Agapanthus




「…で?うまく逃げられたって訳だな」
「予想外の展開すぎて俺もついていけない」
「俺も旭にそう言われる事なんて想像もしてなかった」
「……最近扱いひどくない…?」
「エースちゃんとしろ」
「エースだから仕方ない」
「…エース関係ないよね…」
「助けて清水……」
昨日どうだったんだよ〜とニヤついた顔で聞いてきた大地に……清水もか…
すべての出来事を話すと冒頭の言葉
いや、たしかに俺もびっくりしすぎて逃げられたって事、言われないと気がつかなかった……
嫌われてる訳じゃないと思いたいけど………押して押して押していく作戦はダメってことか……?
「次だ、次」
「簡単に言えるの狡いよな」
「まあ、当事者じゃないからな」
「大地〜スガ〜練習始まるよ〜!」
ーー……

やってしまった
やってしまった……
昨日は回避できたけど、今日の帰ること考えてなかった……
バカだ私……
まあ、考えてても部活はいかないといけないから何とかするしかない
最悪徹くんを召喚……いや、そっちの方がめんどくさいな……
「あのー…」
「ん?」
自分の考えに呆れた笑いをしながら体育館に向かっていたら、かわいい女の子から声をかけられてしまった……
まずい、変人に思われたかったかな?
いや、この子の方が怪しい……さっきから体育館を覗いては戻って覗いては……を繰り返してるけど…?
誰かに用とかかな?
「バレー部の誰かに用がありました?呼んできましょうか?」
「あっいや!違うんですけど…あ、違うこともないか……えっえーっと、清水先輩はいらっしゃいますか…?」
「清水先輩?潔子さんに用があるの…?」
「あっもしかして、もう一人のマネージャーさんですか…?」
あ、やっぱりこの子龍と夕が話してた……
「新しくマネージャーで入ってきてくれた子かな?」
「っは!はひ!!」
はひ?
「私は、コーチとかトレーナーとかもろもろしてるから、なかなかマネージャー業できてないんだけど……一応2年のマネージャーの及川柚葵です」
「あっ!や、谷地仁花です!!1年です!」
「よろしく谷地さん」
「よ、よろしくおねがいシャス!」
シャス?
な、なんだか…………
かわいい子が入ってきたけど挙動不審だな…
怯えてる感じがもう、小動物みたいでめちゃめちゃかわいい、こうなでなでしたくなる!!
……まあ、でも、ちょっといろいろと引っかかるから素直になれない自分がまだまだいるけど
「谷地さん!!午後の英語の小テスト…さっき教えて貰ったトコ出て…1/3も点とれた!!」
「!!!」
『ワッショーイ!!』
お、おお、今日も翔ちゃんは元気だなぁ………

「お疲れさまでーす」
「あ、お疲れさまー」
「柚葵!!早速サーブ打ってくれよ!!」
初っぱなから捕まってしまった…
もうちょっと谷地さんと交流してみたかったなぁ…
「じゃあ、今日は練習見学だね。緊張しなくていいからね」
「シャチ!!!」
「(シャチ…?)あっでも流れ球には気をつけてね」
「ハイ!(流れ球…?まさか暗殺…?)」
「特に柚葵の球には注意してね」
「?及川さんのですか…?」
「及川…?……あ、及川って柚葵のことか…」
「?」
「そう、柚葵はマネージャーだけど、すごい武器もってて、県下一のサーブを持つ人に匹敵するぐらい強いの。烏野に無くてはならない存在でね。他の威力もうちの人達と互角に張り合うくらい」
「及川さんすごい……!だからマネージャー業できてないって言ってたんですね…!」
「前までは完全にマネージャーだったんだけどね。いろいろ吹っ切れてからは烏野のために働いてくれてる。だから、マネージャー業で負担かけたくないから私も頑張るの」
「(二人の絆の中に私なんかが入って大丈夫だろうか……)」
「仁花ちゃんにはいろいろと一緒に支えてもらえたらなって思うよ」
「!!が、がんばりますっ!!!」
「ブロック隙間空いてるよ!」
「ハイ!」
「声声声!!!」
「カバー!!」
「レフトォ!!」
「(こ、これはすごい迫力……)」
「ブロック2枚!!」
「!?谷地さん危ない!」
ボールが谷地さんの方へと勢いよく飛んでいってしまう…!このままだと間に合わない……!!
「っ!翔ちゃん」
と思われたが、間一髪翔ちゃんがナイスフォローに………
あれ?あの子あんな動き出来たっけ…………確実に成長していってる……?
「大丈夫??」
潔子さんがフォローに入ってるから谷地さんは大丈夫そうだな………
それにしても
「おもしろくなってきたな……」
雛鳥が牙を向いてくるのも近いかもしれない
「ふわふわしてんじゃねーぞゴラアアアア!!!」
と思ってたら何故か烏養くんが騒ぎ出した
なんだ、なんだというんだ…………あ、この感じは不味いな
「練習倍だな……殺人サーブ兼殺人スパイク喰らわせてやれ柚葵」
ほら………こっちが付き合わされるんだから…!
龍と夕め…!!

