Agapanthus




ガタガタと振動が身体を巡る
息をする音とエンジン音の響く
帰りのバスの中で窓に寄りかかりながら外を眺める
緑が一面に広がる変わりない景色をシャットアウトした脳裏に、先程まで見ていた映像が流れていた

「…サービスエース」
相変わらず安定したサーブを見せつける徹くんを皆で2階から眺める
このサーブを完成させるまでどれほど努力してきたか、それは徹くんにしか分からないけど、完璧な彼の武器になった
「ギャーッまたっ…!」
「…………………」
「これで4本連続サービスエース……どっかの誰かさんだな」
「遠まわしに私のこと言ってる?烏養くん」
「逆にお前以外に誰がいるんだよ。ボールに愛されてやがるお前以外に!」
「いるよ私以外にも!……ほら、あれよあの人えっとあのー……………」
「出てこないなら言うんじゃねえよ」
「…名前忘れただけだよ!!」
「若いのに苦労するな」
…ごもっともである
「まあ、威力は言うまでもねえけど、あのコントロールもえげつねえな…」
「でも、あのサーブさえなんとかすれば…!」
「確かにサーブは怖いけど」
サーブだけが及川徹じゃない
「"セッター"としての及川は俺達にとって完全に未知だ」
「………」
実力を知ってるのは飛雄と私だけ
私はデータを集めてるけど、そこまで深くは知らない……と
烏野を全国にと思う反面やはり徹くんも応援したくなるこの矛盾
こんな自分が嫌になる
徹くんには烏野が一番などと言っておきながら、いざとなったら徹くんも…と欲張る
時々烏野にした事が本当によかったか…なんて考えたりする、この脳みそを誰か変えて欲しい
なんとか今は烏野
烏野を第一で考えるしかないのだと言い聞かせておく
そう、今からはこの目の前の試合にどう勝つか、どう粘るかだけを考えるんだ
でないと徹くんの冗談なのか分からないあの約束を成立させて、もっと煩くなってしまっては意味がない
というか…
「結婚とか普通ありえないでしょ、彼氏ならまだしも…」
「ん?何か言った?」
「あっいえ、なんでもないですよ!」
ボソりと呟いた言葉を、前にいた孝支先輩に聞かれてしまったらしく、振り向かれて問いかけられた
その顔が可愛くて心臓が持ちそうにない
なんとか笑って誤魔化した
まあ、どこか納得いってない顔をしながら前を向いた孝支先輩に言うことでもない
どうにかあの約束を破棄していただきたい
徹くんへの想いはお兄ちゃんとしかならないのだし
願いを込めながらトスを上げている徹くんを眺めた
「ナイスレシーブ!」
「…!青城のチャンスボール…」
「……セッターってよ」
「?」
「オーケストラの"指揮者"みてえだと思うんだよ。同じ曲同じ楽団"指揮者"が代われば、"音"が変わる」
チャンスボールを徹くんがトスを上げ、岩ちゃんが難なく相手のコートにボールを叩きつけた
相も変わらず息ピッタリだなぁ
「…なんつーか、すげー滑らかな連係だな…」
「…及川さんと岩泉さんーあの4番のレフトの人…あの二人は、小学校のクラブチームから一緒だったはずですよね?柚葵さん?」
ここで話をふってくるか…飛雄ちゃんよ
「うん、なんだかんだプライベートでも一緒でしたし」
あの頃の岩ちゃんは本当に男の子の中の男の子だったなぁ
今はいい意味での男の中の男だけど
「…まあ、阿吽の呼吸ってやつです、徹くんと岩ちゃんは」
「よく他校からもそう言われてました」
「でも、岩ちゃんだけでなく徹くんは一人一人の能力を熟知して、青城のチームを動かしているんです」
「100%のチームの力を引き出せるって感じか?」
「そうです」
「…………」
押せ押せ押せ!いいぞいいぞ青城!!
皆が私の言葉を烏養くんの言葉を聞いて黙ってしまったので、青城の応援がよく聞こえてしまってる
どうか弱気になりませんように、と心の中でドキドキしながら祈った
「大王様かっけえ!!早く試合したい!!」
ら、やけに元気な明るい声が聞こえてきた
「おう!サーブ俺狙ってくんねぇかなぁ!?とりてえ!!」
「ノヤさんもかっけえ!」
夕も翔ちゃんも手すりに危ない格好で、大きな声で騒ぐからこっちがヒヤヒヤする
けど、どうやらメンタル面の心配はしなくてよさそうでホッとした
「…………」
「頼もしいな…」
「あっオイ見ろ翔陽!テレビだぞ!!」
「えっっ!!テレビ!!?」
ローカル番組で使われるだろうテレビカメラを見てはしゃぐ翔ちゃんと夕を見て子供だなぁとかわいく思った
「コラ〜そこの中…小学生かな?少し静かにね」
『!!!しょっ…スミマセン』
わ、笑っちゃいけないことだと思っても笑ってしまう……!
試合に集中したいのにこれは不意打ちすぎる
中学生に間違えられた方がまだ良かったのにいい直されてるっ!
そんなことがあって、直後に笛の音が鳴り響いた
青城の圧勝で幕を閉じた試合
皆の顔に焦りはなく、私達は引き上げた
けど、一人だけ少し違った顔をしていた
最後に徹くんの姿を目に収めながら何を考えているのか


