こうしてネット上ではなく、直で会うと折原が変わったことがよく分かる。






「――折原、お前最近幸せそうだな」



「何?唐突に」






窓辺にあたる席で俺の前に座る折原は、携帯を見ながら、反対の手でスプーンを持ち、クルクルと紅茶を掻き混ぜていた。



こちらに視線を向けようとしないのはいつものことだ。


しかし、そのいつもの光景の中で違和感があるとすれば、それは携帯を覗き込む折原が和かな笑みを浮かべていることだろう。









「いやな、お前が人を不快にさせるような笑い以外でそんな顔を浮かべられるとは思ってもいなかったんでな」



「お前は俺をなんだと思ってるんだ」



「人間が好きな気違い野郎かと」



「――死ね」









メールを打ち終わったのか、携帯をスライドさせた折原はようやくこちらに視線を合わせてきた。


相も変わらずの鋭い口調。その割に目元や頬は揺るみきっているため普段のような締まりがない。


まさかこいつのこんな顔が見れる日が来ようとは。一体誰が予想できただろうか。







「死ねとは酷いな。それよりもその顔はなんだ。俺に見せるにしては腑抜けすぎやしないか?」



「――は? 腑抜け?」



「ほう、自覚がないと来たか」








意味が分からないとばかりに眉間に皺の寄っている折原に思わず笑いが零れた。無自覚ほど質の悪いものはない。


元が良い分、その表情にどれほどの破壊力があるかなど本人はきっと自覚をしていないのだろう。


果たしてこんな奴を野放しにしておいて彼氏の方は心配ではないのか。







「お前、誰かに指摘されたことがないのか?その顔は恋人を思っている女の顔だぞ」







そう指摘してやれば、折原は瞬間に顔を真っ赤にさせて口をパクパクと動かしだす。きっと彼氏はこの普段とのギャップに惚れたのだろう。


そんなことを考えながら、窓から見える青と白の羽織を纏った男に御愁傷様と告げる。






――折原が可愛いと周りが気付くのはそう遠くないだろう。











「折原気を付けろよ」







良からぬ輩はたくさんいる。この幸せな笑顔がこいつから消えるか消えないかは全てあの男にかかっているに違いない。







「男はみんな狼だ」



「?」



「――気を抜けば、」







食われる前に食われてしまえ。そしてあの男もさっさとこの罪な男に自分の所有物だという印を与えてやれば良い。



そう思いながら、俺はそれを伝えることはせずにブラックコーヒーを流し込む。



後は当人たちの問題だ。だから俺はいつものようにただただ池袋の街を見守ることに撤しよう。








(――くくくく、面白いことになってきたな)
















喫茶店にて、
(恋する乙女へ忠告を)

















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『眉目秀麗の定義とは』の管理人せいは様と、『なんかショコラ』のちょこ様に捧げます!!

お二人方と京都の甘味処&カラオケに行ってエンジョイ!そして結局携帯打ちに逃げ込んだ私ですが、エアスケブをさせていただきました〜!

私は津臨前提の九十九屋視点というお題。津軽はちょっとしか出ていませんが愛は籠もっております!


というか、こんなところでなんですが、今日は遊んで下さいましてありがとうございました!!すごくすごく楽しかったです!!
またお会いしましょう!
臨也さん、ラブッ!!


11,03,19(sta)


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