Agapanthus







鈍い音が響きわたったと同時に、私も翔ちゃんに駆け寄っていく
烏野メンバーは皆翔ちゃんの元へ集合した
ちなみに一番反応が早かったのは飛雄である
「…っう〜〜〜〜〜〜っ」
「あっ生きてる」
「大丈夫かっ」
「翔ちゃんこれ何本か見えてる??」
「大丈夫かあああゴメンなあああ」
一番狼狽えてるのがぶつけた本人である
「どう考えてもボケッとしてたコイツが悪いんでしょ」
「きゅっ救急っきゅうきゅっ」
「落ちつけよ先生」
救急車も言えない武ちゃん、どれだけ焦ってるのだろう
「あ、大丈夫ですスミマセン……」
「ちょっとまってて!氷取ってくるから!」
たしかクーラーボックスのなかにこんな時ように用意してたはず!
あっ!あったあった!これをタオルに…
「もともとでっかいお前なんか絶対わかんないんだよ!!」
「っ!」
体育館に響く怒鳴り声
なにがあったかわからないけど、変人コンビがなにかやらかしたようだ
そんな声を聞きつけたほかの先生がやってきたけど、武ちゃんがいいように丸め込み、なんとか部活は続行できそうだ

「翔ちゃん、おでこ貸して」
「…………」
珍しく何も言わない翔ちゃんだったけど、大人しくおでこを貸してくれた
うーん、これは相当なことがあったらしい
一応何処か異常がないか調べるけど、おでこの所だけだった
「よし!じゃあ続き始めよう!」
「…………ありがとうございました」
翔ちゃんはそれだけ言うとコートへと戻っていった
状況がいまいちつかめないからなんて声をかけたらいいのかわからないけど、いつもの翔ちゃんじゃないから調子狂う
「お、高校チームは今、攻撃力が一番高いローテかな?」
「はい」
「あのチビッコの速攻には気ィつけないとな」
「あの」
『?』
「次、コイツにトス上げるんで全力でブロックしてください」
「!?」
飛雄は翔ちゃんに指をさした
堂々と宣言して何するつもりなのだろう
「なんだあ!?挑発かあ!?」
「ハイ挑発です!ナメたマネしてすみません!!」
「フッハッハ!!なんだお前面白えーな!よっしゃ!挑発ノったるぜ!!」
「あざす!」
そう言った飛雄は気のせいか旭さんの方をじっと見てポジションへ戻った
「…何考えてんだ??速攻はあくまで予測不能だから有効なんであって、手の内晒してブロックと真っ向勝負ってなったら、ちんちくりんに勝ち目無えだろ」
「………そうですね。真っ向勝負になったらそうかもしれないですね…」
「?」
ということは、真っ向勝負にしないってことか…?
「…………ーー今のお前は、ただの"ちょっとジャンプ力があって素早いだけの下手くそ"だ」
「?」
「大黒柱のエースになんかなれねえ」
「!」
「ちょ…ちょい…」
「おい」
「でも」
「俺が居ればお前は最強だ!」
飛雄はわかる日が来るだろうか
自分も最強になるってことを

