Agapanthus




青城のタイムアウト
いままでより断然ラリーが続くようになってきた分
「よく飲むなぁ…」
脱水症状起こさないか心配なところではある
「すっげーぞ日向、移動攻撃キレッキレじゃねーか!」
「ドゥフ!」
「うっかりお前を目で追っちゃうとこだったよ!」
「コラ!ゆっくり飲ましてやれ!」
特に絡まれている翔ちゃん
ツッキーみたいに上手くサボることなんて考えもしない彼だから、なんでも全力投球…
走り回っていくらリベロと入れ替わりになるっていっても走る量が他とは違う
そしてこのタイミングのタイムアウト……嫌な予感がする
変人速攻のサインがバレたときのようなこの感じ……青城は次確実に攻略をしてくるはず
攻略されたらうちにはもう隠し玉は残っていない…
「……飛雄」
「?うす」
「指の調子はどう?」
「いつも通りですけど」
「…そう」
いつもより長い試合
飛雄のトスが乱れるなんてことが無いとは言えない
隠し玉がない今、今までの攻撃で勝たなくてはいけない
そのためには飛雄の手が指が壊れないように見るのがトレーナーとしての私の役割でもある
出された手を見ながら一応手をほぐしていく
「…徹くんだけをみてたらだめだからね」
「!」
「バレバレだからーね!」
「いでっ」
軽く叩いたはずなのにこの子はオーバーリアクションだなぁ……
まあ、でも前よりはよく見えてるんだけど

