた。



「ごっごめんね、研磨くん練習帰りでお腹空いてたよね… 付き合わせちゃって」

「別に… 俺が連れてきたんだし、」

「…えっと… なんか食べに行く?」

「時間、いいの?」

「うん、特に予定はないから…」

「そうなんだ… じゃあ、行く?」



高校生二人が行くところなんて、頑張ってファミレス、でもファミレスは混んでそうだし、ということでファストフード店にやってきた。すいていた店内の四人掛けボックス席に二人で向かい合い、黙々とハンバーガーを食べる。半分くらい食べたところで、私はポテトを食べ始め、研磨くんがようやく口を開いた。



「…あのさ」

「へっ?」

「…今度、練習試合あるんだけど…」

「あ… うん、頑張ってね」

「……そうじゃなくて」

「ん?」

「…見に来てくれる?」

「えっ!……あー… えっと、」

「……暇だったら、見に来て…」

「いや、えっと暇!暇だよ!土日でしょ?暇だよ!見に行くね!」

「本当?」

「うん、土曜日?ぜんぜん平気〜!」

「…良かった」



安心したように小さく微笑んだ研磨くんに、少しだけドキッとした。あんまり笑わないし、言葉数も少ない研磨くんだけど、こうやってたまに微妙に動く表情がドキドキさせる。

きっとどこかで、私も研磨くんに惹かれてるんだろうな。そうやって自分も研磨くんが好きだって気づくまで、ほとんど時間はかからなかった。





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