10. サボリ、時々後輩




買い物を満喫した土曜日は、帰りにDVDも借りてるんるん気分で帰った。翌日も休みだからと借りてきたうちのDVDを何枚か見て、深夜になってきりのいいところで眠りについた。日曜日の朝は母親に叩き起こされ、何事かと思えば出かけるとのことでお昼すぎには両親は家を出て行った。週末までひとりでのんびりできるなんて!ステキ!
調子に乗ってまたDVDをずっと見ていたら夜更かしもいいところ、朝方になって慌てて眠りについたのだけれど、結局目覚めたら9時だった。諦めて二度寝をして、昼に起きて仕方なく学校に向かった。



「ふあーあ… ねっむ…」

「……東子?」

「……あれ、研磨くん」

「何してるの、こんな時間に…」

「研磨くんこそ、もう5時間目始まってるよ」

「お互い様じゃん…」

「ふふふ、寝坊したんだ。起きたら9時過ぎてて」



もそもそと準備をして、誰もいない家にいってきまーすと一言かけて家を出て鍵をかけて、いい天気だなーとのんびり歩いていたら学校まであと少しのところで誰かに声をかけられた。こんな時間に誰?と思って振り返ると、ここ最近よく会う後輩の研磨くんがいた。遅刻仲間か。



「昨日から両親がいなくてね、調子に乗って映画見てたら夜中になっちゃって」

「何見てたの?」

「TFシリーズ!それで慌てて寝てんだけど起きたら9時でしょ?さらに調子に乗って二度寝したらこんな時間になっちゃった。」

「親、いつ帰って来るの?」

「週末だよ。今週わたし大丈夫かなあ?」

「心配なら友だちに起こしてもらうとか、すれば?」

「そうなんだよねぇ。で、研磨くんはどうしたの?」

「…寝坊しただけ」

「部活の朝練とかってないの?」

「あるよ」

「…クロに甘やかされてるの?」

「ほんとに寝坊しただけだよ。いつもはクロ、迎えに来るから…」



とぼとぼとひと気のない通学路を二人で並んで歩いていると、遠くの方に学校が見えてきた。朝は音駒の生徒たちで混み合っている手前のコンビニも、のんびりとしていて不思議な感じがした。そうだ、アイス食べたい。そんな気がする!そう思ったらますますアイスが食べたくなっちゃって、遅刻は遅刻なんだからもういいや、研磨くんを引っ張ってコンビニに入った。



「研磨くん何にする?」

「アイス食べるの?」

「うん、私はねー、これかなっ」

「そんなに食べ切れる?学校すぐそこだよ」

「食べ終わってから行くよ」

「えー…」

「今から行っても遅刻は遅刻だよ、何時になっても変わらないって!」

「…はぁ」



まだまだ毎日暑いし、一番暑い時間帯に外を歩いていたからすごく暑い。研磨くん、ベスト着てて暑くないのかな?あと、男子のズボンって汗でくっついて嫌じゃないのかな?
研磨くんは歩きながらでも食べられそうなアイスにしていた。私はもなかとこの氷にしよう。二つ食べよう。あ、あとポテチも買おう、甘いもの食べたらしょっぱいもの食べたいし。
レジで研磨くんがお財布を出そうとしていたけれど、付き合わせたんだから私が払った。何より親が置いて行った食費かあるからね、いまの私は無敵です!



「はい、研磨くんのアイス」

「…ありがとう」

「ひゃー!冷たい!」

「…こぼしてるけど」

「ん、ああ、ほろっとけばいいよ」



その後のんびりアイスを食べながら学校に向かった。かなりのんびり歩いたけれど、さすがにアイス二つはなかなか食べきれなくて(途中で頭がきーんってなったし)、下駄箱について少し立ち止まって、ようやく食べ終わった。(その間研磨くんは律儀にも待っていてくれた。)
授業中の静かな廊下を歩いて、階段を上がったところで研磨くんとはお別れだ。旗から見たら暗くて地味な子だけど(金髪は別として)、研磨くんは知れば知るほどすごく良い子だ。バレーボールしている姿も見てみたい気がしてきた。別れ際に今度練習見に行くね、と言うと研磨くんは小さく微笑んで頷いてくれた。






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