今日も彼女は教室にいた
いつもと違って元気がないようだ
部活が終わり、木兎さんの自主練に付き合った後だというのにまだいる
噂の彼とこれから会ってデートでもするのであろうか…

「こんなところで何してるんです？」
「っ！あ、」
「！」


分かっていながら声をかけた
けど、振り向いた彼女の顔を見て後悔した


「名字…？」
「ご！ごめん！！目にホコリが入っただけだから気にしないで！」
「……」


きっと名字は今後悔しているのだろう
俺に涙を見せたことを
そして俺の事で今は頭がいっぱいだろう

足を動かし彼女の元まで行く
けれど、目の前まできたけど顔を上げない名字
何をおもっている？
俺の事をすこしでもいいから見ていてくれているのだろうか


「あのね…」

そう思った途端、名字は少しずつ小さな声で話始めた


「昨日ね、彼と会って………」
「…うん」
「ちゃんと、目を見て話すの久々で、会うのも久々で、私」
「うん」
「彼の、変化に気付けてなかった……」
「………」

この席は誰の席だったか忘れたけど、名字の前の椅子を引きそこに座った
だんだん声が震えてる名字に何もできなくて、どうしようもなくて


「好きな……人が、できちゃった……って言われちゃったよ……っ」

名字の目から溢れてくる涙
そんな奴の為に泣くな
そんな涙を流すな
そう思いながら今俺が出来ることである、名字の涙を俺の手で拭った


「なんでかなぁ？わたし、すきなだけなのに、とししただから？そんなりゆう？？？」
「………」
「どうしたらどうしたらいい？私を一途みてくれる人が現れるの？」


違う
君は努力した努力していた
アイツが馬鹿なだけなんだ
そんな馬鹿を好きになった君も君だけど…
俺が保証する
ずっと見てきていたのだから
俺が俺が名前を


「私だけを想ってくれて、真面目で、何事も一生懸命な人いないかなぁ……？」


何気ないそんな言葉に手が止まった
もう、我慢できない
俺はそんなに優しい人間じゃない


「俺がいる」
「っ！」

今まで何度そこに触れたかったか
何度君に触れたかったか
思いを告げたかったか
もう我慢しない
己の本能のままに名前の唇を奪った


「あ、かあ…し…く、ん？」

きょとんとしている顔がかわいい
とまどっている君が愛おしい
俺は君を手に入れる
もう、なにも遠慮はしないよ


「名字名前さん」
「は、はい」

至近距離で話したこともないから顔が真っ赤な名前を今すぐ抱きしめたい
思いを告げたい


「俺は昔から名前のことが好きだよ」
「！？」
「一途に思ってるのは俺だ」
「あか、あしくん？」

言ってやった
後戻りはできない
さあ








「俺にしときなよ」










落ちておいで







何かが動く音がした










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