Agapanthus




ちょっと待って……今、頭の中で整理できてない
今まで練習試合で青城としたことなんてなかった
この一年だけだけど
それか、私が高熱で休んでた時にしたのかもしれないかも……?
まあ、試合で見かけることはちょくちょくあった
だめだ
考える度に分からなくなってきた

「柚葵?」
「おーーい柚葵」
「聞いてないな」
「人の話無視するなんて柚葵らしくないっスね」
いやいや、もし烏野でやってることがバレたら今までの苦労が水の泡…
いや、確かにいつかはバレるかもって覚悟でマネし始めたけども、ここまで隠し通せてきたら最後まで隠し通したままで、最後の試合で実は!ってな感じで今までのうら………コホン
今まで振り回された分仕返ししてやろうと思ったのに!
ここでバレたら殺される!
まだ生きていたい!
「ただ…条件があってね…」
「条件?」
「"影山君をセッターとしてフルで出すこと"」
「!」
な、なんだと…?
飛雄が烏野にいることなんて普通分からない
ってことは……………!
徹くんの仕業じゃないか!!
あのときのあの言葉はこれか
「い…良いじゃないか、こんなチャンスそう無いだろ」
「良いんスかスガさん!烏野の正セッタースガさんじゃないスか!」
「…………俺は…俺は日向と影山のあの攻撃が、4強相手にどのくらい通用するのか見てみたい」
「……孝支先輩」
そうだ、飛雄がフルと言うことは孝支先輩は試合に出られない
飛雄のことを徹くんに伝えてしまったことを今更後悔しても遅い
徹くんは飛雄をどんな試合でも潰したいのだから
「先生、詳細お願いします」
「!」
行きたくないけど……孝支先輩が辛いのにその傍に居れないのは私が辛い
「えーと…日程は急なんだけど、来週の火曜日。土日はもう他の練習試合で埋まってるんだって。短い時間だから1試合だけ、学校のバス借りていきます。時間はー…」

ーー…

「飛雄!!」
「うおっ!」
帰り道、坂ノ下商店の前にいた飛雄に飛びついた
なんか皆にすごく見られているけど仕方ない
これは私の命にかかわる問題だ
「ごめん飛雄!」
「?」
「あの人が…!」
「……!場所変えますか」
飛雄は最初なんのことを言ってるんだ?って顔してたけど、私の必死さとあの人と言う言葉で分かったみたいだ

「………………」
「……気になるなら聞けばいいんじゃないか、スガ」
「!」
「分かりやすいぞ、お前」
「……顔に出てた?」
「ああ、でもバレてはないぞ?うちの奴ら鈍いやつ多いからな」
「……………(大地も人の事言えないけどなー)」
大地と孝支先輩がそんな会話をしていたのを私は知らない

ーー……

「飛雄のこと私が言っちゃったからこんなことに………」
「別に柚葵さんのせいじゃないです」
「でも…」
「今回は自動的にスタメンっスけど、次は実力で取るんで。菅原さんにもそう伝えました」
「!」
「………ところで柚葵さんはあの人の事どうするつもりですか?」
少し皆から離れたところで作戦会議
「正直、命の保障がないと思う」
「命って」
「あの殺人サーブ食らいそうな気がするの」
「いくら及川さんでもそんなこと……」
「ある!だから飛雄ちゃん!レシーブで守って」
「俺も試合じゃない、あの人のサーブ食らいたくないっス」
「飛雄ちゃんー!」
「……ただ、俺ができることならするようにしますから」
「ほんと!?」
飛雄を味方につけると余計に徹くんの機嫌を損ねることに気付かず、私は喜んだのだった