「……………」
「…スガ、イチャついてるわけじゃないから俺はあいつら注意しないぞ」
「!わ、分かってるよ!
ピーーッ
「はい!いってらっしゃい!」
「……柚葵さん俺の時だけ厳しくないっすか」
「気のせいでしょ!さぁ、サーブがんばれ!青城ににギャフンって言わせちゃえ!」
「……うす!」
「影山ナイッサー」
「アウトアウト!」
「ナイスジャッジ!」
「!スンマセン!」
「……言ったそばからミスされるとなんか、こう、……なにしてるんだって思っちゃいますね」
「多分、自分がよくわかってるんじゃないかな?柚葵の方をすごく見てる」
「………確かに」
潔子さんの言った通り、こちらを悔しそうにかと思えば怯えてみる飛雄の姿が見てとれた
「なんで怯えてるんだろ…飛雄」
ミスは仕方ない、怒るつもりはないのだけど飛雄はずっとこっちを見てくる
試合に集中してくれ……
そして先程の一点を龍が返したところで16-16
次のローテーションで翔ちゃんは後衛へと下がってしまう…………ここでなんとか引き離したいところだけど………
「オイ 元気ですか!!」
「!!?元気です!!」
「ガッツリ稼いでから後衛下がれよ!!」
「あたり前だ!!10点獲る!!」
「10点だけかよ!?」
「20点!!」
ああ、うん
本人たちもやる気だった
ただ会話がアホさ丸出しなんだけど…………
「西谷!ナイスレシーブ!」
龍のサーブから始まったラリー
チャンスは烏野へと回ってきた
飛雄は移動攻撃を……
「ん?」
「?」
「…青城が、翔ちゃんにブロック付けてない…!」
「ノーマーク…?」
おかしい
いままで付いてたブロックがつかなくなった……
考えられるのは
「ディグ………レシーブでの対応!」
案の定翔ちゃんのスバイクは構えていたリベロによって完璧にレシーブされてしまった
と同時に
「ここでツーアタック!!」
一瞬の動揺に畳み掛ける徹くんのツーアタック…!!
そして徹くんのサーブの番
なにもかもが計算されているかのような切り替えの早さと攻撃
あの移動攻撃でさえも崩せない青城…
「一本で切る!!」
「うス!!」
ドガッと音をたてネットにかかった徹くんのサーブ
それは運悪く烏野コートへと落ち、青城のポイントとなった
「今のは仕方ねえ切り替えろ!!」
「思いたくはないけど……運が青城に寄りつつあるってこと、か」
「焦るな、焦るなよ…!」
再び徹くんのサーブ
今度は強烈なサーブが夕を襲う
「スマンカバー!!」
「「オーライ!」」
ボールは上がったものの飛雄と旭さんの間
二人は一瞬動きが止まり
「影山!!」
「っ!!」
「悪っ!」
「旭ラスト!!」
お見合いし、危うく何もできずボールが落ちるところだったけど、大地さんが声で指示をだしなんとか繋げることができた
その後もボールはコートに落ちることもなく、ながい長いラリーが続く
このラリーを制しないと点差も広がり、徹くんのサーブも続いてしまう……それだけは避けたいところ…
「ふんがーっ!!!」
皆同じで必死に食らいついてる!
「ワンタッチ!!」
「!」
「カバー!!」
翔ちゃんのブロックに当たったボールがコートの外に落ちていく
けど、旭さんが飛び込んで拾って夕に繋げるも、旭さんは打てる体勢にない…!
誰にラストを託す…!
「センタアアアァ!!」
「!翔陽頼むっ」
『ブチ抜けえええええ!!!!』
「翔ちゃん!」
任されたのは小さな翔ちゃん
だけど見え見えな攻撃には
『止めろオオオオオオ!!!!』
青城ブロック3枚の大きな大きな壁…!
越えることの出来なかったボールは大きな音をたてて烏野コートへと落ちた
「っしゃアアアァ!!!!」
「先生!!」
「っハイ!!」
たまらず烏養くんが動いた
16-19
点差が嫌なところで広がってしまった
徹くんの集中力や青城の調子を物理的に切らせるため、タイムアウトを取るのも仕方がない
だけど、きっと
徹くんが絶好調なのは変わらない
「飛雄ちゃん焦ったら負けるよ」
「……分かってます、そのあだ名で呼ぶのやめてください」
「サーブミス」
「!うぐ…」
「それは仕方ないこと。だけどそれで私の事気にするんじゃない。今青城と試合してるの…分かる?私の事気にする余裕があるなら皆の調子を気にしなさい。特に翔陽の」
「!」
「…………翔ちゃんと飛雄なら最強なんでしょ?」
二人共倒れだなんてことあったらダメだ
烏野の軸が崩れるのだけは…この点差を縮めれるのは
「皆期待してるんだから」
このコンビあってこそ
「…………ウス」
「こういう時は声だ声!!とりあえず声出しとけ!!」
「行け行け烏野」「押せ押せ烏……」
「おい、最初は"行け行け"だろ、合わせろよ!」
嶋田さん達が何とか応援のため声を出して励ましてくれてるけど、なんか噛み合ってなくて面白い
「行っ」
「!?」
「ん?」
そんな二人を勢い良く振り返り見る烏養くん
あれ?気のせいか嶋田さんを見つめてる……?
ピーーッ
そして試合はこの音で再開された
「柚葵」
「はい?」
徹くんのサーブが放たれる前に烏養くんに話をかけられた
あ、大丈夫だ
レシーブは綺麗に上げれたみたいだ
「一本、ほんの少しでもいい、空気を変える一本が欲しい」
「?うん」
「やっぱりこういう時柚葵が選手だったらその力欲しいところだが、俺の考えわかるか?」
「私の力が欲しい………?どういう………まさか」
烏養くんは言った
一本、"空気を変える"一本……と
そして私の力が"欲しい"と
「……この場面で出されたら私でも萎縮するけど!?」
「だよな…俺でもだ。だけどこれしか流れを変えるの思い当たらねぇ」
「………山口くんはジャンプフローターを打つんだよね?だけど練習見る限りではせいぜいマグレ当たり……それでもそのマグレが」
「それでさえ欲しい」
「…運はこちらにないかもしれないけど、そっか」
山口くんに試練を持たせるんだ
「……ピンチサーバーで出すんだね」
そしてタイミング良く青城側にタッチネットがあり、徹くんのサーブは終わり翔ちゃんが後衛へ
そして烏養くんは動いた
「山口くん、深呼吸してからいくんだよ」
「……………は、い」
私は見守る事しかできない
「日向リラックス!」
ピーーッ
そして震える手で10番の札をあげたのは
よく自分の状況が分かってない山口くん
次青城に点が入れば大台の20点
流れをこのまま持っていかれたら追いつけなくなる
そこに投下されたピンチサーバー…
未知のピンチサーバーが出てきただけで、いくらか青城にはプレッシャーを与えられるはず
流れはどこから変わるか分からない
だけど山口くんの背中はとても
見ているだけで苦しい
「山口っナイッサ…!!!でも負けねーかんな…!!」
一瞬でも下げられるのが嫌なんだな
「山口」
「!」
「流れ変えて来い!」
「は…はい…!」
誰だって萎縮する緊張する
ただ、その言葉をかけてもらって本人がどう動けるかは私達には分からない
「烏養君」
「柚葵」
「不安そうな顔ダメです」
「皆を信じよう」
武ちゃんが烏養くんに
潔子さんが私に
それぞれ暗い顔を無意識にしてしまったらしい
ダメだなぁ…
「そうだなスマン」
「すみません」
仲間を信じないと
そして初めて激闘を繰り返しているコートに入った山口くん
プレッシャーを肌で感じているはずだ
「オオウ大抜擢じゃねーか山口!」
「ハッひ!」
「一発行ったれ山口!」
「ナイッサ」
「ナッナイッサきっきらっ気楽に行け行けよっ」
「………」
「旭"気楽"の意味わかってるか」
…みんな一言かけていってるけどツッキーだけ無言か
というか逆に旭さん大丈夫なのかな?

