*社会人設定











将来の夢は?

って聞かれた時、花嫁さん!って言ってた記憶はある
小さい頃だけど………


だけど、だんだんとそんな夢は無くなっていき、将来の夢は看護師になること
とか、先生になることとか
プランナーになりたいだとか現実味を帯びてくる






「そんな夢一応持ってた時期もあったんだよなぁ……」





目の前の鏡にうつる自分の顔をみながらしみじみと思う
どれだけ時間をかけてきただろう
どれだけ大切な時間を過ごしてきただろう
大きな大きな壁にも立ち向かってきた
小さな小さな幸せもいっぱいあった



「こんなに顔付きって変わるんだなぁ………」



いままでじっくりと鏡を見るっていうのはあまりなかったし、じっくりとみてたらナルシシストだ



「あ、あいつは今もじっくりとみてるか」



毎日毎日鏡で格闘してるんだろうなぁと思い出すだけで笑えてきた



「ふふふ」
「?どうかされました??」
「あ、いえ、大丈夫です」



急に笑ったものだから、私を綺麗にしてくれているひとに笑われてしまった



「ならよかった。大抵みなさん自分が変わる姿を見て、緊張で顔をゆがめる方が多いので着付けが苦しいのかと思いました」
「え!そうなんですか!?」
「泣き出す人もいらっしゃいますよ?」



知らなかった
まあ、知らないのが普通なのだろうけど



「はい、出来ました。一応リハで伺った通りできていると思いますが…」
「………………別人のようです…」
「今日は魔法のかかる日ですよ、思いっきり楽しんできてくださいね!」
「………ありがとうございます」



心がほっこりとする
こんなに世界が色付くことはこれから先あまりないのではないのかと思う



コンコン



そんな時部屋にノック音が響いた





「あちらの準備も整ったようですね、また何かございましたらお声がけください」
「はい、ありがとうございます」
「では、失礼いたします」



そして、いままで居た人と入れ替わるようにしてきた人は、ダークグレーのタキシードに身を包んでいた



「誰」
「……………………お前な…」
「うそうそ!その髪型がウケて笑わないようにボケをかましただけ!」
「うっせ…そんなこといってっと……今夜楽しみだなァ?」
「!」


こいつ、こんな時まで脳みそピンクか



「……にしても、化けるな」
「化けるというか馬子にも衣装でしょ?」
「衣装は既に見てる」
「あ、そっか。これクロが選んだもんね」
「………………おう」
「にしても、私がこんな日向かえるとは思ってなかったなぁ………」
「あ?別れる気だったのか?」
「いや、そうじゃなくって!……小さい頃の夢だったウェディングドレスを着てるんだなって……」
「しかも旦那さんのお気に入り」
「っ!」



クロが私が試着した時に一目惚れしたこのドレス
自分が選べないから、コスチュームアドバイザーの人と悩み悩んでた時に、クロが選んだこの一着
私が自分で着れないって思ってたラインだから、クロの見る目ないんじゃないかって思ってたんだけど、全然だった。
すごく私にあってて、それが気に入ったクロが珍しくニヤリと笑う笑い方じゃなく、微笑んだ顔をしたのを今でも覚えている



「クロが選んでくれたドレス着てクロの横に立ってクロと一緒に歩くんだよね」


あと数分で始まる式まであと少し


「………なあ」
「ん?」
「そのクロってのやめね?」






クロがきつくもなくゆるくもなく後ろから抱きしめてきて、そう言ってきた
肩のそばにクロの顔がある
鏡越しに目が合って恥ずかしくなる
チークとはちがう赤みが増すほほが隠せない



「な、なに」
「なにじゃねーよ、名前の名字はなにになるんだ?」
「……く…………黒尾……」




今だに言い慣れない
新しい名字




「名前は旦那のこと自分と同じ名字のあだ名で呼んでんだぞ」
「………うん」
「……おかしいだろ?」
「……たしかに」
「鉄朗…って呼ぶだけだろ」



それで上手くいったら苦労しないし!!



「て、ててて」
「………」
「鉄……朗…」
「……っは」
「?」
「なんか………こしょばいー」
「て、鉄朗が言えって言ったんでしょ!?」



もう、顔がベールに隠れてるけど、耳まで真っ赤なのが丸分かりだ




「あーーっ」
「?」
「このベール邪魔」
「!?」



鉄朗はベールに手をかけた




「な、なななな!?何する気!?」
「キス」
「ばっばっかじゃない!?式まで後ちょっとなんだから我慢してよ!!!!」



ベールを捲ろうとする鉄朗の手と、それを阻止しようとする私の手の攻防戦が繰り広げられる何とも言えない緊張感のない部屋



「いいだろ、いきなり名前呼ばれて我慢出来るか」
「いや、我慢しろよ、ベールの意味なくなる!」
「俺の興奮を湧きたてるため」
「バッカじゃない!!?」
「まあ、今はやめといてやるが」
「?」
「誓いのキス覚悟しろよ」








ハピネス


(式で)
(皆が赤面した話は)
(また今度)









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