*ついったーでお世話になってるせいは様とちょこらさまとひらさまへGiftもの。お題CPは最後に!!
(自分の嗜好にゴーイングマイウェイしていますのでお気を付けください。たぶん甘いです!)















人の温もりが欲しいと思ったのはいつの頃だっただろうか。正確な時期は思い出せそうにない。


でも、最近のことだったとは思う。


見慣れた金髪が、俺の見慣れない表情で、あのロシア人の女の頭を撫でていた。


それを見てからというものの、やたらと人に触れられたくてたまらない。








もちろん。
誰彼かまわずということではない。


暑苦しい男は嫌。かといって顔だけの馬鹿も嫌。そして、下心が入った男は論外だ。そんな奴らは俺の身体に触れる権利すらない。


なら、どんな人物ならいいのかといえば、出来ることなら、ただなんとなくといった気持ちで自然と触れてくれる人が良い。


なぜなら、理想では、――口惜しいことに――、金髪の二人が辺りに振りまいていたようなイメージが良かったからだ。















「百(もも)――、もっと」




身を任せるようにして体を預ければ、百はいつものように、あやすようにして背中を擦ってくれる。それが堪らなくくすぐったくて、嬉しくて。百ともっと密着するために、俺は自らから顔を胸板へとひっつけて、背中へ腕を回した。



それほど、聞こえる彼の心音は、いつも心地良い。

黙って包み込んでくれる体温は、いつだって心地いい。







「折原は甘えん坊だなぁ」



「―――ン、」






クスクス笑いながらも髪を梳いたり、頬を撫でたりしてくれる百のことが俺はとても大好きだった。


それを示すように彼と会うのはもう両手の指では数えきれない。








「まぁそこが可愛いんだけどな」



「そんな戯れ言はいいから黙ってて」



「戯れ言って本心からなんだけどなぁ」










あの光景を目撃したその日。駅の階段から眩暈を起こし、落ちそうになった俺を抱き締めて助けてくれたことから始まった、彼との出会い。









化け物が人間に退化していく。平和島静雄が自分から離れていく。


そんなことばかりをなぜだか考えて、焦って、泣きたくなって。そして、駅に着くまで幾度となくフラッシュバックした他愛のない触れ合いに、もう化け物は帰ってこないと絶望して。


あの日の俺の意識はどこか朦朧としていた。





それは、「悩み事があるなら聞くよ」と、百に言われて、普段の自分だったらあり得ないほど、素直に付いていったくらいには酷い有様だった。





なぜ化け物が離れていくだけでこんなにも動揺したのか。


今思えば、それはつまり、俺は勝手にあいつに同族意識を持ち、そして反吐と呼ばれることを平然とやってのけるくらいにはあいつの存在を強く意識していたということだろう。


人は俺を愛さない。もちろん、俺同様に化け物も愛さない。



だからまだ大丈夫。俺は一人でも寂しくない。



そうやって中学の時に意識しだした人間愛を成り立たせるために、必死に自分に言い聞かせて、無理矢理前へと進んできた面が、少なからず俺の中にあったのかもしれない。


それこそ以前の俺は、どこか意地を張って、無理をして折原臨也を維持していたようにも思える。








だからこそ。
あの金髪の男女の光景を見て俺は焦った。


美女と野獣の話があるように、基が人間の化け物ならば、愛さえ知れば魔法が解けて、いとも簡単に人間に戻ってしまう。


そのことにふいに気付かされて。一人取り残されることが怖くて、淋しくて、子どものように怯えてしまって。


一緒のはずなのにと。一緒だったはずなのにと。これまた置いていかれたことに、いい知れない不安を勝手に感じて。



俺は、折原臨也という道から、ズルズルと一人転落してしまった。






――もう、一人ぼっちの世界は嫌だ。


そう心が叫んだ瞬間でもあった。










「なぁ、折原」



「なぁに?」







とまぁ、そんなことを百に公園のベンチで話を聞いてもらってはじめて気付かされた訳なのだが、それと同時に、自分も頭を撫であったり、抱き締めあったりしたら俺も何かが変われるかもしれないだなんて、そんな容易な発想に辿り着いたりして、今に至る。


誰かに触れてほしくて堪らなくて、身を預けた。それがたまたま百であっただけ。




でも、その発想は間違っていなかったようだ。


どうやら俺は思ったよりも人に抱き締められたり、触れられたりすることが好きらしい。


それも自分より大きな体で、包み覆ってくれるだけでいい。安心感。幸福感。全てのものから守ってくれていると錯覚するその感覚が、俺は好きだった。



特に、百は大好きだ。会う回数は他の誰よりも何倍も多いし、最近では百にしか会っていない。



いつの間にか、百は俺の中で心の拠り所になっていた。










「いきなりなんだが、驚かないでくれよ」



「うん?」



「――折原、俺と一緒に住まないか」



「……え?」








幸せすぎて俺の脳はついに幻聴まで生み出したのかと思ったが、どうやらそれは違うかったらしい。


突然告げられた告白に思わず顔を見上げれば、百の困った笑みが出迎えた。







「その様子じゃ信じてないようだな」



「だ、だって…信じてないも何もこんないきなり――、」



「いや、な。気を付けてはいたんだが、どうにも最近お前と離れるのが、何というかな、その、」



「うん、」



「淋しい、というか、手放したくないというか、」



「うん、」



「すまん、」



「なんで、謝るの?」














「どうやら俺は、お前のことが好きになってしまったらしい」、恥ずかしがるようにそう告げられて、抱き締められたら、もうダメだった。


顔が熱い。鼓動が小刻みに早く動き出して止まらない。背中に回した手が震えて、それを隠すように百のシャツを握り締めた。







「――なぁ、折原。まだ数十回しか会っていない俺のことを得体の知れない君の悪い奴だと思うかもしれない。けどな。物は試しに、でいい。俺と、一緒に住んでくれないか?絶対に幸せにする。お前に、寂しい思いなんて、させない」







言葉一つ一つを噛み締めて伝えてくれる百の鼓動が、自分と同じようにトクトクと小刻みに動いている。


幸せとはこういうことをいうのだろうか。愛されるとはこういうことをいうのだろうか。


人と触れ合うことで、何かが変わっていける気がする。そう思ったのはやっぱり間違いではなかったんだろう。








「――百となら、喜んで」








それは俺から自然と零れた笑みと涙が物語っていた。
























九十九と一の真実
(君と一つになってはじめて完成するハートの形)





















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担当CPは九十九臨。

百は言わずもがな九十九屋真一。現実世界では百となのって臨也に接触している九十九屋(臨也は百=九十九屋とは気付いていない)、という裏設定有りの九十九臨でした(笑)


九十九臨・ラブ!!









11,06,06(mon)


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