「(うおお、このタイミングは誰だってビビるわ…及川と同じ血が流れてる柚葵は違うかもだけど)」
「(これが高校初試合初サーブとか心臓出る!口から出る!コーチドSか!柚葵ちゃんもコーチ止めなかったのか…)」
「(旭さんか翔陽だったら心肺停止119番だな)」
「(こっちも緊張する…いかん、山口に伝わる!平常心…!)」
「(日向が打つよりは後頭部が安全だな)」
なんだろう、龍と旭さんに見られてる
……よからぬこと考えてるんだろうか
「山ぐーち!!」
「!!?」
「!!」
孝支先輩…?
『一本ナイッサーブ!!!』
かっかわいすぎるんですけど……!?
なに!これ!!
ウォームアップゾーンにいるみんなが山口くんに向けて、チアリーディングのように片足上げ応援ポーズとってる……!!
特に孝支先輩なんてウィンク付き!可愛すぎます!
ほんとそういうところとかが
「好き!」
「(柚葵、声に出てること気づいてない…)」
その応援に山口くんは頷いて答えたけど、その顔はまだ緊張しているようだった
「一本で切れーっ」
山口くんは手の汗をユニホームで拭き、ボールを床に叩きつけていたが、足にボールが当たり転がったボールを取りに行っていた
大丈夫かな………サーブは1人で挑む
この場面で緊張しないわけが無いけど…
ピッ始まりのホイッスル
!トスのタイミングが早い……!
お願い入って……!!
『(入れえっ!!!)』
カッ
「!!!」
ピッ終わりのホイッスルが虚しく響く
「っしゃあああラッキィイイイ」
その声を聞くまで世界が無音だったかのように思えた
山口くんのサーブは願い虚しく、ネットにかかり烏野のコートへと落ちてしまった……
「すっすみません…!!」
「ドンマイ」
「きっ気にすんな!」
「すみません…!!!」
このプレーが吉と出るか凶と出るか
そしてこちらへと帰ってくる山口くん
「スミマセン…」
「………………いや」
「ドンマイですよ山口君!」
「ーー…気にすんな切り替えろ」
「ーハイ、スミマセン…」
……ダメだったかもしれない、早かったかもしれない
トラウマにならなければいいのだけど
「山口!!!」
「は……す、すみませー」
「次、決めろよ」
「ーー……」
"次"
「ーーハイ!!!」
その言葉があるから、次があるから人は頑張ることができるんだ
よかった
山口くんはここから強くなれる
早かったわけじゃない、私が決めつけてしまっただけ
山口くんごめんなさい
山口くんのその表情言葉に皆の空気が変わった
「主将ってすげーな…まだ全然適わねえ…」
「そうだね」
烏野のチームを束ねてる大地さんの言葉の重みは凄い
それを身近で支えている孝支先輩も凄いのだけど………
「?」
やっぱり孝支先輩が活躍するところ見たい
「オラッ!」
「くっ!」
「ナイス田中!!」
「っしゃあああ!!!」
そのためには…"次"がいる
「流れはどこからどう変わるかわからない」
"次"も戦うチャンスを掴め!!