「…さて、そろそろ皆を起こさないと…」
「!」
どうやら思い耽っている間に学校へ着いてしまったようだ
潔子さんと手分けをして皆を起こす
……どういった訳か私に孝支先輩のいる列の方を頼んできた潔子さんに、今はすごく訴えたい気持になる
そりゃー少ないんですけどね!起こす人は!!
こっち側の人ほとんど起きてたし!
「孝支先輩、」
「……」
「孝支先っ輩!」
「んっ」
「…………」
かわいすぎか
孝支先輩が意外と寝起きが悪い
なかなか起きないって言うのは大地さんから聞いたことあるけど、確かに起きない
けど、天使
罪深き天使の寝顔である
このまま見ていたいほどに…でも駄目だ、起こさねば
「こ、孝支先輩っ」
「……」
「起きてくださいー!」
「んー」
「孝支先輩!」
「ん」
「孝支先輩……」
起 き な い
夕達は起きたというのになぜ孝支先輩が起きないのだ?
私の起こし方が悪いのか
潔子さんを呼ぼうか…
いや、でもこの仕事を任されたからには最後まで…
「孝支先輩!」
「んー?………柚葵?」
「!?」
起きてくれたのはいいけど、かすれたような声で名前を呼ばれてしまった
え、なにこの破壊力……
抜群過ぎて息ができない
「柚葵?……反応しないなら寝ちゃお」
「まっ!待ってください孝支先輩!寝ないで!!着きました!!学校着きました!!お願いですから起きてください!」
「えー…じゃあ、」
「?」
「柚葵が俺を孝支って呼んでくれたら起きる」
ん?
「ひえっ!?」
えええ!!?
孝支先輩を先輩抜きで呼べと!?
「無理です無理です!!」
恥ずかしい!そして呼べない!!私の心臓が持ちません!!
「だって大地や旭や清水にはさん付けなのに、俺だけ先輩呼びだべ?」
「うっ!そ、それは」
「俺のこと嫌いなの?」
「きっ!嫌いなわけないじゃないですか!!」
むしろ大好きです!!
そう言えたらどれだけいいか……
すると突然孝支先輩が笑い始めた
……私の顔に何かついてたり!?
「何してんの?」
「……へ?」
顔をぺたぺた触っていると、きょとんとした顔で見られた
「いえ、孝支先輩が急に笑われたので私の顔に何かついてるのかと」
「ぷふっ!大丈夫!ただ柚葵が必死だったのがおかしくて笑っただけだべ」
「!」
孝支先輩の意地悪!
「こ、孝支先輩ひどい…」
「柚葵がひどい」
「うっ」
「ね、孝支って呼んでみ?」
何だこの状態
何してたんだっけ?ん?何してるんだろう?
ただ、バスには私と孝支先輩しかいなくて
二人だけの空間が出来上がってるのだけど、この空気……なにかいつもと違う気がする
「こっ」
「こ?」
「こ、………こ…う」
「……」
「……こうし、さん」
「!」

「柚葵?まだ菅原起きない?」
「!」
「っ!?」
ガンッ!!
痛い、額を座席にぶつけてしまった
そして我を思い出したけどなんだったんださっきの…
孝支先輩に名前で呼んだ瞬間なにか孝支先輩の雰囲気が変わったというかなんというか
すごく心地よい空間だった
けど、今となっては恥ずかしい!!
「お、おお、起きました!!孝支先輩起きました!!私先に体育館行ってます!!!」
ドンガンッと音を立てながら入口にいる潔子さんの横をすり抜けて全速力で走る
あんなのもう私の心臓がもたない!!