「えー明日ですが急遽、扇西高校から練習試合の申入れがありましたのでお受けしました」
『おおーっ』
「IH予選を見て是非との事でした」
『おおーっ』
うん、練習試合ができるのが嬉しいんだなぁ皆……
私も見たことないチームだからわくわくしてきた
「―青城に負けた悔しさも苦さも忘れるな。でも"負ける感覚"だけは要らねぇ…とっとと払拭して来い!」
『オオオオ!!!』

〜♪
「あ、電話…」
「誰から…?」
部活を終えて谷地さんは既に着替えていたので、着替え室には私と潔子さんしかいない
孝支先輩の帰ろう攻撃を交わそうと思ったらいろいろ大変だったんだよ…!
そんな中鳴り響いた着信電話、表示された文字は最近上に表示されるようになったじんぶつだ
「音駒のクロなんですけど………」
「…出てみたら?」
「……そうしてみます、もしもし…?」
「あー柚葵?」
「どうしたのクロ……こんな時間に珍しいじゃん」
「そ、そうだな………」
どうしたんだろ?珍しく言葉に詰まってるクロだけど、まさか
「第一次予選通過した」
「そ、そっか!よかったね!」
びっくりした、負けたのかと思っちゃった……
「今週末に二次予選になる」
「都会はやっぱり違うね〜クロの名前がテレビで見えること期待してるね」
「柚葵ちゃんは名を知らしめたもんなぁ〜?」
「え、どういうこと」
「全中準優勝だろ?」
「……あれ?クロに言ったっけ?」
「澤村に聞いた」
まって、大地さん………いつからクロと仲良くなっちゃってるの…!?
しかも大地さん何で知ってるの……あ、これは2年組がバラしたやつだな…
「予想外なんですが……」
「キャプテン同士悩みもあるわけでな」
「貴方達なんだかんだ仲がよろしくなかったのでは……?」
「いや?そうでもないぞ」
男ってわからん
「そういえば合宿」
「!」
「来るんだろ?」
「うん」
「楽しみにしておけよ?」
ん?楽しみに?
そのあと通話は切られたのだけど……楽しみにしておくって何をだろう?
「なんだったの?」
「あ、一次予選突破したようです」
「すごいね、東京は競争率高いのに」
「ですね……そんなところと練習試合とか合宿できるのは本当に恵まれてますね」
「柚葵も、もっと私たちを頼ってね?」
「…え?」
「音駒の、人と話してるとき距離がないなって感じたから………なんだか負けた気がして」
え、まって?いま潔子さんに、なんと
「柚葵ともっと仲良くなりたいよ私」
私天国にいかないといけないですかね?