意図した形じゃなくても、ちゃんと流れは変わった
それでも、青城は20点に乗った
もう後はない
集中力を切らすな
焦らずでもじわじわと青城に引き離されるな…!
「大地さんナイスレシーブ!」
19-21
すぐそこに見えているようで青城の背中は遥か遠く
連続得点で点をつめなければ烏野は負けを待つだけ……
「カバーカバー!」
「………」
旭さんの打ったスパイクがネットにかすかに当たった
疲れとで徐々に打点が下がってきてる………?
「国見ちゃん!!」
「ナイスカバー国見!」
「返ってくるぞ!!チャンボ!!」
「翔ちゃん…」
「は、はい!」
「体力は…?」
「?まだ全然動けます!」
「そう、お願いね」
「?」
翔ちゃんの体力に期待するしかない
移動攻撃を連発するために
そして龍が打ったスパイクは惜しくもアウト
19-22
「すんませんっっ」
そんな中、烏養くんは翔ちゃんに語りかける
「移動攻撃止める必要は無えよ」
「……」
「拾われる可能性があるのはどの攻撃も同じ。ブロックが無いって事はリスクが無いって事だ。迷わず行け」
「ハイ!!」
そのタイミングでツッキーがスパイクを決め、翔ちゃんが前衛へと上がった
そこから長いラリーと取って取られての繰り返し
「落ち着いて目の前の1点確実に獲る!」
「オス!」
「目の前の球が全部だぞ!!」
「オス!」
21-23
「ん"っ」
相手のスパイクを飛雄がなんとか上げた
「龍ラスト!!」
「オオッ」
ブロック3枚……!!
案の定ブロックに捕まってしまった龍のスパイク
そのまま落ちていくボールに食らいつく龍
「足っ!」
脳より体が反応したのか、ボールを足で拾う龍
そんな奇跡のレシーブで上げたボールが落ちる…!そう思った瞬間
雛烏が飛び込み、運よく相手のコートにネットイン……
「翔ちゃん!!ナイス!!」
『うおっっ』
『しゃあああ!!チビ助ボーズナイスッッ!!!』
これこそ執念…!!
連続得点!
もう一点、もう一点が欲しい
「影山も一本ナイッサー!!」
「ッサァー!!」
強烈な飛雄のサーブはなんとか拾われ、リベロのトスによって徹くんが強烈なスパイクを放つ
「大地さん!!」
顔に打たれた…!と思ったスパイクだったが、大地さんは既に構えており強烈なスパイクを拾った
そして繋がったボールを龍がスパイクで決めに行く
だけど、そこには大地さんのように構えていた岩ちゃんにレシーブされてしまった
「っしゃあああ!!!」
そしてそのボールを決めたのは
「青城これで…マッチポイント…!!」
青城だった
あと一点で青城が勝つ
22-24
この数字に焦らないわけがない
烏野から笑顔が消えている
タイムアウトも使ってしまってるし、どう紛らわすか………
「野郎共ビビるなァーッ!!前のめりで行くぜ」
と思えば夕のこの言葉……
みんなの顔に笑顔が戻ってきた
さすがだなぁ……
ピーーッ
「任せろ!」
「ナイスレシーブ!!」
きれいに返ったボールは
『旭さんナイスキイィ!!あと一点!!』
パイプ貫通で得点をもぎ取った
そして、あと一点差…………
ここで龍のサーブ
「田中ナイッサー!!」
「一本!」
「ッサー!!」
ミスをしたら即試合終了
攻めずに普通に打っても綺麗に拾われてマトモに攻撃されて終わり……
プレッシャーがふりかかる中、龍はきちんと入れてきた
「オーライ!」
「ナイスレシーブ!」
速攻くる!!
「ふぐっ」
思った通り速攻がきたけど、龍が全身を使って渾身のレシーブをした
けど!
「ネット越える!ダイレクトで叩かれる…!!」
青城コートでは徹くんが飛んでおり、ダイレクトで叩く準備をしている
ようやく青城の背中が見えてきたんだ
ここで諦めてなるものか…!
そんな言葉が似合うだろうか
越えると思ったボールに向かってとんだ飛雄が
「!」
ワンハンドトスで烏野へと戻し、徹くんが下がったところ…
そこに翔ちゃんのスパイクが決まった

