*インテに行けなかったお詫びの品。眉目秀麗のせいはちゃんに捧げます。私風のお友達蘭臨です。 どういうことだと目を見開けばシニカルな笑いと共に蘭くんは目の前におもちゃの銃を突き付けた。どうしておもちゃと分かるのかと聞かれれば、ちゃちな袋からわざわざ開けて目の前でビービー弾を詰め込んでいたからだ。 「それかなり痛いんだよ?君知ってる?」 「知ってんに決まってんだろが。だからてめぇに突き付けてんだよ」 「おやまぁ、そうかい…」 「痛い思いしたくなかったらこれから言う質問に答えろよ、臨也」 これまた悪役がするような笑みを浮かべて、次はずいっと俺の首を長い腕で絡めとる。体勢が不十分だった俺はそのまま呆気なく蘭くんの胸の中に傾れ込んだ。まるで高校生や中学生のじゃれあいだ。そんな関係、少なくとも俺と蘭くんの間には絶対に成り立たないのに。 「地味に痛いんだけど、」 「敢えて痛くしてるに決まってんだろうが」 「俺悪いことしてないのに」 「いい子悪い子関係ねぇんだよ。少なくともお前が折原臨也である限り意味は」 「意味分かんない」 ぶすり、と唇を突き出すとキメェと言われてしまった。眉目秀麗な俺を気持ち悪いとかいうだなんて失礼極まりないと思う。これでもかというばかりに睨み付けてやれば、蘭くんは更に笑みを浮かべた。 「さぁーて、問題です。次に言う質問に答えろ。お前の目の前には友達がいます」 「残念だな、俺には友人に含まれる類の人間はいないんだ」 「……お前は人の話を最後まで聞け。つーかもうちょっと友達いないこと隠せよ。悲しくないのか?」 「だって誰も居ないんだよ本当に。腹を刺された時に思ったけど新羅の奴はどうも俺を友達とか思ってくれてないみたいだし、実際君や波江たちが傍を去ったら恐らく俺の周りには誰も残らない」 「……そうかよ」 はっきりとそう物を言えば、蘭くんはなんだか興味が失せたかのように口を閉ざした。持っていたビービー弾入りの銃を放り投げて、そのまま空いた手で俺の頭を撫で回す。あれ、それで撃つんじゃなかったの。そう蘭くんに言えば、んなこと言われたら誰が撃てるか馬鹿野郎と怒鳴られた。イマイチ蘭くんの思考回路が分からない。 「手前みたいな胡散臭い奴、確かに友達にすんにはあれだしなぁ」 「そんなの今さらなことだろ」 「そーだな。今さらなことだ。でもまぁ、」 「なに?言いたいことがあるんなら言えば?」 「友達がいない臨也くんに心優しい俺が特別に友達になってやろうか?」 「何それ、同情?」 「同情なんかでお前と友達なんかになるかっつーの。めんどくせぇ」 「…………」 「俺もあいにくお前と同じで友達がいねぇんだよ。だから、まぁなんだ。酒とか飲むときに付き合えよ。1人酒は柄じゃねぇ」 そう言って急に立ち上がった蘭くんはスタスタとキッチンへ向かっていった。さっきの発言は飲み友達ということで合っているんだろうか。グラスが重なる音と扉がいくつか開かれる音が聞こえる。恐らく以前四木さんに頂いた名酒を探しだしているんだろう。どれだけお酒が好きなのやら。 「……でもまぁ、こういうお友達って憧れるものでもあったし。うん、そうだな。いいかもしれない、お友達」 ぽすりとソファーに寝そべりながら天井を見上げる。なんだろう、変な感じ。お友達。お友達。ポーカーフェイスも得意なはずなのに今は弛む頬を隠せそうにない。これは困った。実に困った。 「蘭くーん、名酒たちは勝手に入って暴れ回る化け物が誤って壊さないように奥の奥に入れてるから飲みたかったら探してご覧〜」 ――早く一緒にお酒が飲みたいけど。 (でも悔しいからそう易々と場所なんか教えてあげるものか) 13,05,13(Tue) |