今日の俺の運勢はどうだったかなとか、ランキング何位だったかなとか普段なら気にしない
その前に家出るし、大地にどやされないように毎日イメトレをする事で頭がいっぱいだ



「…青葉城西高校の岩泉一くんが好きなの」


その言葉を聞く前までは
今日はお天気お姉さんが恋しい



昼休み、何気なく廊下を歩きながら(ときどきこちらに向けてくる下級生の視線は気にしないように)飲み物を買おうと思い、自動販売機へと俺の足は動いた
何にするか迷っていると(影山が買うものも若干気になる)聞き覚えがある声が聞こえた


「好きです」

と思ったら一世一代の告白現場に出くわしてしまった
あれは確か俺と同じクラスの……………あ、鈴木だ
こうも人通りの多いところでよくやるなぁ
鈴木の好きな人とか聞いたことはない、そもそもそんな話題俺にはついていけない
だからこそなんだか相手が気になるものだ
誰だろう?


「……ごめんなさい」


その声は我らがバレー部では触れてはならぬスガの思い人だった



「……理由を聞いてもいい?じゃないと俺、納得できない」
「え、」

………鈴木すごいな
確かにお前くらいのイケメンならそのぐらい聞くか
俺だったらその場でそっかって言って逃げてるぞ(ヘタレじゃない、断じてヘタレじゃ……)
ってか俺立ち聞きなんて趣味が悪いな
教室に帰え…

「好きな人がいるんです」




「そっか……この学校の人?」
「っ!」


スガ
俺、お前のために趣味が悪い奴になるよ


「……もしかして」


ゴクリ


「菅原?」
「っ!」


柚葵ちゃんの肩が揺れた
スガ……お前早く告白しろよ
きっと成功す

「違います!!」
「!?」

「えっ」

思わず声を出したけど、ちょちょちょ、ちょっと待って!
柚葵ちゃんの好きな人って好きな人って…!?






そして冒頭にもどるのである
スガ、俺とんでもない事を聞いてしまったらしい
まさか、柚葵ちゃんの好きな人がスガじゃなく青城のエースだったなんて……!
どう見ても俺から見ても相思相愛だと思っていたのに………どういうことなんだ

その後俺は授業に身が入らず部活の時間になってしまった
今日スガは先生に呼び出されているらしくこの場にはいない
柚葵ちゃんもなにか部活関係のもので用事があるらしく清水と出かけている
他の部員も何故かいない(2年の縁下達はちゃんと来ているようだけど)
…なんでタイミングがいいんだろうか
まあ、でもこれで俺だけがもやもやすることはない
大地にでもこっそりと打ち明けよう


「な、なあ大地」
「ん?なんだへなちょこ」
「なんでそんなこというかな!?」

なんで俺のメンタル面がやられるの…


「で、なんだよ」
「いや、柚葵ちゃんのことなんだけど」
「柚葵?なんだ?狙ってんのか?やめとけやめとけスガに殺されるぞ」
「いや!?なんでそうなるんだよ!?」
「お前が真顔だから」
「だ、大地ぃ……」
「ははは、冗談だよ」
「……………」

だから、なんで俺が攻撃されんだろう
ははははは………………はぁ


「で?柚葵がどうしたんだ?」
「今日、俺のクラスの鈴木が」

そこからなるべく分かり易いように大地に説明した
ちょっと説明足らずのところでも頭のいい大地には分かると思うから重要なところは細かく伝えた


「っは!?おまっ!!じゃあ柚葵は青城の岩泉が好きだってのか!?」
「だ、大地!声デカイって!!」


こんなことスガに聞かれてたら
ガシャンッ

「!?」

嫌に響く音に驚いた
恐る恐るその方を向いてみると………



「あ」

入り口に菅原と柚葵ちゃんと清水がいた


「……………」
「…………っ」

何も言わずに扉に手をかけたままでいるスガと、少し顔を赤くしている柚葵ちゃんと…


なぜかニヤついている清水がいた
(なんでニヤついているんだ清水……)


「あ、いや!そのーさっきのは」
「旭」
「は、大地………?」
「だめだ、あれは多分だめだ…」

大地!お前が弱気でどうすんだよ!!!?
俺達の危機だぞ??
殺られる…!!


「…………」

きぃやぁあああ!!!!
こっちに来る!!!こっちに来るよ!!!?
大地っ!


「あれ!?」

って!!大地がいない!!!
えっ!どこいったんだよ!?
あ!!なんで2階にいるんだよ!!!(縁下達まで!!)


「旭」
「はっっ!!はいぃぃいいぃ!!!!」

だめだ、俺の人生終わった
出来ることなら春高に行きたかった………
みんな、こんなへなちょこがエースでごめんな………


「詳しく話きかせてもらおうか?」


ジ・エンド俺


清水助けてくれよ
柚葵ちゃんこっちによこしてくれよ
こっち指さしてないで………って
ん?
柚葵ちゃんが走って……


「孝支先輩!!」


スガに抱きついたァああ!!?



「は、…へ?」


………おお、スガが見事に真っ赤になって固まってる……
ん?清水がこっちに親指立てて…………そういうことか
清水助かったありがとう!!


「旭さんが泣いちゃってます!!虐めは駄目です絶対に!!!」
「あ、いや」
「絶対にだめです!!!」

柚葵ちゃん………少しずれてるけどスガが幸せそうだから俺助かったよ……ありがとう!!


「ところで柚葵、今の話は本当なの?」

清水、この雰囲気の中直球で聞くとか流石すぎる
クールビューティーどころじゃないぞ


「あ、いやぁ……言ったことは事実なんですけど…」



俺の聞き間違えじゃなくて良かったけど、スガの顔が一気に固まった
内心この状態には幸福感を抱いているけど、柚葵ちゃんの発する言葉は受け入れられないんだな…………


「告白されて困ったときにそう言えって一くんと徹くんに言われました」
「え?」

あ、スガ復活した


「及川に……?」
「はい、俺は流石に信用されないけど、岩ちゃんとだったら効果はあるし、もし疑われても幼馴染みで昔から好きなのって写真見せたらいいよって言われてて」
「写真?」

清水今日はぐいぐい来るな………


「あ、これです」
「………これは」
「うん」
「隠し撮りっぽいやつだな」
「大地!」

いつの間に復活したんだよ!なんでここにいんだよ!さっきまで知らぬ顔して2階にいたのに!!


「徹くんがおふざけで撮ったやつなんですけど、恋する乙女はこのぐらいするぞ☆みたいな感じで言われて、一応一くん本人にも許可いただいたので残していたんですけど…まさか使う日が来るとは思っていませんでした」


なんというか、柚葵ちゃんの周りって過保護………
というかよかった
岩泉が好きなわけじゃないんだ
俺のもやもやは晴れたんだ………


「なんだ……安心した………」
「?なにがです??」
「い、いや!なんでもないよ!」


とりあえず収まってよかった…

その後はスガに抱きついていた柚葵ちゃんがふと我に返って真っ赤になって倒れたりしたけど、無事に何事もなく今日を終えた
(スガは俺の責任だから送ってくって無理やり柚葵ちゃんを送ってった。背中からにじみ出る幸せオーラが痛い)
なんだか俺は今日1日で一週間分のエネルギーを使った気がした













夜、知恵熱を出しぶっ倒れた事は家族のみ知る








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