「柚葵と影山、戻ってきたならちょっといい?」
「?はい」
「オス」
「今度の練習試合の日向のポジションをどうしようかと思ってさ」
「騒ぐなよ!」
坂ノ下商店の中に大地さんと孝支先輩、飛雄と私はテーブルがある椅子にそれぞれ座った
そんな中、店番をしている烏養くんが騒がないように警告してきた
なぜ烏養くんと呼ぶほどの仲なのかというと、小さい頃この店に来た時や親が手が離せないときなどで遊んでもらったので仲がいいのだ
徹くん達とはまた違う遊び相手だった
「あ!烏養くん!あとで牛乳ちょうだい」
「おう」
「で、影山どう思う?」
「……俺はー」

ーー…

「ふぃー…」
あれから翔ちゃんのポジションのことで話し合って、取り敢えずのことは決めた
ぶっちゃけ火曜日休みたい
〜〜♪
と思った瞬間なる携帯が憎たらしい
この着信音徹くんだし
「もしも」
「柚葵!聞いて聞いて!」
「………」
「火曜日飛雄ちゃんと戦うことになったよ!!」
「……オメデトウ」
「楽しみすぎて!」
「?」
「足捻挫しちゃったよ〜飛雄ちゃんと戦えるかわかんなくなっちった〜」
「…………は?」
まって、この人なんて言った??
この時期になんて言った!?
「何してるの!?時期わかってる!?この大事な時になんで捻挫なんてしちゃうの!?岩ちゃんいるから安心してたけど、オーバーワークし過ぎたんじゃ!?」
「今日はよく喋るねー柚葵」
「茶化さないで!!」
「だいじょーぶだいじょーぶ!すぐ治るから!」
「そんな問題じゃなくて!」
「IHまでには治すし、もう岩ちゃんには殴られたし、部活に治るまで来んなっていわれたから」
「………」
「心配なら青城マネになる?」
「ばか!!私もうから…………!!」
「?」
あっっぶな!
火曜日徹くん来ないなら言う必要もバレる心配もないじゃん!!言いそうになった、セーフ……
「…安静にして早く治してね」
できれば火曜日以降に
「柚葵…!」
「じゃ、明日も朝練あるからバイバイ」
「うん!また電話するからね!」
そこで電話を切った
なんか最後徹くんすごく元気だったなぁ
捻挫はびっくりしたし心配したけど、いつも無茶する徹くんが休息するにはそれくらいしないとしないもんなぁ………
取り敢えず火曜日岩ちゃん殴って口止めしておこう


ーー…翌日
「で、練習試合のポジションだけどーー…これで行こうと思う」
コートでみんなで輪になって、大地さんに言われたボードを取り出し見せた
『!?』
瞬間、みんなそれぞれ思ったことがあったのか、ざわついた
そこに表されていたメンバーは
大地さん、龍、力、飛雄、翔ちゃん、ツッキー
という面々
「影山と日向はセットで使いたいし…」
『(セット…)』
「月島は烏野では数少ない長身選手だ。青城相手にどのくらい戦えるのか見たい」
「はぁ〜い」
「ていうか、でかさが重要なポジションに日向スか!?」
「MBって…ノッポヤロー月島と同じポジション!?」
驚くのも無理はないけど、これが一番翔ちゃんにはしっくりとくる
「あっちょっちょっとポジションおさらいしていい!?」
武ちゃんがポジションのおさらいしてる
セッター、ウイングスパイカー、ミドルブロッカー
今のところリベロがいない
「こんな感じでOK?」
「他に守備専門とかもあるんですが、今回はそれでOKです」
「良いか、日向」
そんな中、飛雄が翔ちゃんの目の前に立った