「扇西高校到着は4時半だそうです!」
『ハイ』
結局あの後潔子さんに、本音をぶちまけられた私は、潔子さんの不安を解消するべくいろんな話をして……
そして、谷地さんを放置してしまっていた事に気がついた私たちは急いで谷地さんのもとへ
谷地さんはムードメーカー達に捕まっており、楽しそうに談笑している様子を見て、ほっとして合流して帰宅した
潔子さんが歩み寄ってくれたことにより、距離が縮まった気がする
谷地さんのことがあってか私も潔子さんに、聞きたいこととかあまり聞けなかったからなんだか寂しかった
まさかここまできてても不安な距離感だとは思わなかったけど…………でも今、確実に信頼関係が一歩築けた
そして今日は練習試合
私の役目は久々にマネージャー業だ
「じゃあ、仁花ちゃんは手前のコート脇にパイプ椅子並べてくれる?えーと……8脚!」
「ハイ!」
谷地さんはまだマネージャーになると決めてはないけど、なかなか働いてくれる……
マネージャー業に魅力を感じてくれるといいのだけど……
といっても私は教えれることは少ないんだけど…今日は記録係だし………あ、まてよ?
谷地さんもデータ集めたりするのできたりするかも?頭いいし……
と思って谷地さんの方を向いたらまさか自分の心に刺さる言葉が聞こえるとは思わなかった
「えっ理由?勝ちたい理由?」
「あっうん」

「負けたくないことに理由って要る?」

こちらがゾクッとなるような表情で翔ちゃんは言い放った
そうだ、純粋に考えたらそうだよね……
勝たなきゃいけない、貴方は勝って当然
お前がいるから勝てるんだ
そんなもの、理由じゃない
「……そりゃ、弱いわけだ」
「柚葵?」
私はその言葉現役に言えなかった
弱い、私は精神的に弱かった
「……柚葵」
「!う、烏養くん」
「そんな表情してっと皆心配するぞ」
そういうと烏養くんは髪の毛をぐしゃぐしゃにしてきた
あーもう!これから他校生がくるのに!……でも
「…ありがとね、烏養くん」
「お前のそれは後悔しても遅いしな」
「そーだね」
今うじうじしてても過去の自分が変えれる訳じゃないし
すべてを知ってる人が、烏養くんがいてくれてよかった
「なあ影山!負けたくない理由ってわかる?」
「あ?知るかそんなもん、腹が減って飯が食いたい事に理由があんのか」
「だよなぁ〜う〜ん…う〜〜ん…」
え、食欲とかと同じレベルで考えてるの……?
なんて子達………
「単細胞だな」
「なるほどね」
「ごめん、愚問だったよね」
『グモンってなに?』
「"愚かな質問また自らの問いをへりくだっていう言葉"!!!ついこの前やった!!」
『!!』
加えて純粋でバレー馬鹿ということも付け加えておこう
『失礼シマス!!』
『!』
「集合!!!」
『オエース!』
「あっじゃあ私達も整列するよ!」
「!ハイ」
うん、扇西高校の所とうちの所相性いいかもしれないな……
相手が練習してる風景を盗み見ながらデータを取っていく
あ、あの人の癖分かりやすいな……と思ってると
「ひっ!!?」
「?」
「ごめん…慣れてね…」
谷地さんの悲鳴が聞こえて振り返るとそこには……!?
「日向後ろ前だぞー」
「こっ!?」
「あー…柚葵データ集めてるから見ないかとおもったのに…」
こ、ここ、孝支先輩のは、裸が……!上半身だけだけど!!
まって、好きな人の上半身見てしまって平気なわけないじゃん!?
まあ、固まるよね!?
「柚葵ちゃーんかえっておいでー」
「っは!き、潔子さん…!」
「よしよし、まだ柚葵には刺激強かったよね」
なんとか潔子さんに救出してもらいながら平然を保つ……と思いたい
だからか
「(及川さんってもしかして菅原さんのこと……)」
後輩に私の想いがバレているのも気づかなかった

