「今度こそカラオケに行ってデリックとまともに歌いたい」



そう言った臨也は、俺の返事を待つことなく腕をぐいぐいと引っ張って無理やり近くのカラオケボックスに連れてきた。



実は、前にも一度だけ臨也と一緒にカラオケに来たことがある。


その時に知ったのは、臨也が、男ものや女ものなど関係なく、幅広い範囲で歌を歌うということだった。




ちなみに、俺はヘッドフォンは付けているものの日頃から曲なんてものは聞かないし、実は興味も無い。ただ何となく身につけているだけで、わざわざカラオケのために曲を覚えようという努力をしようとも思わない。



だから前回に至っては、正直室内の仄暗い雰囲気に飲まれてほとんどの時間を遊戯に費やした。


歌を歌いたいくらいくらいなのだからと、容赦なく突き上げて散々啼かしたわけなのだが、残念なことにそれは臨也の希望とは全くもって違うかったようだ。全てを終えた後に怒鳴られた挙句、臨也に泣かれてしまったのは記憶に新しい。





そんな前回の失敗を学んだ俺は今回、サイケを含め、いろんな奴からおススメの曲を教えてもらった。


もともと歌うことに関して抵抗はないし、男ものであればほとんど歌いこなせるのでまず問題はない。



もし、問題があるとしたら、それは俺が歌う曲に臨也が興味を示すかどうかというくらいだ。少なくとも俺はそう思っていた。











そんな俺の心の内を知るよしもなくさっきからリモコンを片手に曲を選んでいる臨也は、画面相手というのにニコニコとしている。いや、画面相手というのには、少し語弊がある。


チラチラと様子を窺えば、どうも操作画面そのものに面白いことがあるわけではないようだった。


さりげなく俺の歌う曲のリズムに合わせて、口ずさんだり身体を揺すったりしている辺り、この曲がお気に召しているらしい。








「――この曲、知ってるのか?」






間奏の間に臨也に訊ねれば速攻で、「俺もよく歌う曲だからね」と返ってきた。はにかむ笑顔が可愛い。







「そうなのか」



「うん。いいよね、この曲。聞いていても歌っていても爽やかで、なんだかとにかく歌詞が一途で力強い。特に君が歌ってたらなんだか――、」



「ん?なんだよ」



「続き、始まるよ?」









不自然なところで切れた話に疑問を浮かべながらも、続きを促されてしまっては仕方がない。マイクを握り締め、テレビ画面に出ている歌詞を読み直す。そして歌の再開までまだあと数拍という僅かな時間で、ちらりと向かいの様子を窺えば、顔を真っ赤にさせた臨也は操作画面を見たまま、微動だにしなくなっていた。










「『愛してるの言葉が 足りないくらいに君が好き  今すぐ君に会いに行くよ この青い空を跳び越えて』」













11,06,28(Tue)


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