*平和島と九十九屋の下着トーク
〜折原臨也の誕生日編〜













臨也の誕生日にベビードールを送るかティーバックを贈るかで俺は非常に悩んでいた。その悩みのせいで社会人としてはみっともないほど仕事にも影響を出していたし、何より俺の精神力がヤバかった。エロい臨也が夢に出てくるわ出てくるわ。下品な話、朝からその夢を思い出してシコるだなんてしょっちゅうだった。おかげさまで、どこで何をしていても臨也臨也臨也。もはや臨也中毒という名称がぴったりなくらい臨也の事ばかりを考えて毎日を過ごしていた。
そのくせあいつは仕事が忙しいらしくて全くと言っていいほど俺に構ってくれない。時折思い出したかのようにメールでの謝罪があるくらいでそれ以外は放置だ。そんなお粗末な状態ですでに二週間も経つ。誕生日を二日後に控えても一向に駄目なままだ。このままあいつの誕生日まで放置にされたら俺の精神力が耐えられない。下着を贈るのだって、あいつが俺をこんなにも待たせるからであって、本当は甘い甘い恋人らしいデートを提供したいと思っている俺の良心をもっと察しろって言うんだ。



「くっそ…………」



ぺらぺらと部屋の中で捲る男性のHな下着の特集雑誌。謎の男、九十九屋から送られてきたそれを見ながらまた唸る。下着とはいえ、もちろん男用のものだ。そもそもそういうのを何処で買うかでも悩んでいる。専門店というのがあるらしいが、残念ながらそこに足を踏み入れる勇気はない。というか、踏み入れたら最後。恐らく俺の行動は完全に臨也に筒抜けになるだろう。そうなればドン引きされるか、変な誤解を生むかの二択なわけで、どちらにせよ臨也の俺に対する信頼や評判がガタ落ちするのは間違いない。しかし、俺の家にネット環境が整っているわけもなく、どう頑張っても手に入れるまでには一波乱があるのは目に見えていた。どうする、どうしたらいい。ぐるぐるとない頭で精一杯に考えながら俺はまた一つ大きな舌を打った。



「つーか、うぜぇぞ。ウザ過ぎるぞ九十九屋の野郎……!!」



そんな苛々ムラムラしている俺を嘲笑うかの用に次から次へと送られてくるメール。こういう時ばかりメールを送ってくる九十九屋はマジで心の底から殺したい位うぜぇと思っている。というか、メールからも分かる極度の変態具合にはこの俺も苛立ちと同じくらい気持ち悪さを感じていた。こいつ絶対俺よりも変態だ。確信出来るくらい変態だ。









From:九十九屋死ね一
Sub:下着の件は俺に任せろ1
本文:『やぁ、平和島静雄。お前の望み俺なら叶えてやれるぞ』







From:九十九屋死ね一
Sub:下着の件は俺に任せろ2
本文:『個人的に折原に着せたいのはP138のゴスロリ風のベビードール白だな。ギリギリの布しかないその感じが素晴らしいと俺は思う。間違いなくあいつなら映える』






From:九十九屋死ね一
Sub:下着の件は俺に任せろ3
本文:『あと、俺の名前は真一だ。死ね一ではない。打ち間違いなら早急に正せ』






To:九十九屋死ね一
Sub:誰がてめぇに任せるか変態野郎!!
本文:『俺の好みはP420の黒のベビードールだ。ゴスロリみてぇに飾るのも可愛いが俺はシンプルが好きだ。あと肌は適度に見えてる方がいいに決まってんだろが。つか、俺の臨也の下着姿を勝手に想像すんな。殺すぞ』






From:九十九屋死ね一
Sub:誤解を解こう
本文:『俺は折原の下着姿どころか裸まで想像している。それを間違いないでくれ』






To:九十九屋死ね一
Sub:殺す
本文:『コロスコロスコロス…… 』






いつもと同じやりとり。それを繰り返しながら、これまたいつものように携帯が拉げて、呆気なく崩れ落ちていく。気がついた時には、今月三回目の携帯の破損。それは臨也の誕生日前の俺にとってはあまりにも大きな痛手だった。
携帯がなければ誕生日メールも送れない。
しかし、お金がなければ下着やコスプレグッズも買うことが出来ない。



「メイド服を削った次はナース服か?!あぁッ、それもこれも全部九十九屋のせいだクソがぁッ!!」



今度はどこを削ろうか。誕生日の軍資金を確保するために必死にない頭で考える。




――この誰にもぶつけられない腹立たしさに、俺はひたすら一人悶えるしか出来なかった。















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12,05,04(Fri)
スパコミ無配より。


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