「旭さんアタマカッケーっスね!ひも!!」
「(ひも…)ヘアバンドね…そうか〜西谷に言われると自信つくな〜」
「猫背!」
ビシッと叩かれてる旭さん……痛そう
「旭さんイメチェンスか?」
「この前…清水に"東峰、いつもビッチリ結びで将来ハゲそう"ってさ…」
「ワハハハ!」
「俺も気を付けなければ」
「モテるハゲも居ますよね!」
「田中さんユニフォーム着ないんですか」
「………………」
「うおぉぉ!!!」
「……"烏合の集"」
「烏合…しかもちゃんと烏だしね」
的を得てる谷地さんすごい……もうわかってる
「でも試合になるとけっこう息が合うんだよ」
「よ〜し準備はいいかな〜?行くぞー」
「烏野ファイ!」
『オ"ォ"ース!』
瞬間皆の表情が引き締まる
それを谷地さんも感じてか目が輝いてる気がする
そこからは思った通り良い試合をする
皆の調子も悪くない
龍も大きな声と共に派手なスパイクを打ち込んだ
「すごい音…!ハデですね〜!」
「ふふふ…だよねーでも」
「パワー型二人に気をとられてると小さい烏を見失う」
その瞬間翔ちゃんが羽ばたき得点を決める
「一歩で遅れたらもう捕まえられないんだよ」
うん、すこし低い打点だったかな?
「まだ!もっと!高い打点で打てる!」
「おう」
そう、それでこそ成長するんだ

「すごいね!すごかった!」
「私見てるだけなのにこう…こう…!」
「ぐわぁぁってキた!?」
「!!キた!」
「じゃあマネージャーやって!」
「!?」
「…ちょっと会話がね、意味不明だよね」
「ーでも…こんなすごい部でスポーツ自体に疎い私じゃ、足手まといになるし」
「あっそういえばおれもやったことあるよ"村人B"!!」
む、村人B?
「…えっ?」
「んで、主役より目立とうとして怒られた」
「村人B…」
「あ"!?バカにすんじゃねえコノヤロー!"村人B"には"村人B"のかっこよさがあんだよ!!」
「…!!」
「じゃあ影山はどんなのやったんだよ!?」
「月とか」
「……ああ…そういえば飛雄、夜のシーンとかに出てきてたね……徹くんに笑われてたけど」
「っく!」
「その役必要?」
「っっ!!くそっかっけえっ…!」
「…え?」
か、かっこいいか?
「俺は馬とかやったなァ」
『馬!!!』
あ、旭さん………大地さんも孝支先輩もそんなに笑わなくても………あ、そういえば
「孝支先輩は王子様とか似合いそうですよね」
そう言うと皆驚いて固まってしまった
え、まって、私もしかして

自 分 で 爆 弾 を 落 と し て し ま っ た ?

「あ、えっと深い意味はなく……」
「そ、そうですね!菅原さんなんだか王子様って感じがします!」
や、谷地さんナイスフォロー…!
「王子様といえば及川さんしてましたね」
おい、飛雄、お前はいったい何で今それを言ったんだ
「柚葵さんもお姫様してましたよね。確か及川さんが柚葵さんがお姫様しないんだったら王子様しないとか駄々こねたって聞きました」
飛雄、おまえもう黙ってくれ
「及川が王子様ってなんか悔しいけど似合うな」
「大王様ってやっぱり中学までは王子様だったんですか!」
翔ちゃん、君すこしその意見はずれているぞ…
「お、俺が王子役?」
「なんとなく、王子様役似合いそうだなぁって思っちゃいまして……」
うう、恥ずかしい……固まってた孝支先輩が復活したと思ったらすこし顔を赤くしてこちらを見てきた
すみません、恥ずかしいことをいってしまってぇええ!!
「柚葵がお姫様なら王子様したいかな」
……すみません、着替えてきますね
「っえ!?及川さん!?」
「あ、逃げた」
「柚葵さーん!」
『柚葵ー!』
「…やりすぎだスガ」
「………え?不味かった?」
「…スガも天然だな」
進展ないどころかかき乱されてます潔子さん!!!

「き、潔子さぁぁん!!」
「柚葵…(なにかあったな)」
「実は…!」






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