*人間不信元自殺志願者な静雄×通常運転な臨也
(たぶん暗い話ではない)
*ついったーからのネタ
(らっど『い/いん/です/か』がイメージソング)

















「――へぇ、君がピースアイランドくん?」



俺が奈倉もとい臨也と出会ったのは、とある自殺サイトのオフ会でのことだった。



この頃の俺は、自分の変な力に、――いわゆる人間とは思えないほどの怪力に――、特に思い悩んでいて、それが原因で死にたいとすら思っていた。



今思えば、たぶん第二次成長期やら思春期やら、そんな情緒不安定な時期が大きく影響していたのかもしれない。







「そっか、初めまして。僕、奈倉といいます」






そんな中で、自分の怪力のせいで、他人はもちろん、傍に居てくれる数少ない人間にも気を使わせていることに気付いた時は、本当に辛かった。





どうせいつかみんな離れていくんだろだとか、怖がっていないように見えても裏では怖がっていたり鬱陶しがったり罵倒していたりするんだろう、とか。



そうに違いないと勝手に決め付けて、人を信用しなくなったのにそう時間はかからなかった。




俺はたぶん、このままずっと一人なんじゃないだろうとか。つまらなくて悲しい未来しかないのなら、いっそこのまま、そうだ、このまま死んだ方がいい、だとか。


そんなことをひたすらに考え続けて、しばらく。
その悩み抜いた結果が、自殺サイトを通しての自身の昇華に辿り着いたのは、至極当然といえば当然のことだったと思う。








初めてオフ会に参加していたあの時のことは今でもしっかりと覚えている。緊張と、ほんの少しの恐怖と安堵。そして高揚感。あの時は、死ぬことで全てが解放されると思っていたから、確かその前日は興奮しすぎてあまりよく眠れなかった記憶がある。


今では信じられないけれど、こんな風に死ぬために様々な思いを抱いて行動を起こした時期もあったのだなぁと思うと、とても感慨深い。








「で、さっそくだけど君が自殺をしようと思う理由はなにかな?教えてよ」








ただし、このオフ会に参加したことによって、俺の様々な思いが一瞬で霧散することになろうとは思ってもいなかったが。








「ほら、早く早く、」









集まったメンバーは自分を入れて二人。もう一人は文頭に名前を出した奈倉もとい折原臨也。正直に言ってしまえば、このオフ会は最悪だった。


臨也はどうやら人間観察という目的だけでこの自殺オフ会に参加していたらしく、俺が一生懸命に伝えた死にたい理由も、言い終えた瞬間にまるでギロチンの刃のごとく、「君はバカだねぇ。人を無理矢理信じる必要なんて全くないと思うけど」と、切り捨てた。






「人と付き合うに当たって先行して信頼が必要?そんなのどう考えてもおかしいじゃないか。信頼は結果と同じで後からついてくるもんだ。それは君や相手の言葉や行動によってね。それをさかさまに捉えた時点で、すでに君がその人間を信じることは一生出来ないよ。というかおこがましいね。はじめから相手を信頼しきるだなんて、君は博愛主義者なのかい?それともただのマゾなのかい?得体のしれない人間をすぐに信じられるだなんておかしいのさ」






それからだ。死は、こうだ。君の考えは所詮、その程度。気持ちも覚悟も、云たらかんたら、と一方的にねちっこい程の論文のようなくそ長い話を聞かされる羽目になったのは。


大概その時点でこめかみに血管が数本浮いていたとは思う。それでも、どうにかキレださずに堪えていれたのは、その話に俺なりに覚えるところがあったからだ。



けどまぁ、その努力も結局、「ちょっと君聞いてる?化け物だからってついに人語まで理解できなくなっちゃったの?」というあいつの化け物発言のせいで、水の泡と消えたわけなのだが。





「人が大人しく話を聞いてやっていたら手前はよぉ!!」



「あ、キレた?というかさ、君のそういうところが駄目なんじゃないの?単・細・胞」



「〜〜〜〜!!うるせぇうるせぇうるせぇッ!!!」






もちろん、最後のセリフで俺はキレた。それはもう今までになかったくらいにキレた。かつてないほどにキレた。



カラオケボックスという小さな部屋で、机をひっくり返し、テレビを投げ倒し。部屋から笑いながら飛び出た臨也を追いかけながら、目に入るものは何でもあいつに向かって投げまくった。



そんな時だ。人の心を弄び、散々バカにしやがったこいつを殺すまで、俺は絶対に死ねない。死に切れないと思ったのは。





俺がキレて、それから追いかけっこが始まって。

以来、なぜかあいつが池袋を歩いているとニオイが分かるようになって、また追いかけて。


気がついた時には、あいつを殺すことが明日を生きる目標になっていた。明日を生きる意味を探したらあいつを殺すという目標になっていた。


こいつとの出会いが良くも悪くも俺の人生、いや、俺の世界をぐるりと変えたのだ。




ただ、そんな犬猿な二人がいつの間にか恋に落ちていったのが予想外で――。
















トントントン、とまな板の上で包丁を踊らせる音が響く。


いいんだろうか、こんなに人を好きになっても。いいのだろうか、こんなに人を信じても。


そんな葛藤を抱いたのは言うまでもないし、まだ人と付き合うことに恐怖を抱いているのも確かだ。


けれども、今はっきりとわかっていることは、俺があいつを好きだということと、ずっと傍に居て幸せにしてやりたいということ。その二つ。


気が付けば、今の俺にとって、こいつと居る意味が明日を生きる答えに、明日を生きる意味がこいつと居る答えになっていた。







「もうすぐ晩ご飯出来上がるから机の上片付けて待っててね」







生きる理由は自分で作るものだと知ったのは、こいつに出会ってからだった。幸せというものも、人と付き合うことがどういうことなのかを知ったのかも、全部こいつに出会ってからだった。







「なぁ、」



「なにかな、シズちゃん?」









中華鍋の中に放り込まれていく、一口サイズのトリ肉を見つめながら俺は一歩を大きく踏み出す。


こいつの作る唐揚げは最高だ。おふくろの作る鳥のあんかけよりうめぇ。

というか、滅多に見せないはにかんだ笑顔も、拗ねた顔も。誰よりも最高で、誰よりも特別だ。その姿をずっとその傍で見て居たい。そう思う。







「ありがとな、臨也」








漠然とした何かを恐れずとも、案外生きていればなんとかなると。逃げ出してもいいけれど、死んではいけないと。

そんな大切なことを教えてくれたこいつには感謝してもしたりない。こうやって俺が生きてこれたのはこいつのおかげだ。


だからこそ、俺はこいつのためならば何だって出来る。そう思う。






「――お前にはすげぇ感謝している」



「ふふふ、どうしたのいきなり」



「今すげぇ言いたくなって」



「変なシズちゃん」



「茶化すな」







鳥肉を菜箸でひっくり返しながらこちらを振り返ったその姿に、堪らなく嬉しくなって、思わず抱きついた。


危ないよと呟く一回り小さな体は、抱きしめるのにちょうどいい。






「――本当にありがとうな、臨也」




丸い頭に頬を擦り寄せながら、俺はもう一度臨也の名前を呼んだ。
























(お前がいれば恐れるものは何もない)


















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ついったーでゴーサインを頂いたので書いてみましたいいんですかものがたり!

甘めにしたんですが、依存性気味なので、若干臨也を失ってしまった時の静雄が心配になってしまう内容になってしまいました…!ちょっと反省!!(でも幸せも生きる意味も作るのは自分自身というのは確かなので、きっともう静雄も大丈夫な気もします((逃))




11,05,17(Tue)


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