暮れ泥む夏の夕暮れ。
暖色に染まる空には帰路につこうと忙しく飛び回る鳥々の姿。巣には果たして誰が待っているのだろうか。


そんなことを頭の隅で思いやりながら、六は静かにパソコンを眺めている臨也を見つめていた。



夕方とは違い、逆光のせいで臨也の表情は窺い知れない。真っ黒な影に覆われたそれは塗り潰された人形のように思えた。





――あぁ、キミが悪い。












「まだ人間が嫌いなのかい、六?」





二人しかいない部屋に彼の手が奏でるキーボード音が虚しく響き渡る。




その中で問われた小さな疑問符。


繰り返したくないこのやりとりは臨也と住み始めて一体何度目だろうか。


六は黙って考える。





――ねぇ、やっぱりオレは臨也の思考の方が理解できないよ。




口論になってしまうことを恐れて臨也には決して告げることはない心の内。けれども、そう思わずにはいられないのはそれが自分が【六】だからに違いない。








――オレは人間が嫌い。








訪ねられた問いかけに静かに首を縦に振る。そうすれば、同じ顔をした男が、「君の思考は理解できないね」と溜め息混じりでそう返してきた。





「人間は素晴らしいよ」





そして付け加えるようにして惚れ惚れと溢された言葉に、自然と喉の奥が乾き始めたのが六には分かった。




――あぁ、キミが悪い。




同じ臨也の細胞から生まれたアンドロイドであるサイケや日々谷よりも、自分の存在が断然臨也と近いことを六は知っている。



同じ容姿。


同じ声調。




そして、いつもなら自分と見分けがつくはずの臨也の白いファーも爪も、夕日に照らされ赤く染まってしまえば、外見とて同じとなる。







「――ねぇ、六?」











――オレは人間が嫌い。





六は再び自分に言い聞かす。



自分と臨也の違いは、人間が好きか嫌いか、ただそれだけだと思っている。――だからこそ、その唯一の違いを明確にしておかなければ、自分の存在価値を計れなくなってしまうと、少なくとも六はそう考えていた。




人間が嫌いなわけでは決してない。ただ、同じであることがいけないと六は信じていた。そうすることしか自分と臨也に差異を見出だすことが出来なかったから。











「俺は人間が好きだ」






――お願いだから、止めてくれ。







心の悲鳴は止まらない。













「彼らの魅力に気付かないだなんて勿体ない。……あぁ、そうだ。今度一緒に人間観察に連れていってあげる。絶対気に入るよ」





愉しげな声に、止めてくれ、止めてくれと六は心の中で叫び散らす。


オリジナルでは絶対に分からないこの気持ち。それをどうか臨也にも分かってほしいと一番星に願いを託す。





落ちる夕日と、カラスの泣き声。


もうすぐ訪れるのは、辺り一面を生め尽くす闇と、目の前の悪魔が差し出すほんの少しの絶望なのだろう。


















相対性理論
(――あぁ、全てキミが悪い。だからオレは人間なんて大嫌いだ)














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夕日や八面六臂と臨也のイメージカラー、あと歪んだ感じが出したいなぁと思って弄ったらこんなことに…。非常に目に悪い文字色と背景色ですいませんでした!
(目の疲れを癒すには目をぎゅっと閉じてから大きく見開いてパチパチ瞼の開け閉めを繰り返すといいらしいです!)


今回は臨也の六呼びと、六の偽装内面に突っ走った俺得話でした。

これを基盤に、人が嫌いじゃないけども人を嫌わなければいけないという葛藤の中、自分の存在価値を見出だすためにあれこれと自分を傷つけ始めてしまうという八面六臂を書きたいなぁと思っていたり。(もちろんハッピーエンドで!)

予定は未定ですが…!



11,04,13(wed)


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