「お前は 最強の"囮"だ!!!」
「!おおお!?最強の囮!!おおお!?ぉぉぉ……なんかパッとしねえぇ…」
「速攻でガンガン点稼いで、敵ブロックの注意をお前に向けさせる!そうすれば他のスパイカーが活きてくる!」
「あ!」
そう、速攻で点を稼ぐ翔ちゃんはブロックの囮になる
ブロックが出来なくたって、いまは最強の速攻があるから囮で活躍できる
「月島みたいなデカい奴が何人も、お前の動きにアホみたいに引っ掛かったら……気持ちイイだろ!」
「!!うおおおっいい!ソレいい!!」
「オイ!アホってツッキーの事じゃ無いだろうな!」
「黙れよ山口…」
「ゴメンツッキー!」
「…………逆に……お前が機能しなきゃほかの攻撃も総崩れになると思え」
「!!?」
「ちょっと!あんまプレッシャーかけんなよ!」
「?」
「総崩れ…そうくずれ…SO UKUZURE…」
「ホラ見なさい!」
「???」
飛雄は何を言ってるのか理解してないようだ
バレーの時は頭働くのになぁ…
「でも、肝心のブロックはどうすんだよ!?」
「確かに、翔ちゃんはジャンプのMAXに到達する時間が遅いからブロックの完成度がどうしても遅れる……」
「ハイ、だから日向がブロックで重点を置くのは相手の攻撃をたたき落とすよりも……触ること」
「!シャットアウトするんじゃなくワンタッチ狙い!」
「そう、柚葵さんの言う通り、日向のバカみたいな反射速度活かして敵の攻撃にとにかく触って勢いを弱め、確実に拾ってカウンターをしかける」
「そんないきなりうまいこといくか!」
「いかないだろうな!」
「?」
「少なくとも最初は。うまくいくか確証はないし、相手チームには馬鹿にされたりするかもなあ。でも、やってみれば何かしらわかることがあるよ!"練習"試合なんだしさ!」
「………………オス」
「…なにより空中戦で日向の高さに敵う奴、うちのチームじゃ月島と影山くらいだ。だから日向、自信持って行ー……」
「ハイ!おれ!がんばります!!高校で初めて6人でやる試合だしっ!いっぱい点とって!囮もやって!」
「!?」
「サーブも!ブロックも!クイックも!」
「ちょちょちょ落ち着け!」
「全部っ……」
ぼんっ!!
翔ちゃんが爆発した
「うわぁ!?」
「翔ちゃん!?」
「ショートした!!日向がショートしたーっ」

ーー…

そんなこともあり、翔ちゃんのテンパり具合は凄まじかった
あとで龍に聞いた話、ジャージは別々で着るし、龍のジャージを間違えて履いたりと散々なようだった。
特に龍はテニス部の子にパンツを見せてしまい、変態として噂が広がってしまった………どんまい

そしてーー…火曜放課後
「整列ーっ!!挨拶!!」
『お願いしァース!!』
「あ〜い」
武ちゃんが運転するバスで青城まで向かう
ちなみに横は飛雄
潔子さんの隣が良かったんだけど、眠たそうにしてたのでやめておいた
飛雄と話すこともあったし
「飛雄」
「はい?」
「今日徹くん居ないかも!」
「えっ!?」
凄く目を見開いて私を見てくる飛雄は、信じられないという表情で見てきた
「捻挫したらしいから今は安静中なんだって!だから私ビビることない!」
「そうなんですか…………あれ?でも、岩泉さん達がいるとなるとバレるんじゃ」
「ん?そこはなんとかするー」
「………………」
私が握り締めた手を見て飛雄は悟ったらしい
「おぇーーーーーーっぷ!!」
「!?」
「!!うわあああ!!止めて!!バス止めてえええ!!」
そんな中、後方の龍と翔ちゃんが盛大に聞こえ、龍のズボンのあそこが非常に残念なことになっていた
まさか……予想以上にもしかしてヤバそう…………?


