『名前聞いてへんかった』

なんと間抜けな反応だろうか
イケメンと言われる二人が口を開けてアホ面してるの笑っていいものだろうか
教えないほうがいいかとは思ったんだけど…そんな顔見てると堪え切れない…
いや、まあ
「ふふふ!!おかしっ!!」
我慢できないんやけどな
「なに笑うてるねん…!」
「こっちは必死やぞ…!」
「ご、めんなさいっ!!でも可笑しくてっ!!」
名前一つだけに必死なツインズおもろすぎる
「せや、こっちの自己紹介もまだやんな…俺は」
「せやった!俺は宮侑!」
「ツム、先にいうなや!」
「早い者勝ちやで!」
「くそか!…まあええわ、俺は治っちゅうんよ。よろしゅうな」
そう言って出された手に何気なしに
「治くんやね?よろしく」
「っあ!自分ズルいで!!」
「早い者勝ちや」
「くそか!!」
握り返す形で握手をしたら、もう一人が騒ぎだした
さっきとは逆やな
何だこの双子……おもろすぎる
「いや、お前と争ってる場合やなかったわ」
「せや、自分の名前聞かんとあかんのに!」
「ようやく気がついたんかい」
思わずポロっと口にしたけど盛り上がった二人には聴こえてないみたいだ
「改めまして…私の名前は井上舞です。よろしくね、侑くんと治くん」
『よろしゅうな!』
「舞チャン!」
「舞」
「あ"!?なんでお前呼び捨てにしとんのや!」
「俺の勝手やろ」
「ほな俺も舞って呼ぶ!」
「舞、俺には敬語なくてええからな」
「俺も!敬語なくてええからな!!気軽に話しかけてきて!」
「もう好きにしてくれ……」

「って事があってね」
「あーなるほどね…どんな会話か気になっとったんよね」
一部から目立っていた私達だったけど、私は友人を見つけて双子から離れた
なんか後ろでぎゃいぎゃい言ってたけど、多分兄弟喧嘩だろうから放置してきた
友人である相澤(あいざわ)真樹(まき)は私がイケメンに捕まっていた事に興味津々
事情を説明すると心底楽しそうな顔をした
「あんたにようやく春が来たんか」
「え、意味分からん」
「春や春!」
「今4月やから春やろ?」
「あ……ダメだこの子」
「なんでよ!!」
いきなりディスられて意味分からんで!?
「あー…やっぱり舞っておもろいなぁ」
「っうわ!」
後ろからいきなり声をかけられた
無防備すぎて心臓が跳び跳ねた
「あ………?…侑くんか?」
「おっ噂の片割れやん」
「どーも、俺も同じクラスやけん仲間に入れてーな!」
「え?侑くんであってるよね?」
「あっとるあっとる!流石俺の舞!」
「いや、私はあなたのものじゃないです」
「大丈夫、長期戦は覚悟の上やで」
「意味分からんわ」
「私からしたら舞が鈍感すぎて心配」
「俺も!なんや自分…気が合うなぁ!」
「そうね……舞の事なら誰よりも私が知ってると思うよ」
「な、なんやて…」
「毎日お菓子とかで手を打とうか?」
「うお!?まじか!?ほんまに!?」
「うん、おもろそうやし」
「自分ええやつやなぁ……」
「どーも」
「名前は……相澤さんやね」
「あ、相澤でええよ」
「おん!よろしゅうな!相澤!取引成立や!」
「こちらこそよろしく、宮侑」
ガシッと手を握り合う二人に置いてきぼりの私
「なんで意気投合してんの…?」
『同盟組んだから…?』
「ツッコミ待ってるならお答えできないからね」
もう二人を放っておいて体育館へ向かう

「な、長かった……」
「あの校長熱血過ぎやろ……」
「だわ……」
でも、お陰で部活が盛んなことは分かったし、絶対に部活動に入らないといけないことはここで知った
といっても入る部活は元々決めていたけど
「真樹はやっぱりバド部?」
「だね〜そのために入ってきたといってもいいぐらいだから」
「だよね…」
ほとんどの生徒が部活推薦とか受けるスポーツ学校というとは知っていた
だからこそ私もここでやりたいことをさせてもらおうと思ったんだ
「それにしても、宮侑の方は中学でベストサーバー取ってたなんて驚きやね」
「そもそもバレーボール部だったことに驚いた」
バレーボールはワールドカップとかグラチャンとかよく見るからルールも知ってるし、見るのが楽しいスポーツなのは知ってる
むしろ観戦するならバレーボールがいい
「なんや?舞は俺を見直してくれたん?」
「見直すもなにも…そんなすごい奴と会話していいものか考え中」
「えっ!?いやや!!俺、舞と話せんくなるのはいややで!!?」
「…冗談だから離してください」
むぎゅっと抱きついてきた侑くんのパーソナルスペースの狭さに驚きやわ
そんなに仲良くなった覚えはない
「いやや〜話してくれないなら離さない〜」
「ええ加減にせんとど突くぞ」
「すんませんでした」
ツートーンくらい声のトーンを落としたら大人しく離れていった
まるで犬でもしつけてる気分になるなぁ
「ほいほいと女子に抱きつくとかチャラ男やね、侑くんって」
「いや!舞にだけやで!?」
「チャラ男の言うことは信用ならんな」
「っえ!あ、相澤…!」
真樹に助けを求めるかのように顔を向けてるけど
「私も舞に同意」
「味方がおらん…!」
もちろん真樹が味方になるわけがない
そもそも何もないのに抱きついてくるような男は信用ならんと言ってるのに
こいつはヤバイ奴だ、再認識した
「あ、待って…?確実に舞のなかの俺、後退してきてない?」
「してきとるなぁ」
「相澤助けてくれ…!」
「無理やな」


「そう言えば舞は何部に入るん?」
はじめてのLHRが終わり、これから部活のオリエンテーションが始まる
稲荷崎は運動部が盛んである
だけど、それと同じように文化部も賞を取っていたりと強い
「決まってへんかったら、バレー部のマネージャーにならへん!?舞がいたら心強いと思うねんけど!」
「冗談よしてよ。侑くん、私がいなくても相当強いだろうし、そんな私欲で人の事操ったりせんやろ?」
「…まあ、迷ってたらあわよくば…とは思ってたけどな」
「残念ですが心に決めてる部活があるから、マネージャーはできないよ」
「…せやろなぁ」
「でも」
「?」
「もしかしたら関わりは持つかも?私の腕次第で」
「へ?」
あの後しつこくどの部活にするん!?と聞かれたけど、会ってからのお楽しみとはぐらかした
その後、治くんにまで知れてそれはそれは大変でした
さっさと家に帰えればよかった
もちろん宮兄弟はバレー部に連行されてた
私は明日から
入部届けを出して将来に繋げれる部活に入るんだ

余談だけど、治くんの突撃はとんでもなくて「俺は同じクラスやあらへんし、舞と話したりするのツムよりできんからそれぐらいは教えてくれてもええんとちゃう??なあ、舞?」と、どこから出したか分からない色気にやられそうになって部活を教えてしまったのは侑くんには秘密だ





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