「……………菅原、柚葵に何したの」
「そんな怖い顔しなくても名前で呼んでっていっただけなんだけど」
「……顔赤いの隠したら」
「…………そうするべ」


「お?柚葵どうした顔赤いぞ」
「………烏養くんには分からないよ」
「あ"!?」
「まあまあ烏養君」
「ほら、そろそろみんな戻ってきたよ」
「お前、後で覚えとけよ」
「記憶力ないから無理」
烏養くんに早くいい人が見つかることを望むよ
そして、皆が体育館に集まった
勿論孝支先輩もいるわけだけど、何分顔を合わせづらい
「今日の伊達高戦はな、言わば"ビールの一口目"だ!!」
「は?」
烏養くんは私たちが未成年ということをご存知でいらっしゃるのでしょうか?
皆ポカーンだぞ
「ビールの一口目の美味さは最初だけの特別の美味さだ!」
「烏養君、未成年にも分かるようにお願いします」
さすが武ちゃんである
烏養くんの説明だと分かるような分からないような共感出来そうでできないもんなぁ
ビールというアルコールが邪魔をして
「"変人速攻"が初お披露目だったからこそ、相手の意表をつくことができたワケだが…でも、青城とは一度戦ってるから、ある程度手の内を知られてる。ただ、それでもお前達の攻撃力が高いのは確かだ。まずは及川のあのサーブを凌ぐことだな。あのサーブで流れを持って行かれるのが一番嫌で、かつ、有り得るパターンだ。けど、こっちには柚葵という恐ろしい優秀なサポーターがいる。柚葵との練習で積み上げてきた成果と実力をまとめてフォーメーションを考え直した、柚葵」
「はい、ボードをみていただけたら分かるように、今のサーブは基本"セッター以外のみんなでとる"フォーメーションになってます。けど、徹くんは私とは違い、取れない人を狙えるだけの実力の持ち主……だから今回は私のサーブを取れなかったMBの翔ちゃんとツッキーはサーブレシーブに参加しないで攻撃のみに専念してもらいます」
『ハイ……』
ありゃ、不服そうだなぁ2人
「おい凹むなよ?"分業"だ分業。じゃあ、コート入れ」
『オス!』
「あ、あとな、お前ら青葉城西見て"あ、やべえ強え"って思ったろ」
『……………』
あ、図星だ
「でもよ、例えば伊達工の試合をもし同じように観客席で見てたら、"なんだよあのブロック、まじ恐い、勝てない"って怯むだろ。でも戦えた、勝った。明日もそうだ」
『っしゃああ!!』
「よし、じゃあ軽くフォーメーションの確認するぞ」
「オース」
「柚葵、タオル用意してきてくれる?」
「あ、はい分かりました」
烏養くんにお客さんが来て、烏養くんに渡していたもの気になったけど、あれ多分青城戦のデータだ
すごく気になる!
けど、辞めておこう
私は徹くんみたいに万全に観戦できないから明日絶対もたないや
いまは、このチームに出来ることを精一杯しよう、そうしよう
「柚葵」
「ん?龍どうしたの」
「今日スガさんたち3人で帰るらしいから俺たちが送る」
「そんな、大丈夫なのに」
「女の子がそんな無用心じゃだめだろ」
「…力お母さんみたい」
「……今日の夕飯は抜きですからね」
「わーん!お母さんごめんなさい!」
「茶番やめろ」
力がのってきたせいで怒られた
けど、久々にこのメンバーな気がする
初心に戻ったようだ
目の前には3年生が歩いてる
この背中をどこまで見続けれるのであろうか
「…スガ、旭」
「!」
大地さんが言葉を発した瞬間、わたし達の空気がピリッと変わった
「明日も生き残るぞ」
『ーおお』

「行くぜ3年生と…全国」
『おお』
「うん」
いよいよはじまる決戦の時

馬鹿なやり取りを久々に2年組でしながら帰宅した
騒ぐのも久々だったけど、明日の試合のプレッシャーというものも感じてかすこし元気がなかった
皆思いは同じ
3年生と少しでも長く長くこの時間を過ごすために、明日の試合に勝つんだ