私立 青葉城西高校にとうとう到着
「すみません田中さんすみません」
「いいっつってんだろうが!そんな事よりおめーは大丈夫なのかよ!?」
龍はペコペコと謝り続ける翔ちゃんを、ズボンを片付けつつ心配してる
「ハイ……途中休んだし……バス降りたら平気です」
「そうか!ならいい!今日の試合はお前の働きにかかってるかんな!?3対3みたく俺にフリーで打たしてくれよな!?」
「はっひい!」
「田中!プレッシャー!駄目!!」
「?」
「がっがんばがんばりト…トイレいってきますっ…………」
「上の次は下か!忙しい奴だな!」
「!日向…また…!情けねえな!!一発気合入れてー」
「何言ってんの影山!?バカじゃないの!?」
なんか、すごく孝支先輩がお母さんだ
「そういうのが効くタイプとそうじゃないのが居るでしょ!?」
「やってみないとわかりませんよ!」
「田中!この単細胞押えろ!」
「オス!」
コント見てるようだわ…
「潔子さん、手伝います」
「じゃあ、柚葵は…」

「あれ?待ってください…そう言えば龍達居なくないですか?」
「!あいつら!」
いち早く大地さんが駆け出し、それにわたし達も続いた
「失礼しましたっ」
「あっイエ…」
「ホラ、ウロウロすんなっ田中その顔ヤメロ!!」
ついた時には何故か大地さんが謝っていた
なにしたんだ、龍
「………………久しぶりじゃねーの王様」
「!」
あ、この子北一の………
「烏野でどんな独裁政権敷いてんのか楽しみにしてるわ」
「…………………」
嫌味だ
龍が殴りかかろうとしているのを大地さんが押さえる
さあ、飛雄……どう返す?
「……………ああ」
……大人になったなぁ、飛雄
孝支先輩と龍に叩かれて不思議そうな顔してるけど

ーー…

「挨拶!!!」
『お願いしあーす!!!』
いやいや、来てしまったこの地に
青葉城西の第3体育館…
うん、徹くんや岩ちゃんはここで練習とかしてるのか
広いよ
「よし!もう少しサーブ……」
あ、岩ちゃんこっち見た
「っ柚葵!!?」
「…………大地さんすみません、副主将に挨拶行ってきます」
「え、柚葵分かるのか?」
「あ、はい……知り合いが…ちょっと」
「なんか、ものすごくあっちから柚葵に視線が集まってるけど…」
「あ、多分信じられないからじゃないですかね?」
『????』
飛雄以外みんな、?マークいっぱいだったけど、説明は後にしよう

「いーわーちゃーん!!」
「おまっ!ど、はぁ!!!?」
「おお!岩ちゃんが動揺してる!」
「いや、するだろ!!!」
「岩ちゃん」
「?」
ドスッと岩ちゃんにパンチをお見舞いしてやった
「っ!いってっ!!!」
「ふふふ、岩ちゃんがいながら徹くんが何故捻挫なんてしちゃったのかなー?パンチの威力衰えたんじゃないの?」
「柚葵、おまえ怖い」
「え?何か言ったか?」
「……すまなかった」
「……まあ、徹くんに彼女できるまで岩ちゃんに管理してもらわないとねー」
「…お前、それ及川には言ってやるなよ」
「え?」
なんだか、微妙な顔されるんだけど…?
心外だな………
「まあ、いいや……今日はうちがお世話になります」
「!そうだ、柚葵」
「言いたいことわかってる。バレー部のマネージャーしてる」
「!」
「勿論、徹くんはこのこと知らない」
「はぁああぁぁああああ!!!?」
『!!!?』
岩ちゃんが大きな声出したから烏野の皆が一斉にこっちを見てきたのが分かった
……岩ちゃん、大地さんが出動しそうになってるから本当にやめていただきたい
「岩ちゃん声抑えて!……今まで振り回されてきたから仕返ししてやろうと思ってね」
「……いつの間にそんな性格及川に似たんだ」
「従兄妹ですもーーん」
「そういう時だけ従兄妹になるんだな」
「…………」
「でも今まで公式戦とか居なかったろ?いつから入ったんだ?」
「1年前からちゃんとやってるよ!ただ、青城とかいる時は影でデータ収集させてもらってた!それにトレーナーだけど発見されるの怖くて裏でメンテしてた!」
「……………」
「今日徹くん来ないの知ってるから、くれぐれも徹くんには言わないようお願いね!」
「は?なんで?」
「IHで驚かせた方が面白いし、態々サーブ喰らうことない」
「殺人サーブじゃなくて別の意味で死にそうだけどな」
「ん?何か言った?」
「いや、っつか及川なら今日病院だけど、もしかしたら終りぐらいに見に来るか参加するかもな」
「!」
「そんときは終わりだな」

