ものは試しにやってみるのもいいじゃないか。



そんなこと言われたって困る。勝手に家に押しかけて、勝手に手足を拘束されて、気がつけば首輪まで付けられていた。見事に真っ赤なそれは、犬とか猫とかが付けてそうなシンプルなものだった。そのくせ、留めの部分がひっかけではなくて回転式のロックの施錠であるのが、質が悪い。素手で引き千切る自信はないが、普通のものだったらまだ何とかなったかもしれない。身動ぎに合わして鎖が擦れる音を聞くたびに、悔しくなる。







「どうしてそんなに嫌な顔をしてるんだ、折原。せっかく会いに来てやったというのに」



「お前たちに会いたいだなんて微塵も思っていない!」



「ツンデレなお前の言葉は信じられないからなぁ。どうせ今回もお得意の照れ隠しだろ」



「キモい」






思わず飛び出た言葉と一緒に込み上げてきた吐き気はなにも比喩じゃない。


目の前には、こちらにニマニマとした笑みを送ってくる大ッ嫌いな男が一人。そして、その背後ではその大ッ嫌いな男よりも一回り、いや二回り三回りも嫌いな男が、名前の通り静かに俺の手綱を握っている。これは一体どういうことなのか。頭の中に張り巡らされた疑問の糸は、辿っても辿っても答えを見せてくれようとはしない。



いや、実際は答えに辿り着こうとする前に何より、単細胞の馬鹿がやたらと身体に触れていくせいで答えが纏まらないと言った方がいいかもしれない。際どいところに手を滑らせては撫で回していくだなんて、日頃散々ノミ蟲呼ばわりしているくせにどういうことだ。俺が誰だか分かっているのだろうか。女じゃない、折原臨也だ。それすらも認識出来ていないだなんてやっぱりこいつは正真正銘の馬鹿としかいいようがない。






「や、めろ!! 変態!!」







寝巻のパーカが捲られて、素肌を嫌いな奴の手が撫でてくる。上へ上へとゆっくりと伸びてくるそれに、全身の毛が逆立った。







「離れろよ、気持ち悪い!!」



「あ゛ぁ?!」



「――痛ッ!!?」







天敵の行為への嫌悪を精一杯に叫んだ瞬間には悪寒はすべて吹っ飛び、今度は一気に全身の感覚がなくなった。夢を見ているかのように視界に靄がかかってくる。音もどこか聞きづらい。


売り言葉に馬鹿みたいに反応をした池袋最強が、俺の首から伸びている鎖を思いっきり引っ張ってくれたせいで、脳震盪を起こしたのかもしれない。アルコールが急激に回ってきたみたいに世界がぐわんぐわんと回転し始めて、息が苦しい。何かを叫びたいのにうまく言葉にもできない。折原臨也ともあろうものが言葉を失ったら一体この状況をどうしたらいいのだろうか。そもそも、九十九屋と平和島の二人を相手に逃げ出せる確率は一体どれくらいあるのか。ぼんやりする頭で今さら過ぎることを自問自答する。







「おい、平和島。言っておくが、キレて折原に傷がつくだなんてことは止めてくれよ」



「――あ、すいません」







体勢を支えていることができなくて崩れ落ちそうになれば、背後から腕が伸びてきた。そして、そのまま体を引かれ、大ッ嫌いなタバコ臭い胸に全身を預け凭れさせられる。一瞬、電気椅子を思い出した自分はまず間違いなく死を覚悟しているとそう思う。なんせどんな繋がりをもって二人がここに来たのかは分らないが、絶対に碌なことじゃないのは確かだ。秘書の波江が愛する弟と三泊の旅行に行った初日に、こうやって部屋に押し掛けてくるあたりには、手間もかかり、あまり人に知られたいことじゃないに決まっている。








「でもこいつ可愛くないんですよ。生意気な口ばっかりで」



「だから照れ隠しだと言ってるだろう? 童貞で、あまり人に触れられることに慣れてない折原にとって、そうやってお前に触られることは戸惑いを隠せないくらいの行為なんだ。優しくしてやれ」



「……そうなんですか?」



「おや、俺を信じないのか?」



「いえ、そんなことはないッス。だってあんたがいたから、俺は今こうやってあの臨也を抱きしめることができてるんスから」








――あぁ、最悪だ。災厄。
口に出来たら大声をあげて叫びたい。単細胞でどこか抜けてる馬鹿と九十九屋の相性は、まず間違いなくドンピシャだ。俺と信者たちの関係によく似ている。一種の信仰心が先行して周りが見えてない。それはシズちゃんの性格もあるだろうが、完全に九十九屋を田中トムと同等の位置にまで持ち上げている。いいように使われるだけだというのに。


こいつはもっと世界を知ったほうがいい。親切な奴ほど碌な奴はいないってね。







「とりあえず、まず三日間だ。薬は俺がミスらないように飲ましてやる。後はお前の好きなようにしろ」



「うっす」



「くれぐれも一気にイくなよ?先日言ったとおりまずは丁寧に優しくコツコツといけ。そうすれば心も変わっていくもんだ」






死刑宣告と共に、顎を取られた俺は、九十九屋に無理矢理口を開かされる。口内に入り込んでくる液体は、酷く甘い。




















お試し期間は三日間
(やってみなくちゃ始まらない人形劇)






















大変お待たせしました!以上が明香(あっか)さまのリクエストとなりますー!!

現在サンドイッチにハマっているので99+シズ→→→イザにしてみました(笑)
勝手にすいませんんっ…!

サンドイッチって考えたらシズちゃんと九十九屋がパンで、臨也はどんな具になるんでしょうか。甘めだとクリーム系なのか、シズちゃんが肉食ならチキンとかでもいいなぁと思います!チキン臨也かわいい(笑)



と、話はそれちゃいましたが、このたびは10万打リクエストに参加してくださいましてありがとうございました!

リクエストの返品はいつでも受け付けてますのでお気軽にお申しつけくださいませー!


11,10,09(sun)


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