生憎臨也の手足を抑え付けるために、俺の両手が塞がっていた。

そんな中で、「痛い痛い!!!」と喚きやがるからその煩い口を黙らせてやっただけ。


そう、ただそれだけ。俺は悪くない。




――悪くない、はず。















「門田くん落ち着いて!!話し合えば分かりあえるはずだから!!!」



「いや、絶対にこいつとは分かりあえねぇ!!!いくら臨也がぎゃんぎゃん騒いだからってしていいことと悪いことがあるに決まってるだろうが!嫁入り前の娘になんてことしてくれやがる!!!」






それなのに、今のこの状況は一体何なんだ。




俺の胸倉を掴み、右手に臨也のナイフを握り締めているのは門田京平。


比較的友好的に付き合ってきたはずの男の荒ぶりに、俺はどうしたらいいのか分からない。


そもそもこの男はこんなにも感情を表に出すような奴だっただろうか。いつも兄貴肌をしてるから全然気がつかなかった。


何より、今の門田の目はマジだ。新羅の反応を返すものの俺から目を逸らさないその血眼は、本当に怒っていた。







「門田くん!いくら娘のためとはいえ犯罪を冒しては駄目だからね!分かってるよね!!?」






対する新羅は、どうにか俺らを止めようと間に入ろうとしているが、身長が少しばかり小さいせいで、門田の視界には全く入っていないようだった。


ただ、存在を主張するかのように俺と門田の腕をバシバシと叩いている。







「母さん、止めないでくれ!俺はこいつを殺さないと気が済まない!!!」



「お父さん!!」



「いやいや、お前らいつから夫婦になったんだよ……」



「君は黙ってろ!!この尻軽鈍感男!!!」



「あ゛ぁッ!!?」



「あ、すいませんすいません俺の頭粉砕しないでごめんなさい。愛するセルティにあえなくなるなんてそんな僕には耐えられないというか彼女を残して先に逝くだなんてそんな、」







通常運転の新羅の頭を掴み持ちあげる。この行き場のない苛立ちを一身に受けさせるべく新羅に笑いかけてやれば、さっと顔を青くさせてじたばたと暴れ出しやがった。







「やめてよやめて!!!君には分からないだろうけど愛する人を残していくだなんて男として、」



「手前もぺちゃくちゃうっせぇな。黙らすぞ」



「止めてやめて!!キスはしないで!!!」



「誰がするか手前なんかに!!!」



「でも臨也にはしたじゃないか?!」



「はぁ?」







ふいに持ちあがった人物の名に、そういやさっきまで、俺が門田にではなく、俺が臨也の胸倉を掴んでいたんだったことを思い出す。


はっとして視線を門田の後ろに向ければ、自然と床に座って茫然とこちらを見上げている臨也と目が合った。


顔が、いや、肌が見えるところ全てが、茹で蛸のように赤く染まっている。


なんだ、熱でもあるのか?







「――まさか、無意識?」







新羅の声が静かな教室に響く。それと同時に俺の胸を刺した門田に、俺はその意味が未だ一人理解出来なかった。









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保存ボックスからリサイクルの二番煎じな小ネタでした!


ドタチンパパが臨也のために感情を露にしてたらいいなぁと(笑)
そしてそんなパパがおもしろくて乗り掛かる新羅ママと、意外とまともな反応を見せる臨也娘。

シズちゃんは完全に無意識だと彼らしいなと思う反面、当サイトのシズちゃんは臨也好き好きーっなのでこれをきっかけに自覚していったらいいなぁと思います!(そして嫉妬編に続く、と…たぶん)


11,06,24(Fri)


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