ー翌 IH予選 2日目
第3回戦 烏野高校vs青葉城西高校 開戦


「宜しくお願いします」
「お願いしま〜す」
大地さんと徹くんが握手を交わす
…大地さんは真面目なのに徹くんおちゃらけてる
そういう性格だから仕方ないんだろうけどしっかりして欲しい……挨拶くらい
「おいかわくんがんばってーっ」
恒例の徹くんコールも響いてることだしさ、びしっと決めたら彼女出来るんだろうになぁ
「負けてたまるか行ぐぜぇぇ!!」
「シャ〜〜〜ッ」
その言葉と意気込みは響いたけど、青城コールと徹くんコールがコートを飲み込む
「声出せ声出せ!このコート青葉城西しか居ないみたいだぞー!!」
「ォアース!!」
孝支先輩の一言で皆が動く
そして、ウチが先にWU開始する
「烏野ォーファイ!!」
「オオッ」
「ファイ!」
「ダァーーイ!!」
「ファイ!」
「ソォオイ!!」
「ファイ!」
「ア"ーイ!!」
うーん………なんていうか
「変に意気込んでる気がするんだけど…」
そして不安はぬぐえないまま、今度は青城の番
「……………及川君は選手をよく見てるんだねぇ…」
「?」
「技術的なことはよくわからないけど、チームが良い雰囲気なんだなっていうのは何かわかるよ」
「…………そうですか?」
潔子さんが武ちゃんを疑うのも無理はない
証拠に、目の前には岩ちゃんにボールを投げられそうな徹くんがいた
金田一が止めてるの見えるけど、潔子さんがそう思うのも仕方がないと思う
でも、武ちゃんはよく見てるな……やっぱり人の心理がわかる能力があるってこと?
ピーーッ
「整列ー!!」
「お願いしあース!」
「やあトビオちゃん」
「!」

「ん?」
整列し終えてこっちへ帰ってくる選手を迎えながら、ふとコートへと視線を向けた
そこには徹くんと飛雄がなにやら真剣な話をしそうな雰囲気で……
でも
「なんか……嫌な予感……?」
「柚葵?」

「今日は"天才セッター"を倒すの楽しみにしてきたから、がんばって食らいついてね」
「俺たちが「負けません!!」」
「……………」
「カブって来んじゃねーよ、日向コノヤローッ」
「まあ、2人で俺を楽しませてね〜じゃないと……」
『?』
「柚葵が俺の嫁になるから」
「っは!?」
「へっ!?」
「簡単に俺達に負けると君たちのマネージャーは俺の物になる。それだけ柚葵はお前たちに期待して了承してきた。これがどういう意味か分かる?今までのあいつならその提案に怒ってたはずなのに……勝負に私的感情持ち込むな!ってね。なのに、いいよって見たこともない顔でいったんだ。だから、柚葵に何を言っても無駄だよ」
『!!』

「…あれ?」
「ん?」
「孝支先輩……あの2人すごくこっち見てません?」
「あ、本当だ。………すっごく変な顔してるべ」

「……だったら今回も尚更」
『負けないっス!!』

「あ」
なんだか嫌な予感が当たった気がする
あの2人……物凄い勢いでこっちに向かってくる
いや、あの、なんか
「こわいっ!!」
「柚葵、こっち」
「潔子さん…!」
すごい形相でこっちに走ってくる飛雄が怖くて怯えてしまったのだけど、潔子さんが私を隠してくれた……というより庇ってくれた
「柚葵さん!」
「あのっ!!」
「お前ら試合前になに慌ててんだ、ミーティングが先だ」
「えっ!いや、でも!!」
「……ウィッス」
「影山!!」
「ミーティング終わってから聞いたらいいだろ、いまは試合に集中しろ」
「〜〜」
この話の流れで分かってしまった
徹くん言いやがったな
あのプラプラさせてる手をへし折ってやりたい
試合前に言うとか本当
「性格悪い……」
とりあえずドリンクの準備をしておこう
ミーティングの輪から抜け出し、一人一人のボトルをセットする
潔子さんは烏養くんの横で話を聞いているから、私一人で準備することにはなるけど、このくらい楽勝
青葉城西の様子もよく見れる
……相変わらず徹くんはブレないなぁ
そして、一気に向こうの空気が…変わった

