朝の十一時二十六分。
まんまるい太陽を背に浴びながら、俺は新羅と共に池袋の街を練り歩いていた。

三月中旬にしては暖かな陽気に包まれた今日は、三月十四日。いわゆるホワイトデーという日だ。二月のバレンタインデーと対になるこのイベントは、バレンタインとはまた違った緊張を俺たち男どもにもたらす。







「――っつーわけで、教えてくれよ新羅。俺は一体臨也に何を返したらいいんだ?」



「………そういうのは事前に自分で考えておくものだと思うんだけど」



「考えたがいいのが思いつかなかったんだっつーの。あいつあんまり菓子も食べねぇし。そもそも店に行ってもこれといってあいつにやりてぇ物もなかった」



「……あ、うん。そう――」







俺の話に、酷くうんざりげに頷く新羅は眼鏡を外し、白衣の裾で噴き始める。その、――俺を巻き込まないでくれる、めんどくさいんだけどさ――、といった態度に妙にイラッとして、その眉間に軽く凸ピンをかましてやれば、カエルを潰したような悲鳴が上がった。






「――しっかり考えろや、手前」



「それは君のほ――、ぁああああっと!!嘘嘘嘘っ!!!俺が悪かったから、ちゃんと考えるからこれ以上は止めて!!!本当に止めて!!!」








ギャアギャアと叫ぶ新羅を黙らすためにもう一発凸ピンを喰らわす。


街中を白衣で歩く特殊な男と並んでいるだけで、ただでさえ注目が集まっているんだ。正直、これ以上人の目を集めたくはない。

そう思っての一撃だったのだが、どうやら思いの外二度目はきつかったらしい。指を弾いたのと同じ方向に新羅の身体が吹っ飛んだ。それもただ吹っ飛ぶだけではなく見事にアーチを描き、有名なブランドのアクセサリーショップのガラスを突き破る形で。









――ジリリリリリリリリリリリ。









防犯用のブザーが店内から大きく鳴り響く。







「――あ、やべ」






思わず口から漏れた言葉は、きっとブザーに掻き消されて誰も聞いてはしないだろう。



引きつる頬を手で隠し、現場から遠くでただ事の成り行きを見守る。やってしまったのは仕方がない。

そもそも、心配性の臨也のために警察には世話にならないと決めている。だから、ここは新羅に犠牲になってももらうことにしよう、と店員に抑え付けられ始めた新羅を見て、俺はそう決意する。














贈り物まで1
(プレゼントへの道はまだまだ遠い)













(――ありがとう新羅。やっぱ頼れるのは友達だな)





11,03,16(wed)


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