*微妙に特殊設定あり。
(静雄と津軽が双子)















4月20日とその日を1日過ぎた4月21日。臨也にとって数年前までは、前者の方にからかいの意味を込めて用事あった。

しずお、と読める一年に一回の特別な日に気付いたときの臨也の顔は、まさにしたり顔だったと誰しもが思う。


君の日だ、と宣言したその日から普段では絶対に言わない「しずお」という呼び名を、その日だけしつこくしつこく口にしてきた数年間。

それは静雄の誕生日よりも多くの者の記憶の片隅に今もしっかり残っている。





だが、いつの頃からだろうか。

数年もの間続いてきたその恒例行事が、すっかりと変わり果ててしまったのは。



今では、しずおの日の次の日に当たるその何でもない日こそが、臨也にとって何よりも掛け替えのない日になってしまっている。








「津軽!」







しずお、と呼ばれなくなって数年。同じようにシズちゃんという呼称を聞く回数も減っていった数年。

代わりに比例するように臨也に呼ばれるようになった男の名は、平和島静雄の双子の兄にあたる津軽だった。



――そう。
静雄とそっくりな顔をする男こそが、今の臨也の興味を独占するようになってしまったのだ。


それに気が付いた時の、静雄の失望感や虚無感は臨也はたぶん一生分からない。







「津軽!津軽!あのね、」






しずおと呼ばれ、やめろと拒絶してきたのは数年間。しかし、そうやって拒絶しながらも毎年、特別な日がやってくることへ、静雄が期待していたのも同じ数年間。


名を呼ばれる特別(こと)を万更と思っていなかったのは、静雄の中でも否定はできない。

だからこそ、しずお、ではなく、津軽、と呼ばれることに淋しさや嫉妬を覚えてしまったのも無理がないことかもしれなかった。







「お誕生日おめでとう!今日は津軽が喜ぶだろうと思って――、」





名を呼ばれることへの嬉しさ。特別意識。

このニコニコと優しく微笑む姿を独り占め出来るのならば、とそう静雄は心の中で重い息を吐く。







「嬉しい、津軽?」



「――ありがとな」







もしも。あの時。
そんなことを考えるのはいつも全てを失ってからだった。


手元に戻ってこないと分かっているからこそ、静雄は再びその手を、視線を、特別を、掴み取ろうと必死になる。








「嬉しい、臨也」








すっぽりと男に包み込まれた華奢な身体。静雄本人では、こうやって普通には触れられないに違いない。


臨也が大人しく誰かに抱き締められるのも。無防備な姿を曝すのも。全て、全て、静雄の兄である津軽の前だけ。


――そう。
津軽の前だけなのだ。



だからこそ、臨也のこんな姿を静雄はきっと一生目には出来ないだろう。












「なぁ、」



「何?どうしたの津軽」



「好きだ。愛してる臨也」



「――ふふふふ、俺も」








悪いのは誰だ。


俺は悪くない。
悪いのは、全て――。





そんな黒くドロリとしたものが、着慣れない青と白の着物の生地に吸い込まれていく。







――もう一度、しずおと名を呼んでもらうためならば、これくらい。












静雄の中で焼け爛れた醜い心の内を、臨也はまだ知らない。
























(〜所により涙が流れるでしょう〜)








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矢黒さまへ

この度は10万打リクエストに参加して頂きましてありがとうございました!

タイトルから来て狂愛か鬼畜か悲恋で迷い、津イザ←静の静イザバージョンで書いてみましたが如何だったでしょうか?


津軽に扮してまでも、どうにかして臨也の特別になろうと足掻くヤンデレ(?)静雄。

イメージは『オ●ディプス』や『こ●ろ』の解説でよく使われる「欲望の三角形」(エディプスコンプレックス)だったりしますとネタバレもしつつ…!

おいおい津軽はどこに行ったんだよ、というツッコミには目を瞑って頂けたらなぁと思います((逃



あ、もちろんリテイク受け付けていますので、暗いから違うのがいい等ありましたらいつでもお気軽にお申し付けくださいませ!


それでは、最後になりましたがこの度は当サイトの企画に参加してくださいまして誠にありがとうございました!これからも鏡のトランプと管理人共々よろしくお願いしますーっ!





11,04,21(Thu)


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