「柚葵さん」
「っ!」
なんてタイミング
私が一人になったのを狙ったのか……
「………」
「飛雄……」
「試合前に及川さんにしてやられました」
「………」
「"俺の物になる"って言われたんすけど、賭けたんですか?」
「………」
「俺達と何を」
「……私」
「なぜです?」
「……それくらいのペナルティーがないと私が烏野としていられなくなると思った。まだその時は心の中に徹くんと岩ちゃんがいたの。2人の事を応援できないことに引っかかってた」
「……」
「だから、徹くんを利用して前へ進もうと思った。だけど今は心から烏野を応援してる。まあ、今更になってなんであんな約束しちゃったんだろうって思ったんだけどね」
「……柚葵さんが烏野を想ってくれてるっていうのは分かりました」
「……」
「大丈夫です、勝ちます」
「………」
「勝ってみせます」
「…ふふ、どこからそんな自信が 」
「柚葵さんや皆が応援してくれてるんで」
「!」
「今までの練習だって柚葵さんの協力あってこそのものもあります。俺は、俺たちは本気を出して……勝ちます」
「飛雄……」
「…そろそろ始まるのでちゃんと見といてください」
「…焦っちゃダメだよ?」
「……ハイ」
頼もしい後輩がいてくれる
ちゃんと私がしてきたことを分かってくれる
それだけで十分
「勝てるよ」
そして、私も気持ちで戦う

「月島ナイッサ」
運命の試合はツッキーのサーブにより始まった
サーブは安定したレシーブにより返され、ボールは徹くんの元へと綺麗に返った
徹くんのセットアップ……誰を使う
岩ちゃん?それとも……
「!!」
徹くん自ら?
「っ!!!」
スパイクが決まり青城に点が入った
それはスパイカーによるものではない
『!!!』
「い、いきなりツーアタックだー!!」
「くっそ…」
「これはまた堂々としたツーアタックで…」
トスを上げるように見せかけてスパイクを放った徹くん
初っ端から出してくる辺り、すごくこの試合を楽しみにしてたんだ…
倒したい相手がいるこの試合を
「ホラホラ次も同じのやるからね」
「!」
「ボケッとしないでちゃんと警戒してね」
煽ることも忘れてない事も流石だわ
四バカがその挑発に乗っているとこも流石だわ
でも……うん、大地さんは冷静だ、よかった
「松川ナイッサー」
「オーライ」
「大地さんナイスレシーブ!」
「Bィーーッ」
「おれに来ォーい!!」
龍と翔ちゃんが同時に飛び出す
きっと最初の攻撃飛雄は
「来た超速攻ー!!」
翔ちゃんを選んだ
ブロックはついて来なかったけど、レシーバーの正面に打ってしまったため拾われてしまった
そのボールは徹くんの頭上へと上がったのだけど
「んんっ!?おい、青城のセッターまたツーで打つ気か!?」
『!』
「さっきよりあからさまだ!」
違う
徹くんはそんなに簡単な人じゃない
スパイクを打つのに見せかけて
「ナメんなっ!!!」
しなやかに徹くんの動きが変わった
『!!』
「スパイク動作からの……セット」
そのトスを上げた先には岩ちゃん
流石阿吽の呼吸というべきか、きっちりと決めてしまう岩ちゃん
ここまでされて龍達が焦ってないか不安
「コラコラコラ"及川スゲー"は最初から分かってた事だろ。それに、セッターの腕も攻撃のハデさもこっちだって負けない!」
『アス!!』
大地さん、本当になんというか……
「………なんだよ」
じっと見ていたら気づいた烏養くんがこちらに顔を向けてくる
「烏養くん、大地さんを超えることは無理そうだね」
「あ"っ!?」
なんていうか、偉大
「松川も一本ナイッサ」
「西谷!」
「ハイ」
「ナイスレシーブ!!」
「持って来ォォイ!!」
飛雄の元に夕がボールを上げる
同時に翔ちゃんと龍が飛び出し、ブロックはそちらに集中してる
「と、見せかけて」
後ろに旭さんが構えている
前の二人は囮本命はパイプの
「……へ?」
いつの間にかボールは青城側のコートに落ちていた
思わず私も声を出しながら固まったけど…
「ツーでやり返したーッ」
負けず嫌いなのは知ってるけど…
これは波乱の予感
「もっとやれー」
「孝支先輩!?」
こっちも(孝支先輩も)か!!
「次も同じのやるんで」
あぁ、これはもう……
「ちゃんと警戒して下さいね」
「……このクソガキ」

頭がイタイ





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