閑話2. 後輩ちゃんの思うところ
「東子せんぱーい、お片付け手伝いますから一緒に帰りましょうー」
「いいよー」
「わーい」
眠くてだるい委員会の定期会議が終わった。すっかり外は暗くなっていて、時刻を見ても部活には間に合いそうにない。部長や顧問の先生にはそのまま帰って構わないとも言われていたので、使用した教室を委員長である東子先輩と片付ける。
「そんでー クロ先輩が…」
「クロ先輩クロ先輩ってあんた… そんなに鉄朗が好き?」
「だってかっこいいじゃないですか!」
「そう?一度もそんなこと思ったことないわ」
「先輩の目は節穴なんですか?!」
「なわけ」
「クロ先輩がかっこよく見えない先輩の目なんて潰れちゃえ!」
「残酷」
ようやく元の姿になった教室で、机の上に座って先輩が資料をまとめるのを待つ。私はクロ先輩が好きで、東子先輩はクロ先輩の仲の良いお友達。最初はそんなのも知らなくて知り合って、仲良くなって、二人が仲良いと聞いたときは少しつらかった。だって本当に仲が良いから。それからしばらくして、東子先輩は私がクロ先輩を好きなことを知ってすごく驚いて、そして笑った。あんなやつ?!って。だから東子先輩にとってクロ先輩ってそれまでの、本当にただの仲の良い男友達ってことなんだけど、でも、私は知っている。クロ先輩は東子先輩が好きだってこと。
「さーて帰るよ」
「はーい」
「ていうか部活は?いいの?」
「もう行っても片付けしてるだろうし、このまま帰っていいって言われてんで帰ります。」
「あっそう。…あ、研磨くん元気?」
「元気ですよー。ていうかこの前先輩にドーナツ貰ったって食べてましたよ。」
「あ、ほんと?嫌いだったらどうしようかと思った」
「でも研磨くんの好きな食べ物はアップルパイですよ」
「知ってるよ」
先輩は笑いながら、昔鉄朗に聞いたの、なんて言った。先輩がまだ研磨くんを知らなくて、根暗くん、って呼んでた頃のこと。偶然にもその根暗くんこと研磨くんと知り合いになったあとに、クロ先輩がその話をしてくれた。そのときのクロ先輩ときたら、ぱっと見いつも通りではあったけれどやっぱりどこか様子が違っていて、東子先輩と研磨くんが仲良くなるにつれて目に見えて嫉妬心を露わにしていた。
「先輩は、研磨くんとクロ先輩とどっちが好きですか?」
「は?」
「研磨くんとクロ先輩」
「二人ともただの友だちと後輩でしょ、なに言ってんの?」
「選ぶならどっち?って聞かれたら?」
「選ばないよ」
「…じゃあ二人に告白されたら?」
「なに、あんた今日どうしたの?」
「興味本位ですよー 可愛い後輩の質問に答えてくださーい」
「気持ち悪い」
「ちょっとー!」
タイミングよく話の途中で下駄箱についてしまい、先輩はさっさと自分の靴を取りに行ってしまった。渋々靴を履き替えていると、置いていくよーなんて聞こえてきた。私が待っててあげたのに!…とか言って先輩は絶対に私のことを放って行くことなんてないんだけどね。
そういうところ、クロ先輩と似てるんだ。クロ先輩と私の関係じゃなくて、クロ先輩と研磨くんみたいな関係。
「お腹すいたからコンビニ寄ろう」
「太りますよ」
「えー…」
きっと一生わたしは、先輩に追いつくことはできないかな。
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