「東峰さんのスパイクはスゲー威力があって、三枚ブロックだって打ち抜ける!じゃあ、お前はどうだ。俺のトスがお前に上がった時、お前はブロックに捕まったことが…………あるか」
「………!」
ピーーッと試合が戻される
町内会チームのサーブ
力がレシーブを返し、飛雄が位置につく
翔ちゃんはまだ戸惑っているらしく、どこに飛ぶかも決めてないっぽい
そんな時
「躱せ!!!!」
「??」
「それ以外にできることあんのかボゲェ!!!」
飛雄の言葉で何かに気づいたらしい翔ちゃんは走り出す
それについてブロック3枚ともついてきた
勿論、踏み込んだ瞬間を狙ってブロックも
「躱す」
飛ぼうとした瞬間、翔ちゃんが反対側へと駆け抜けた
「!?」
「ハァ!?」
「!!!?」
勿論、ブロックがすばしっこい翔ちゃんの不意打ちに反応できるわけもなく
ボールはレシーブされずに決まった
「お前はエースじゃないけど!!」
あれは、徹くんでさえ反応出来なかった移動攻撃…
「そのスピードとバネと俺のトスがあればどんなブロックとだって勝負できる!!エースが打ち抜いた1点もお前が躱して決めた1点も、同じ1点だ!"エース"って冠がついてなくても、お前はだれよりも沢山点を叩き出して!だからこそ敵はお前をマークして!他のスパイカーはお前の囮のお陰で自由になる!エースもだ!!…ね!?」
飛雄はいきなり振り向くものだから
「はっ!?おうっ!?」
あの龍がすごくびっくりしてる
「…影山、あそこまで言えるなんてすごい」
「……普通はあんなに言わないですもんね、ダメなところといいところ」
「柚葵は、まだ私達に一線をおいてるよね」
「!?」
一線をおいてる?
潔子さんの言っている意味が私には分からない
いや、心の奥では分かってるのかもしれないけど
「…そんなことないですよ」
「…………」
潔子さんは何も言わないけど、それが逆に焦る
でも、まだ今は……

「お前の囮があるのと無いのとじゃ、俺達の決定率が全然違うんだぞ!」
「……………」
「それでもお前は今の自分の役割がカッコ悪いと思うのか!!!!」
そこまで言い切ると飛雄は息切れしていた
珍しい……試合中はそんなに息切れしてないのに、翔ちゃんに訴える時は全力を出し切るほどどんなことでも言いたいんだ
「……………思わない」
「あ?」
「思わない!!!!」
翔ちゃんは拳を握り締めながら、飛雄の訴えに答えるように叫んだ
「よし!!!!」
それを聞いた飛雄は満足そうに返事をした
「今の一撃凄かった」
「!!あざすっ」
旭さんに言ってもらって翔ちゃんは嬉しそうだ「練習中断さしてスミマセンでした!!」
「あっうんっいやっ」
「試合の続きーー」
『お願いします!!』

そこから高校生チームは追い上げてきたけど、嶋田さんのジャンプフローターサーブでレシーブが苦手な高校生チームは崩されていき、町内会チームのマッチポイント
「イッキニイタダキマスッ」
「ナイッサー」
その無回転サーブは
「大地さん!!」
幸運にも大地さんのところへと向かっておりた
大地さんなら絶対大丈夫
孝支先輩も大地さんが拾うの分かってるから、次にどうするかを考えてるのがわかる
そういう信頼関係が素敵だと思う
「ナイスレシーブ!」
流石大地さん、やっぱり拾った
さあ、飛雄はここから誰を使うか
「今度はにがさねーぜチビっこ!!」
翔ちゃんの囮は大成功のようだ
3枚のブロックは見事に翔ちゃんについていき、フリーになった龍にトスが上がった
「やべっ」
「ぬぁ!?」
「ドーモ、コブサタしてますっ!!」
龍は思いっきり打ったけど
「ぬぁあ!!」
夕に拾われてしまった
「ナイス西谷!!」
「スガ!!」
旭さんがトスを呼んだ
それを嬉しそうに微笑む孝支先輩
本当に楽しそうだなぁ
「旭!」
最後は孝支先輩のトスで旭さんが決め、試合は終了した
「柚葵行こ」
「あっ、はい」
潔子さんに呼ばれ、ドリンクとタオルを取りに潔子さんの後ろについていく
「…………とにかくっレシーブだ!それができなきゃ始まんねえ。明日からみっちりやるからな!!」
『オース』
「あざしたー!!」
『したーっ』
「おう、ストレッチサボんなよ」

「孝支先輩!!」
「柚葵」
「今日の孝支先輩かっこよかったです」
「!」
「やっぱり私、バレーしてる時の孝支先輩好きです!」
「!?」
あり?なんだかとんでもないこといっちゃった?
孝支先輩が固まっちゃってる
「……ありがとう」
「はい!」
「柚葵、俺は?」
2人で笑いあってたら、大地さんが来てそう私に問いかけた
「大地さんは憧れます!」
「…ふ〜ん」
なぜか大地さんはニヤニヤしながら孝支先輩をみた
孝支先輩は大地さんを叩いてる

「あっでも俺は…レギュラーに戻してもらえたらの話だけど…」
そんな時、翔ちゃんと話していた旭さんの弱々しい声が聞こえてきた
「…旭はでっかいクセにホント気は小さいな〜」
「ちゃんとお前も復活したな、スガ」
「本当の孝支先輩が帰ってきましたね!」
「…うじうじくよくよいじいじしててすみませんでした」
「そこまで言ってない」
「ふふ」
「頼れる西谷も戻って来たし!」
「オス!!!!」
「でも教頭突き飛ばしたりするのは二度と無しね?」
「………………」
大地さん、声が怖いです
「あ、あと名ばかりのエースのへなちょこWSも戻って来めたな、そういえば」
「………………」
大地さん、旭さんには本気で厳しい
「じゃあ一発シメてとっとと上がれー」
「!」
皆が大地さんの元へと集まる
それを見た私は潔子さんの横へと移動する
円陣を組んだみんなは元気に
「烏野ファイッ」
『オーースッ!!!』
叫んだのだった
「…さて」
「次は…」
「合宿…ですね」

それから、あっという間に一週間は過ぎて行き
とうとう

ー5月2日GW前日

「柚葵ー今年のGWもバレー部?」
「うん、ごめんね」
「まあ、菅原先輩のためだもんねー」
「ち、違うよ!?バレー部の為だもん!」
学校が終わり、大荷物をみた友達は今年も遊びに誘ってくれようとしたほだけど、悟ってくれたらしく余計な一言を添えてきた
「今年もってことは、東京には夏に行くの?」
「うーん、どーだろ?今年はバレー部に集中しておきたいしなぁ」
「でもお婆ちゃん寂しがるんじゃない?」
「そうなんだよねぇ……」
私は学校が長期休みになると東京に住んでる祖母の家に行くのが習慣になって?
「多分、冬とかになるかも……それか今年からは会えないかもなぁ」
「あ、じゃあイケメン君にもそれまで会えないわけだ」
「イケメン君って……」
「迷子の柚葵を助けてくれた王子様でしょー?運命じゃん」
「………」
「ごめんごめん!柚葵には菅原先輩しか見えてないもんね!」
「私、………そんな昔のこと話したっけ?」
「柚葵のお母さん情報」
お母さん…いらないことをベラベラと……
「と、とりあえず行くからその話は秘密にしといてよ!?」
「はいはーい」
あ、これはもう誰かに話した時の反応だな…
小学生の時からの友達だから私には分かるぞ
ややこしくなりませんよーに!

「ーー揃ってんな」
『オス!!』
「4日後には音駒と練習試合、終わればすぐにIH予選がやってくる。時間がない。でも、お前らは穴だらけだ。勝つためにやることは一つ。練習、練習、練習。ゲロ吐いてもボールは拾え」
『オス!!!!』
「オーーーッス!!」
翔ちゃんは1回既にやっちゃってるけどなぁ

「柚葵、そろそろ夕飯の準備しようか」
「はい!」
「あ、僕も手伝うよ」
「え!武ちゃんも手伝ってくれるなら助かりますね…!」
そうして、潔子さんと武ちゃんと共に一足先に合宿所へと向かった
「初日の献立はカレーですよね!定番の!」
「よし!じゃあ今日は僕特製のレシピを教えてあげよう!」
「武ちゃんの特製!?」
なんだかスペシャル感があるぞ!
「ここでこれを入れたらコクが出るんだよ。後は混ぜておけばOK!」
「へぇー」
「柚葵、サラダ作っておこ?」
「はーい!」
去年と違って武ちゃんがいるから潔子さんと2人っきりじゃないけど、すごく楽しい!
それから皆が帰ってきて食事の用意をする
疲れてるにも関わらず孝支先輩は運ぶのを付き合ってくれる
よし、孝支先輩のだけちょこっとお肉多めにしよっと
「じゃあ柚葵、ごめんけど私は帰るね」
「はい!気をつけてくださいね潔子さん!」
家が近いということで、潔子さんは後片付けをすると帰ってしまう
「柚葵も気をつけて」
「?はい」
「…………」
「朝食は私と武ちゃんで作りますので、気をつけて来てくださいね!」
「うん、ごめんね」
「いいんです!任せてください!」
「ありがとう」
潔子さんは武ちゃんの車で送ってもらったのだった


「柚葵」
「あ、孝支先輩」
「片付けありがとう。お風呂空いてるから入っておいで。いつも後でごめんな?」
「あ、大丈夫ですよ!ありがとうございます!」
「……柚葵」
「?はい」
「…………やっぱまだいいや!ごめん!引き止めて!」
「そう…ですか?」
孝支先輩が何をいおうと思ったのかわからなかったけど、早く行きなって感じで見られたからお風呂場へ向かう

「もうちょっと後でいいか……」
「そこまでのばしていいのか?」
「うおっ!!大地!」
「早く捕まえとけよー」
「…………言われなくてもそのつもりだべ。それに、今言おうとしたことはそれじゃないしな」
「?」
そんな会話がされてるのも知らず


翌5月3日
まずは朝のロードワークから始まった
「うおおおおおおおらああああ」
「日向うるせえ!!無駄に叫ぶと後でヘバるぞ!!」
飛雄と張り合う翔ちゃんは叫びながら全力疾走していく
見慣れた光景ではあるけど、道をちゃんと見てるのか不安になるような走りだから少し心配だ
迷子…にはならないと思うけど……
「あれ?日向は?」
「………やっぱり」
はぐれたな翔ちゃん…
フラグを綺麗に回収してくれてありがとう……

「柚葵」
「ん?なに?烏養くん」
「お前、団体競技の試合とかはまだ無理なんだよな?」
「うん」
「なら、練習で玉出しくらいはできるだろ?」
「?いつもしてるぽーんってやつ?それともスパイク?」
山なりに投げるボールならいつもやってるけど……
スパイクぐらいなら多分できなくもないけど
「いや」
なんだ、他になにをしろと?
「ジャンプサーブだ」

「……烏養くん、ちょっと意味わかんない」
「だーから!ジャンプサーブであいつらのレシーブ練習に協力しろっつってんの!」
「なんで今更!?しかも尚更私のジャンプサーブなんてレシーブ練習にもならないでしょ!」
徹くん直伝だけど
「!柚葵さんがレシーブ練習のサーブしてくれるんですか!?」
いつの間にかそばにいたらしい一番厄介な飛雄に聞かれてしまった、ものの見事に釣れてしまった
その飛雄が大きな声で言うものだから皆こっちを見てる
「いや、しないけど」
「してください!俺柚葵さんのサーブ一回は受けてみたかったんス!!!」
「柚葵、お前サーブが武器なんだから協力してくれよ…頼む!!お前が期待されるの苦手だと知ってるけど、こいつらのためを思って!な?」
「………………」
まさかの事態だ
「及川さん直伝のサーブ!俺取ってみたいんです!!!」
『!!?』
「?」
その言葉で旭さんと夕以外のメンバーが反応してしまった……
飛雄の馬鹿野郎…!!

「…………最近全く打ってないし、威力衰えてるから練習にならないと思うけど」
「なら一球打ってみろ、影山レシーブに入れ」
「はい!!!」
「う゛」
そう来たか
しょうがない、ちょっと緩く打とう
「あ、手加減とかしたら今後肉まん売ってやらねーからな」
「!卑怯な!!」
「うっせ」
坂ノ下の肉まん食べられないとか耐えられない!
仕方が無いな……
「飛雄ちゃん」
「………なんスか」
ちゃん付けで久々によんだから機嫌が少し悪くなったな
「なるべく飛雄ちゃん狙って打つけど、多分無理だと思うから頑張って取ってね」
「分かってます。柚葵さんの癖ですよね?」
『??』
皆なんでだ?という顔してるけど仕方がない
私のサーブは
「いくよ!」
「!」
『!?』
人がいない所を無意識に狙うから
バンッ!!!!とボールが鳴らす音
「っ!?」
威力は衰えてなかったようで、飛雄は何とか拾えるところへ移動したけど、腕に当たりはしたけど捉えることはできず、ボールは後方へと飛んでいった
「……あちゃー」
「やっぱ、衰えてねえじゃねえか!」
「柚葵さんスゴいっす!」
飛雄ちゃんと烏養くんは絶賛してくれるけど、他の人は口を開けて固まってる
孝支先輩も大地さんも目を見開いて口開けてる
潔子さんとツッキーだけ目を見開いてくらいだけど
まずいな
『なんだってぇええぇええええ!!!?』
秘密があることバレてしまった
「なんで今まで言ってくれなかったんだ!?」
「すげーレシーブ練習できたのに!!今までの時間もったいないことしたぜ!?」
「う、はい」
「そうだなぁ、ちょっとこれは……なぁ?」
大地さんが一番怖いです
だって、衰えてると思ったんだもん!
…まあ、徹くんの練習ちょくちょく付き合ってたんだけど………
そもそもバレーをすることにはまだ抵抗があったから…
「驚いたな、柚葵にそんな特技があったんだ」
「こ、孝支先輩は怒りません?」
「ん?秘密にされてたことはちょっと怒ってるけど、すごいなってほうが大きいかな」
「孝支先輩!!」
流石孝支先輩だ!
「よーし、じゃあレシーブ練習すっぞ。俺と柚葵が交代ではいるからお前ら順番決めとけー」
『オース』
皆の目がギラギラしてる…
これは
疲れるパターン!

「っはぁー」
やっぱり昔は体力あったけど、最近あんまり走り込んだりしてないから体力落ちたなぁ……
特に帰ってきた翔ちゃんが、私のサーブをみてしつこく迫ってきた
この時ほど飛雄の気持ちがわかったことはない
マネージャーの仕事は潔子さんがしてくれるとのことだから、その言葉に甘えて今は休ませてもらってる
これから午前中最後のサーブ練習にうつるらしい
よし、これで烏養くんに文句言いに行ける
「そういえば音駒はもうこっちに来てんだっけか?」
「ええ、今日こっちに来てるはずですよ。烏野総合運動公園の球技場を拠点に毎日違う学校と練習試合だそうです」
「!」
音駒高校もう来てるのか…
情報収集するべき?
「で、最終日ウチと ですね」
「…音駒ってどういうチームなの?」
「!お、柚葵お疲れ」
「お疲れじゃないわ!久々過ぎて体力切れした!」
「そこまで喋れるんなら大丈夫だろ。これからも頼む」
「いやだ」
「肉まん食わしてやっから」
「しょーがないなぁ」
肉まんにつられたのではない、決してつられてない
「話戻すけど、現状はさすがに知らねえ。けど、昔っからレシーブの良いチームだった。突出して攻撃力の高い選手が居るとかでは無いんだが穴がない」
「…ウチとは真逆」
「そうだ。"ネコ"っつうだけあってとにかくー"しなやか"」
しなやか……か

「昼ーーーっ!!」
あの後潔子さんと昼ごはんの用意をし、知らせに体育館に来たけどちょうどいいタイミングで昼休憩になったみたいだ
「うかーい…」
烏養くんに知らせようとしたのだけど、何やら真剣な話をしてるようだから話しかけるのをやめた
多分、烏養くんのことだからセッターで迷って悩んでるんだろう
視線が孝支先輩と飛雄を交互に見てる
「………」
個人的には孝支先輩を選んで欲しい
けど、チーム的には飛雄のほうが上手くいくと思う
今の烏野の武器は飛雄と翔ちゃんの変人速攻だから
「大地さん」
「あ、柚葵。お疲れ様、あのサーブすごかったなぁ。俺でも触るのが精一杯だったぞ」
「!ありがとうございます!!」
「だけど、もうちょっと早く教えてくれてもよかったんじゃない?」
「…………」
すんません、今後悔してます…
声と顔が怖いです大地さん
「昼できてるので…」
「ああ!ありがとな!」
そういって頭をなでてくれた大地さんにホッと安心する

「柚葵」
「?」
孝支先輩に呼ばれたので振り向くと、なんだか苦しそうな孝支先輩がいた
多分、今後について悩んでるのだと察してしまった
孝支先輩は場所を変えようと言って、体育館裏へと移動する
「…あのさ……………っ」
「…迷ってるなら……言い切っていいですか?」
「!?」
「…勝つためにすることなら私は孝支先輩を誇りに思います。自分のためにすることなら…私は孝支先輩を応援しますけど、多分誇りには思えないと思います」
「!」
「生意気なこと言ってすみません。だけど、孝支先輩には迷わず真っ直ぐな道を進んで欲しいんです」
「柚葵…」
「なにより……もっと一緒にいたいです」
3年生と孝支先輩とこの部活の空間で
「…ありがとう、柚葵」
「……」
「柚葵にそれを言ってもらってよかった」
「孝支先輩…でも」
「柚葵、俺負けるつもり無いから」
「!」
「大丈夫だべ!」
「……はい」
そこから孝支先輩とともに食堂を目指す
さり気なく握られた手に力がこもった

「菅原と何かあった?」
「へっ!?」
今日の夕御飯を作りながら潔子さんにそう言われてしまった
「なんだか、顔がニヤけてるから」
「あ、う、えーっと」
「…今日はいっぱい作ろうか」
「!はい!!」
なにか感じ取ってくれた潔子さんはその後何も言わなかった
うーん、ミステリアス
効果音をつけるならガツガツだろうか
すごい勢いで食べてく飛雄と翔ちゃん
「どっから来んのその食欲」
「おえぷ…」
反してツッキーと山口は食欲がないらしい
まあ、人それぞれだよなぁ
「おい食え!無理矢理でも食え!!この時期からそんなんで真夏どうすんだお前ら!干からびて死ぬぞ!!」
「山口食わねーの!?もらっていい!?」
「コラ!ちゃんと山口に食わせろ!!」
食欲あるのって素晴らしい
私食べれない
「今日はよく食うなスガ」
「ほォ?」
聞きました?奥さん
いまの可愛い可愛い声を!!
うわぁあ!!久々に悶え死にそうです!!
「いっぱい食って頑張んないとね」
孝支先輩のご飯…私がずっと作っていいですか?って言いたい!
すごくすごく食べてもらいたい!
「柚葵、箸曲がりそう」
「あっ」


ーー…
「音駒戦、スターティングはこれで行く」
そう烏養くんが言ったメンバーは
大地さんに旭さん、龍に夕、飛雄に翔ちゃんにツッキーだ
昨日の食事の後、烏養くんに聞いた話
孝支先輩は勝つ方を選んだと教えてくれた
その場で泣きそうになったけど、私が背中を押したのだから精一杯応援しなきゃいけない
それと、孝支先輩をやっぱり誇りに思った
「顔合わせて間もない面子だし、そう簡単に息が合うとは思ってねえ。俺が来る前にも色々とゴタゴタしてたみたいだしな」
うん、旭さんと夕の肩が揺れた
「…スゴ腕のリベロが入ったからエースが戻ったから、"よし勝てるぞ"ってなる訳じゃない。勝つのは繋いだ方。この面子でどのくらい戦えるのか"カラス"の宿敵"ネコ"と勝負だ」
「あス!!」
「"試合"の"練習"ができるなんてありがたい機会は他に無いんだ、取りつけて来た先生にお礼言っとけよ!」
「!?そ、そんなヤメテー」
『あザース!!』
「うっ」

「柚葵」
「はい?」
「ちょっといい?」
武ちゃんがみんなに囲まれてるのを笑っていたら潔子さんに呼ばれた
そして潔子さんに案内された場所には
「あ!ユニフォーム!!」
懐かしの黒とオレンジのユニフォームがあった
「直しとかあるんだけど一人じゃ追いつかなくって」
「私もやります!」
「…たすかる」
「!」
潔子さんに撫でてもらえて私は頑張りますよ!
「明日には渡したいから急ぎたかったの」
「そういうことならお任せあれです!」
手縫いは得意中の得意だ

翌日
朝ごはんも作り、ジャンプサーブも手伝い、午前中後半は自由時間をもらった
このままのペースで行けば昼までには出来そう
「できたー!潔子さんもできました?」
「うん」
「昼ごはんの用意して持っていきましょう!」
「先生」
「おっ?あっできた!?」
昼ごはんもできたので体育館にいくと、武ちゃんがボール拾いをしながら紙袋をみた
「はい、クリーニングとか直しとか終わりました」
「ユニフォーム」
「おおおっ」
「青葉城西との時はなったからなぁ」
「TVで見たやつ!"小さな巨人"が着てたやつ!!」
「変わらずコレだけか。もう一種類有ればいいんだけどなー」
それは私も思うよ烏養くん
「じゃあ配ります」

「おおおっ!!ノヤさんだけオレンジだ!!目立つ!!」
え、夕いつ着たの
わたしさっき渡したばっかりだよ
「リベロは試合中何回もコートを出入りするから、わかりやすいように一人だけ違うんだよバカ」
「しっ知ってるし!全然知ってるし!」
いや、知らなかったな翔ちゃん
そんな翔ちゃんは飛雄の持っていたユニフォームをガン見していた
と思うと自分のユニフォームを見直した
どうしたんだろう
「かっ影山が…一桁っ…」
『言うと思った!!』
「1年でユニフォーム貰えるだけありがたいと思え!」
「わ、わかってるっ」
翔ちゃん嫉妬してたんだなぁ
「あ、そっか番号までは覚えてないか」
「TVで一回見たきりだもんな」
「え??」
「"小さな巨人"が全国出た時の番号、10番だったぞ」
「ーーー!!」
それを聞いた瞬間、翔ちゃんの目が輝いた
ほんと、かわいいなぁ
「こっコーチの粋な計らいですかっ!?」
「いや、たまたまだ」
「じゃあ運命だ!!」
「たまたまだろ」
「妬むなよ影山クン」
「なんで俺が妬むんだよ!」
またコント始めた飛雄と翔ちゃん
面白いなぁ
「ちなみに」
「?」
「日向の好きな"小さな巨人"が居た頃が過去、烏野が1番強かった時期だが、その頃烏野は一度も音駒に勝っていない。最後にやった時も負けてるハズだ」
そうなんだ…
これまたすごい因縁だな
「負けっぱなしで終わってる。汚名返上してくれ」
『!あス!!!』


そして
5月6日 AM8:50
烏野総合運動公園 球技場
「用意はこんなものでいいですかね?」
「うん、大丈夫だと思う。もう集合してると思うから行こう」
「はい!」
「あ、あっちに龍たちが見えますよ!」
「………」
って、なんだか孝支先輩が相手校の人とペコペコしてる
何があったんだろうか
「!?はぅあっ」
と思ってたら龍と話してた人がこちらを見て居たので、潔子さんと一緒にお辞儀しておいた
「女っ………マネっ……美っ…可愛っ…うぉ…あぅっファァァァ」
「あ゛!!猛虎さん逃げないで!」
そして何故だか逃げられた何だったんだろう
「今日は宜しくお願いします」
「こちらこそ宜しくお願いします」
そして、球技場のなかでは
大地さんが相手校の主将と握手をしていた
うん、なんだか怖い
ってか、相手校の人すごく知り合いに似てるんだけど、いや、似てるんじゃないきっと
あ、こっちみた
「はぁ!?柚葵……!?」
おぅ、デジャヴ
皆の視線がこちらを向く
目の前には長身の彼が目を見開いてる
この状況……なんとかしなければ
どうりでご本人様だ








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