ジ・エンド
「……まあ、お前にもいろいろ事情があったんだろうし、俺は別に敵マネだとしても柚葵は柚葵だかんな。俺は受け入れた」
「岩ちゃん…!!」
「だけど問題は及川だな」
「その件なんだけど…」
「大丈夫だ、俺がグズ川から守ってやる」
「岩ちゃん…!かっこいい!!ありがとう!!だけど、グズ川傷つく」
「……すまん、癖だ許せ」
それから周りにいた松川先輩や花巻先輩達に挨拶をして、烏野のベンチへ帰った
もちろん口止めをしておくのは忘れずに

「ただ今戻りました」
「なんかあっちで騒いでたようだけど……大丈夫?」
孝支先輩が凄く心配してくれてる
「あ、はい。私がバレー部のマネージャーしてるのがびっくりだったようです」
「え?柚葵って元々北一のバレー部マネージャーじゃ………」
「え?言ってませんでしたっけ?私中学はテニスプレイヤーですよ?」
『…………ええええ!!?』
今度は青城から痛い視線を浴びた
あれ、言ってなかったっけな?
「き、きいてないべ」
「ありゃ……」
最初に言ったかと思ったけど言ってなかったようだ
証拠に潔子さんが横に首降ってるし
「ま、まあ、この話は後にしましょう」
「柚葵さんどれだけここでいろいろ発掘されてるんですか」
「うるさい飛雄」
確かにいろいろと大失敗だ
色んな面倒くさいことになってしまってる
「と、とりあえず試合に集中しましょう!!」
「そ、そうだな日向!緊張しなくて大丈夫だからリラックス!」
「ハイッ!リラックスがんばりますっ!!」
リラックスってがんばるもんだっけ?
リラックスってなんだっけ?
私も頭がパンクしてるわ
「なあ!マネから1年に気の利いた一言ない!?」
「…………………」
大地さんに言われて潔子さんが動いた
なんて言うんだろう……
「……ねェ、ちょっと」
「?」
「期待してる」
潔子さんは翔ちゃんの肩に手を置いた
潔子さん……………それ、逆効果ですよ
潔子さんはトドメを刺してしまった
パンクしている翔ちゃんをどうする事も出来ず、試合は始まってしまった

それからというもの、翔ちゃんの大失敗が始まった
取らなくていいレシーブをとったり躓いたりと失点に失点を重ねた
「てめええ!!いい加減その緊張やめろォォ」
「!?好きで緊張してんじゃないだろバカか!」
「まっ待ってくれっまだチャンスをくれえっ」
「ハァ!?」
ついに飛雄の怒りゲージMAXである
いつブチギレしてもおかしくないな、これは
「よし!確実に1点ずつ返してこう!次のサーブはーーあ゛っ」
よりによって
このタイミングで
翔ちゃんのサーブ!?

そして、試合が待ってくれる事もなく
ピーーッというホイッスルがなり
「ひっ!!」
「!まずい!まともなサーブトスできてない!」
その音に驚いて上げたサーブトス
テニスでもサーブトスを失敗すると