24-24
土壇場で青城に追い付いた烏野
デュースだ……!互角に戦えてる!
ピーーッ
このタイミングで青城のタイムアウト
みんな汗が尋常じゃないくらい流れてる
「潔子さん!私ドリンクの方します!」
「うん!」
「うおおい!すげーぞ日向、影山ぁ!!」
「龍」
「ん?」
「肩」
「え"」
「見せて」
「な、なんだよー大丈夫だぜ!」
「……ふー、烏養くんに言おうかな」
「すんませんでした」
「少し冷やすだけだから警戒しなくてもいいのに…………」
ユニホームを少しずらすと赤くなっている龍の肩
先程速攻止めたときに体で受け止めてたからまさかとは思ったけど………
「……っ」
「龍」
「………(やべえ、スガさんめっちゃこっち見てる)」
「龍!」
「!お、おう」
「終わったよ?どうしたの?」
「い、いや、さんきゅーな!」
ぼーっとしてた龍がようやく気づき素早く夕のところまで移動してしまった
「なんだ?」

「………菅原、眉間にシワ」
「……清水、あれは仕方ないことだよな?」
「柚葵はトレーナーだから」

「影山!」
「!」
「移動攻撃何回でも打つかんな!!決まるまで!」
「オオ」
こっちは申し分ない
ピーーッ
「行くぞ!」
『ッシャアア!!』
「流れはこっちだ!」
「思いっきり行け田中ー!!」
「っしゃあああ行くぜぇえ!!!ア"ア"ッ」
「!」
気合いを入れた龍のサーブは相手のレシーブを少し乱した
そして青城の攻撃に烏野はブロック3枚!
ワンタッチを獲り、チャンスボール
「チャアアンスボォォオル!!!」
そしてそのボールは空間を切り裂くようにコートを走り抜ける翔ちゃんの元へ
「っ!」
ディグで対応されたが、一本でこちらに返ってくる
「チャンスボォール!」
「もう一回!!」
そしてその言葉通りに飛雄はコートを駆け抜ける翔ちゃんへとトスを回す
「正面!!」
「!」
「渡、ナイスレシーブ!」
「っ!」
翔ちゃんが拾われたことに動揺したのは一瞬
着地したと思えば直ぐ様ボールの方へと駆け出し、ブロックへと飛び
「!!」
「ナイスワンタッチ!!」
翔ちゃんのワンタッチで体勢を再び整える烏野
「もう、いっかぁぁぁい!!」
重力との戦い
根気との戦い
体力との戦い
だけど翔ちゃんは諦めずまた走り抜けた
「上がるってわかっててフリーにしてやる理由は無えよっ!!」
「ふんぐっ」
流石に攻撃を読まれ岩ちゃんがブロックについてきたのだけど
「!!?」
「!」
翔ちゃんのジャンプ力が飛ぶ前に落ちてしまった
タイミングがあわない……!!
「ぶへー!」
ピッ
「き、決まった…!!」
タイミングがあわないボールが通り抜けると思った瞬間、翔ちゃんはなんとかボールにさわり、形はフェイントという奇跡のポイントを生み出した
「翔陽ーッ」
「うおおい!!今のは日向に救われたなオイ!」
「日向ナイスーッ」
「一気に獲るぞ!!」
『オォ!!』
今度は烏野が大手だけど……
「岩泉ナイスキー!」
「いいぞいいぞハジメ!」
岩ちゃんが黙ってるわけなくて、軽々と囮を使って抜けた穴にスパイクを決められてしまった
これで同点だけど、青城が連続得点しない限りは烏野が優位に立った状態………
だけど
「ここで徹くんのサーブ………」
何を考えているか読めない表情
だけど多分、"牛島"の顔が浮かんでいるはず
この状況、あの日あの時と同じような緊張感
追い込めてはいるようだけど、サーブは関係なく攻めてくるはず
ピーーッ
トスを上げ高くジャンプする徹くん
………?打点がいつもと違う
「西谷ァァ!!」
夕に向かっていったボール
空気を切り裂くような音と共に向かったそれを
夕はボールに触らず見送った
そしてそのボールはコートの外に大きな音を立てながら叩きつけられた
ピッ
「ア、アウト………?徹くんがサーブミス……!?」
人間誰しもミスはある
だけど今まで滅多にサーブミスをしていない徹くん
それこそサーブの及川と呼ばれる私と共に
サーブだけはこだわっていた徹くんが
この場面この状況この緊張感に
負けた

烏野26-25青城







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