「……これはどういうこと……名前?」
「……ぁ」
普段聞かない低い低い声が目の前から聞こえる
なぜ、この状況になったか説明しよう
「浮気されてると思う」
『…は?』
大学を無事に卒業し
就職もいいところに行けたと思う
順風満帆その言葉の意味が分かってきた矢先に問題が起きた
「…いや、それは考え過ぎじゃないか?」
「そうだよ、スガにかぎってそれは……」
「女物のアクセサリーがでてきた。それも私が持ってないやつ」
「…………」
「あ、いま何男の部屋勝手に探ってんだよって顔してるね2人とも」
私と彼氏である孝支は大学の頃から別々に一人暮らしを始めた
そんな孝支の部屋を掃除していた時だ
私が持っていないタイプの女物ブランドのものだったのだ
ぶっちゃけた話孝支とは半月以上前から会ってないし連絡も満足にしてない
たまたま合わなかったとかそういうのじゃなくて、連絡入れても、今日は無理とかごめん仕事がはいっただとか……
だからその日、家に来ていいとお許しが出たので楽しみに行ったのだけど、机の上へ出しっぱなしにされていた箱があった
誰かへのプレゼントかな?と疑問を抱きつつ中身を悪いなぁーって思いながら見てみると……
あまり男の人が行かない所のアクセサリーショップのものだ
半月以上会ってなくって、このプレゼントを見つけた日には他に女がいるだろうなって思っても仕方ないでしょ!
という訳で、孝支とのデートなんてなんのその
高校の時に同じバレー部だった大地と旭を呼んだ
マネージャーの言うことは絶対だよって泣き落としで
「名前、多分それは何かの間違いだ、男物だったんだ」
「証拠品はこちらでございます」
写メを残していたのでそれを二人に見せた
『…………………………』
「これをみても男物だといえる?」
「すまん」
明らかにそこにはハート型でキラキラと光っている高級感溢れるネックレスが写ってる
「す、スガがつけ」
「スガにそんな趣味はないぞ旭」
まだ孝支を庇う旭
よほど孝支に味方したいらしい
「ん?まてよ?ってことは名前にプレゼントってことじゃないのか?」
「孝支に限ってそれはない」
「?なんで?」
「私の絶対好みじゃないから。孝支が分からないはずないじゃない?」
「……確かに、スガは名前の好みは熟知してるはずだよな…」
「新しいものに挑戦しろよってことなんじゃ……」
「私の好みと真逆のものをいきなり?」
「…………」
「……ありえないわな」
はい、私以外の誰かにあげるものですよねー!
「ってな訳で、仕返しをしたいのです」
「……怒らすとスガのやつ大地より怖いよ」
「何か言ったかヘタレ」
「ごめんなさい」
「そこ、まだそんなやり取りしてたのかい。てか、私が孝支にキレてやる」
「旭はいつまで経っても旭だからな。それはお前のためにならないぞ」
「………まあ、変わらず何より。で、本題だけど、今日本当は誕生日の孝支と貴重なデートの約束をしていたわけだ」
「おい、話を聞けよ」
「え!じゃあ行ったほうが…てか、今日スガの誕生日だったな」
「今日は仕事の予定が入ったからいけないと断った!」
「……………」
「大地顔怖い!」
「…………で?俺たちを利用して何をしようと?」
「デート」
「……は?」
「デートというか遊ぼうよ!3人で!ついでに孝支のプレゼントまだ買ってないから、一応念の為につきあって!」
そりゃあ、浮気されて怒るけど孝支と別れたくないのが本音
だから、プレゼントだけでも最後にあげよう!と思う私の気持ちもわかってほしい
っで、なんとか渋る大地を引っ張って行こうと思ったんだけど、外に出た瞬間に菅原孝支さんがいらっしゃってて冒頭に戻るのである
『………………………』
「…じゃ、俺ら帰るから。スガ誕生日おめっと」
「はぁ!?大地ひどい!!旭!!」
「大地に歯向かったら怖いから。スガおめでとう」
「ヘタレ!!」
「名前」
「!」
再び低い声で呼ばれて肩が大きく揺れた
だって怖い
「大地、旭、わざわざありがとう……………もうかえっていいよ……」
あぁ、なんだか孝支がブラックにみえる
私は大地と旭の背中を見つめることしかできない
殺される、助けて
と
ガチャン
「で?」
「……………………」
ご丁寧に扉を閉められ、いよいよ逃げ場が無くなってしまった
完全にキレていらっしゃる
いつものチャームポイントの眉毛が怖い形になっている………
「なに俺の誘いを断った挙句に他の男連れ込んでんの?」
「ひ、一人じゃないからいいじゃん」
「そういう問題じゃないんだよ」
ダンッ
と、いわゆる壁ドンと言えばいいのだろうか
それをされたわけだけど、なぜ私はこんなにも冷静なのだろう
ああ、そうか
キレすぎて怒りが通り過ぎたんだ
「な……よ」
「?」
「なによ自分が悪い癖に」
「は!?」
「浮気したのそっちじゃない、自分の事棚にあげて」
「ちょっとまって!なんのことだべ!?」
「この間……机の上にあったのみた」
「机の上………?…………!!」
あ、やっぱりやましいことがあったんだ
孝支の目が見開かれた
なんだ、やっぱりそうなの?
「あ、………れは」
「なに」
「…………はぁー」
何故かため息をつかれた
いや、ため息つきたいのこっちなんだけど
「あれ、手違いのやつ」
「……………は?」
「本当はこれ」
「?」
ひんやりとした感覚が手にあたった
あたったっていうよりか………………
「これ………」
「今日のデート先で本当は渡したかったんだ。………今日何の日か覚えてる…?」
こんなに悲しんでる孝支は久々にみる
「孝支の……誕生日」
「うん、覚えてた」
「それはそうだよ!だって」
「今日のデート断られたから忘れられてるって思ったし、愛想つかされたと思った」
「!」
「でも仕事なら仕方ないし、名前の家で待ってようかと思ったら大地と旭と出てくるし」
「そ、れは」
「嫉妬してよからぬことも考えた」
なんだ、なんだそれは
怖いよ孝支
「でも、それでも俺は名前を信じてるから」 「!」
「だからさ、今年のプレゼントさ」
「名前をちょーだい」
そう言われて、返事をする隙もあたえず私の唇に孝支のそれが重ねられた
「………………しょーがないからあげる」
「素直じゃないべ」
「うるさい!恥ずかしいの!」
「……」
微笑む孝支はさりげなく私の左手に自分の右手を絡めてきた
「名前、他になにかいうこと残ってない?」
もちろんわかってる
「…誕生日おめでとう、大好き」
Happy Birthday 菅原孝支
2人の左手薬指には
お揃いのリングが輝いていた
(あのネックレスとこの指輪どう間違えるの)
(店員さんの入れ間違い)
(…………………そこの店大丈夫?)
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