バチーーン!といい音が体育館に響きわたる

ミスして人の頭に当たることがあるのだ
そして、今サーブトスをミスした翔ちゃんは盛大に飛雄の後頭部にボールをぶつけたのだった
第一セット終了
25-13

大失敗である


やばい
非常にヤバイ
何がヤバイかといえば飛雄が
飛雄ちゃんがキレる…!!
「ま、待て影山!気持ちはわかるが抑えるんだ!」
「ーー…まだ…何も言ってませんけど」
地につくような低さで話す飛雄は、あの大地さんでさえも黙らせていた
実際怖い
隣でみてた孝支先輩はそんな飛雄が暴れたときに押さえる準備体制を整えていた
さすが烏野の母である
『ーー…』
「…ぶォハーッ!!ぅオイ後頭部大丈夫か!!!」
「ナイス後頭部!!」
「!?煽るのもダメだっつーの!!」
「ヤメロお前らっ」
龍とツッキーのツボをおさえたらしく、あの2人は大爆笑だ
当のぶつけた本人は、仏像のように微笑んで固まっていた
そんな翔ちゃんに向かっていく飛雄
ちょ、ちょっとまずいかな……
「あっオイ影山っ」
「まままま待て、話せばわかるっっ」
そう言った瞬間、飛雄は翔ちゃんにありえない近さで近づき、立ち止まった
「…………………………………………………お前さ」
「ッ………………ハイ」
翔ちゃん……顔死んでる
「一体、何にビビってそんなに緊張してんの??相手がデカイこと…?初めての練習試合だから…?」
「…………………」
今度は汗が吹き出してる
そんな中飛雄は左手を頭に添えて叩き出した
それはそれは効果音がスパァン!!って感じの叩き方
「俺の後頭部にサーブをブチ込む以上に怖いことってーー…なに?」
「ーー…とくにおもいあたりません」
翔ちゃん、汗が一気に引いた
すごい体だこと
「じゃあ、もう緊張する理由は無いよなあ!もうやっちまったもんなあ!一番恐いこと!」
「………………それじゃあ……」
なにか翔ちゃん怯えてるようだけど大丈夫かな
飛雄はそんなにひどい子じゃないから大丈夫なはずだけど………
誰かに何かを言われた?
「とっとと通常運転に戻れバカヤローッ!!!!」
「…………………アレ?今のヘマはセーフ!?」
「は!?なんのハナシだ」
うん、金田一になにか言われたんだな
あの子飛雄と仲悪かったようだし
「おいコラ日向ァ!!」
「!」
今度は龍か!
あ、翔ちゃん正座してる、かわいい
「…オマエ」
「………ハイ」
「他の奴みたいに上手にやんなきゃとか思ってんのか、イッチョ前に」
「………ちゃ…ちゃんとやんないと……交替…させられるから…おれ…最後まで試合…出たいから………」
「…………オイ…ナメるなよ!!お前が下手糞なことなんかわかりきってることだろうが!」
「えっ」
ストレートすぎるよその言葉
「わかってて入れてんだろ大地さんは!」
「??」
「交替させられた時のことはなあ」
「!」
「あー…うー…交替させられた時に考えろ!!」
「えっ…」
「いいから余計な心配すんじゃねえ!頭の容量少ないくせに!!」
「た…助けなくて平気?」
武ちゃんが私と孝支先輩に言ってきたけどきっと大丈夫
「あ、ハイ多分大丈夫です」
やっぱり孝支先輩もそう思って武ちゃんにそう返した
「ネットの"こっちっ側"に居る全員!もれなく"味方"なんだよ!!」
「!」
「下手糞上等!!迷惑かけろ!!足を引っ張れ!!それを補ってやるための!!"チーム"であり"センパイ"だ!!!」
「!」
そうだ、団体戦競技の面白さはこれなんだ
昔は責任感がものすごく個人にくるものと思って苦手だった
けど、そうじゃないんだって気付かされたのは徹くん達の試合
面白いんだって思ったのも徹くんのおかげ
楽しいんだって気付かされたのは烏野高校に入ってだ
「…でも田中が居て助かった…ああいうことは、絶対裏表無さそうな奴が言うから、効果があるんだよな……」
「翔ちゃんの顔色戻りましましね」
うん、いつもの元気なワンコに戻った



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