*捏造高
└カルが小さい頃からヒュウガを知っています。その関係でヒュウガがカルにちょっと素直。(AHから始まりますが、言い訳は最後に!)














今まで何とも思ってもいなかった、半魂という普通ではありえない状態が、最近急に苦しく思うようになってきたのはなんなのか。


きっかけは確か、何となく部屋でアヤたんのことを考えていた時だったと思う。


鏡の前でシャツのボタンを止めていて、違えた。ただそれだけのこと。



気が付いた時にはすでに手遅れで、完成したシャツは歪に歪み、鏡に映った自分が酷く惨めに見えた。






何をボタンごときに、と人は言うかもしれない。実際ボタンくらい留め直せばなんとかなるものだ。


けれども、その時に思ったのはボタンは掛け直せるけれど、関係は振り出しには戻れないということで。



はじまりが違えば、次第にその差は大きくなっていって、違和感だけが残る。



それがまるでアヤたんと俺の関係のようだと、そう思い知らされた気がした。



漆黒と血に染まる自分は彼とは掛け離れすぎていて、劣る。


容姿も能力も、目的も思いも、何もかも――。













「腑抜けた顔をしてるな、少佐殿。任務中だということを忘れてるんじゃねぇぞ」



「うるさい」







手渡された今回の作戦要項を眺めながら流すように話を聞いていたら、カルにいきなり頭を叩かれた。








「どうせお前のことだ。あの男が原因なんだろ?」



「………」



「お前さんはいつもあの男基準だな」



「――何が言いたい」



「いい加減諦めろ、もしくは割り切れ。そこいらの餓鬼のように己の感情に振り回されるな、見苦しい」









包帯に隠れて見えないはずの目から鋭い眼光が飛ばされる。


共同任務とはいえ、なぜこんな時に限ってこの男と一緒なのか。上層部に物申したい。


いくらカルが士官学生になる前から俺のことを知っているからといっても、共同任務を何度もさせるのは如何なものかと思う。そもそも特殊部隊に釣り合う部隊なんて、参謀部よりももっといいところがあるはずだ。









「最近のお前さんは昔から悩んでばかりだな」



「――って、ちょ、と!!」







再度男の手が頭へと伸ばされ、今度はぐしゃぐしゃと髪を掻き乱された。普段なら避けることなど容易い手を避けきれなかったのは、心ここにあらずだったからと思いたい。








「たまには初心を振り返るのも大切だぞ、ヒュウガ」







がしがしと、乱暴だけれども心地いい手。それは昔に少し、それも血の迷い程度に、憧れていた大きな手でもある。


何の縁もないはずの男なのに、まるで父親や兄のように今よりずっと荒んでいた自分の手を、誰よりも早くに、誰よりも確かに、引いてくれたのは間違いなくこの男だった。








「出来ないなら切り捨てろ。今までお前さんはそうやって生きてきたんだろうが」



「――分かってる」









任務開始まであと三分の報せがちょうど届く。


それでも男の手は離れない。何度も何度もまるで駄々っ子に言い聞かせるように頭をポンポンと叩いていく。







「分かってないな。いや解ってはいるのか。けど判断がつかない」



「…………」



「いいか、ヒュウガ。参謀の願いはなんだ?最終の目標は?お前さんは参謀の傍にいたいからと自分の意志で仕えたんだろう?そして俺が止めておけといったにも係わらず、代理でいいからと望んで身体を捧げたんだろうが。割り込む隙もないところへ一方的に割り込んだのは他ならぬお前だろ。そこに見返りを求めた時点で終わりは見えてる」



「それは、」



「お前の願いは何だった?」








二分前の報せが届く。
それを右から左に流しながら、カルに言われた通りおかしくなる前の自分を思い返す。



彼に出会って、様々なことがあって。幾年も経ってようやく【彼女】を含めた野望も聞いた。その上で、出来ることなら彼に仕えて、共に目的を達成して、そしてずっと傍で支えられたらいいなと思っていたはずだ。




それがいつの頃からだったろうか。

半魂を通じて自分のことを何でも分かるというのに、同時に何も分かってはくれない相手へ、自分は彼のためにこんなにも努力をしているのに、なぜこの気持ちを、この努力を、分かってくれないのか、とそう考えるようになっていたのは。





――傍に居れたらそれでいい。
そこには他の感情は何一つ要らなかったのに。










一分前を報せる通達が入る。高まる士気の中で自分も同じように気分が高揚していく。


始めから分かっていた。アヤたんが俺に興味がないのは当たり前のこと。



ならば、要らぬ感情は切り捨てるしかない。


彼の傍にいたいということだけが自分の中で確実といえる自分の意識なのだ。そこに感情を伴わせようとするから余計におかしくなる。



俺に必要なものはただ一つ。
傍に仕えさせてもらえる理由を持ち続けること。それだけだ。










「振り切れたか?」



「まぁね」








合図、三十秒前の声が届く。









「お前はそうやってさっぱりした顔の方がよく似合う」







真っすぐにカルの顔を見つめれば、口元がニカリと笑みを作った。そんな中で、またしても伸びてきた手を、今度は軽く右へと避ける。


吐き出す息は軽々しい。








「そりゃどうも」



「調子が戻ったようで何よりだ」



「あんたも昔からつくづく世話焼きな男だね」



「くくく、そりゃだてに理事長補佐と子守りをやってないさ」



「そうに違いない」








はじめから掛け違えたシャツのボタンのような関係ならば、これ以上の掛け違いは許されない。


現状維持、そして未来継続。それが俺とアヤたんを繋ぐ唯一の関係性――。









「さぁ、五秒前だ。始まるぞ、少佐殿。気合い入れてけよ」



「カル殿は誰に言ってるわけ?何時だって俺は準備万端だよ」






奴の苦笑いと共に部隊でのカウントダウンが始まる。








「「三、ニ、一、――ミッション、スタート」」





















それぞれ
(君知ルタモウコトナカレ
〜知られざる彼の好意も男の策略も〜)












---------------
以上が、かりうむさまの10万打リクエストとなります。

久しぶりに07を書いたということで違和感は拭えませんが、A×H(→)←krから、A+H(→)←krになるお話でした。三角関係が好きなので勝手にやんわり略奪愛を目指しました、すいませんっ!


アヤナミは不器用なだけでヒュウガを愛しているんですが、それがヒュウガには伝わっておら…。カルが下心など一切見せずに割り込みアヤナミとヒュウガの距離を開くというお話。(共同任務はカルがミロク様にお願いしてヒュウガを呼んでもらってるという裏話有)


何だかんだとヒュウガはカルといれば幸せになれるんじゃないだろうか、と私は思っているので、このままkrHに突入希望です。(もしくはちゃっかり丸め込まれて気が付いたらカルに好意を持ちはじめているヒュウガと、そんなヒュウガにご満悦なカルVS嫉妬全開アヤナミの三角バトル希望)



というわけで、話がかなりズレましたが、非常に私の趣味話になってしまいました((焦))リクエストに添えている自信がかなりありません。

もし、がっつりカルヒュウを思っていたのに、という場合は、本当にお手間おかけしますがいつでもメールの方からリテイクを希望してくださいませ!本当にすいませんでしたっ!






11,05,19(Thu)


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -