注意*PCのゴミ箱に入っていたものをリサイクル。ただ、リサイクルしようとして失敗した、なにが書きたかったのか自分でもよく分からないやっぱりボツネタなお話。 「ねぇ、それなんの冗談?」 僕がそう聞かずにいられなかったのも、無理はないと思う。 目の前には犬猿の仲と称される二人の友人。ただでさえ、そんな二人が共に並んでいるのにも驚かされるというのに、挙げ句、二人が手を繋いでいるのを見たとなれば、僕の優秀な思考回路が停止してしまうのも無理はない。 「――助けて、新羅」 「いや、僕の方が助けてほしいよ。というか、助けてやる以前の問題だよね、これ」 「物理的にね、シズちゃんの馬鹿力なんかじゃ離れないんだ」 「僕の話は聞いてない、と。まぁとりあえず落ち着きなよ、臨也。君の隣のヤツはすでに現実を受けとめているみたいだよ。目が死人のようになってる」 つい、と臨也の横を流し見れば、やたら大人しい男が一人。彼の顔はもはや息をしていないのではないかと疑ってしまうほど顔面蒼白で、身動き一つしない。 そんな静雄に対して、「いっそのこと死人の方がマシだったよ…」と溢す臨也の方は、目尻に大粒の涙を浮かべ、身体はカタカタと小刻みに震えている。 普段からは到底考えられない二人の様子に、こんな状態で二人ともよく僕の家までやって来たなと思う。 ここに来るまでの間、人の目もあっただろうし、きっと随分と神経をすり減らしたに違いない。八つ当たりなどせずに真っすぐにここに来たことは誉めてやりたいくらいだ。 ――まぁ、来られたこっちはこっちでスゴく迷惑な話なんだけども。 「そもそもさ、何で君たちは手なんか繋ぐ羽目になっちゃったのさ?ついに仲直りでもした訳?」 「違うよ馬鹿!!理由なんてこっちが聞きたいし!!」 「あー、ほらほら、僕に逆ギレしないで」 キャンキャン叫ぶ臨也はまさしく犬のようだ。今すぐにでも僕に噛み付いてきそうな勢いで身を乗り出してくる。 しかし、強く握り締められている、――それが世間一般で言われる恋人繋ぎという手の繋ぎ方をしている――、静雄本人の手によって、杭の役目を果たされるせいで、臨也は全く僕へ手が届かない。 その事実がどうやら臨也に追い打ちを掛けてしまったらしい。 「この世全ての瞬間接着剤が憎い、憎いよ」と、あれ程堪えていた涙が、ついにはぽろぽろと零れ落ち始めてしまった。 「――え、ちょ、臨也?」 「もうやだやだやだやだ―…」 まるで子供のように首を横に振りながら、静雄と繋いでいる手をブンブンと力強く払い、泣き始めてしまった臨也に内心驚く。 やだやだ、と繰り返す言葉に、いやいやそこまで静雄のことを嫌わなくてもいいだろうと思ったが、どうやら誰からも縛られるのを良としない臨也にとって、この事実は非常に受け入れがたい状況だったらしい。 がむしゃらに手を離そうともがく姿が逆に痛々しさを募らせる。 「こらこら臨也、落ち着いて!静雄とは違って君の場合は無理に剥がしたら皮膚を痛めちゃうよ」 「やだやだやだやだ!!気持ち悪い!人の肌が気持ち悪い!!!」 慌てて制止をかけてみるもその手はいっこうに止む気配はない。 それどころか、「離れてろよ!離れろ!!離れろ!!」と大声をあげながら、必死に静雄との手を離そうとするその仕草に、そういえば臨也は接触恐怖症の類を持っていたことを思い出して、顔が青ざめる。 ――ちょっと待ってよ。何だか本格的にめんどくさいことになってきたぞ。 「――臨也、臨也!!僕だよ落ち着いて。ゆっくり一緒に深呼吸をしてみよう。ほら、吸って、吐いて。吸って――」 「 、 、」 パニックになった自分より少し小さな身体を掻き抱いてやる。 だてに臨也の治療はしていない。臨也の僕に対する接触恐怖症は中学校の時に遠に乗り越えているのだ。 「はい、吸って、吐いて、吸って――」 まるで妊婦の出産に立ちあっているような気分になりながら、二人の懸け橋となっている手を右手でやんわりと握り締めてやる。 「大丈夫、大丈夫」と背を撫で、宥め透かしてやる内に、臨也の身体の強ばりが少しずつなくなっていくのが分かった。 あともう少し――。 ――しばらくして落ち着いたらしい臨也がぱたりと床に座り込んでしまい、そこで一先ず事態は収束した。 ただ、ぼぅっとした様子でフローリングの一点を見つめる臨也と、未だに微動だにしない静雄に、これからが厄介なことになるぞと僕は確信する。 ――あぁ、やっぱりめんどくさいことになった。 これからの行く末に頭を抱えながら、二人に気付かれないように僕は小さな溜め息をついた。 ----------- 新臨っぽいのを目指そうとして惨敗。もはや言い訳はしまい…。 11,04,08(Fri) |