*ゴミ箱から再利用。
(静雄氏の行動を読んだ脚本家新羅とそれにちゃっかり便乗する臨也以外のクラスメイトのお茶目さが書きたくて撃沈したお話。静雄視点)


















文化祭で付きものといえばクラスでの演劇発表だ。それもクラスで最も女受けする男と男受けする女がヒーローとヒロインに選ばれるなんていうのは言わずもがななことである。実際、俺のクラスはちゃんとヒロインは女だし、ヒーロー役にあたるやつはれっきとした男だった。

――と、言うのにだ。






「んだよ、コレ……」





文化祭当日。それも自分のクラスはいい演技をし、観衆から拍手喝采を貰った後でのことだった。基本的に前後のクラスは見られないため、他の組がどうなっていたのかは分からない。けれども、二つ後ろの臨也と新羅のクラスでの「春琴抄」にアレンジを加えたらしい発表を目の当たりにして、俺は開いた口が塞がらなかった。






「主役が両方とも男っていいのかよ……?」


「いいんじゃないのか?まぁあいつらのクラスが決めたことだしな」





俺の呟きに門田がすぐさま反応を返してくれたが、生憎今の俺に返事をする余裕はない。ギリギリと奥歯を擦り合し、必死に耐えていなければ間違いなく、俺はこの舞台をぐちゃぐちゃにしていただろう。何せ目の前の舞台では女物の綺麗な着物を召しこんだ臨也と見知らぬ男のラブシーンが繰り広げられている。恋人の俺と言う存在を残して。


もちろん舞台だし、クラスも違うし、それは仕方がないことかもしれない。けれどもなぜヒロインまでも男にする必要があるのかという疑問にうまく答えが見つからなくて苛立たずにはいられない。確かに臨也は着物を着せてしまえば女よりも綺麗だし、相手の男役も学年一カッコいいと言われた男だ。そんな二人が舞台上に立てば、確かに見栄えがいいというのも分かる。実際、新羅曰くこの組の舞台の前評判はやたらとよかったらしく、イケメン二人が主役となれば女だろうが男だろうがそれなりに関心をもっていた。


けれども、学年一イケメンと言われた男と同じように学年一可愛いと言われている女が居るのも確かにこのクラスだったはずだ。ならば、大人しく、俺の胃と、それからこめかみの血管のためにも、彼女をヒロインにしていれば良かったのだ。そうすれば男女からもっと均等な関心を寄せれたに違いない。


一体、どんな意図があっての男子の主役掛ける二なのか。それはなんの陰謀なのか。聞きたいことは山ほどあるが今はそんなことを聞ける状態ではない。なぜなら注目の二人が舞台の中央で今、現在進行形で、ヒーローとヒロイン役として抱きしめ合っているラブシーンの真っ最中なのだ。となれば、会場が俺に構うことなくどよめきたつのも、不本意だが、分かる。殺したい位に。










「――愛してる。俺はお前を愛している」



低音の、明らかにどこか熱の籠った雑音がマイクを通して観客側にも俺の耳にも響き渡る。それに周囲がごくりと唾を飲んだのが分かった。対する俺は叫びたいのをグッと堪えるしか出来ない。





「お前が例え、目が見えずとも俺がお前の目となろう。だから、なぁ、臨也。俺と、付き合ってくれないか」





目の前で臨也を口説く野郎は間違いなく男で、絶対に、これは俺の直感からして演技抜きでマジだった。それは「こま、ります……」という臨也のか細い声に明らかに混ざっていた戸惑いが証明している。これが台本通りではないことを何となく悟ってしまい堪らず唸れば、横に居た門田から落ち着けと声が掛けられた。

……が、もちろん落ち着いてなんかいられない。





「コロスコロスコロス………」





俺のかわいいかわいい臨也がなぜこんな公共の場で公開されなくてはいけないのか。そしてそもそもあいつには俺という男が居るというにも関わらず告白するだなんて果たして一体どういう了見なのか。学年一カッコよかろうが、なんだろうが許せねぇもんは許せねぇ。人の恋人に手を出した時点で殺される覚悟は出来ていて当然だ。





「――臨也、返事を聞かせてくれないか?」


「え、ーっと、その。あ、の……」




















台本通りの立役者
(すべては計算通りです)















「〜〜〜ッ!!臨也は俺のもんだ!手前に誰がやるかよ!!」


結局堪え切れなくなった俺が大声と共に臨也を舞台から連れ出すのは三十秒後のこと。


そして、俺たちの姿を見届けた新羅が、何かしらのナレーションを加えるまで四十五秒。そして体育館中が盛大な拍手に包まれるまではさらにその二十秒後のことになる。








11,12,12(mon)


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