何もかも新鮮だったあの頃
私は彼と出会った

『名前はなんていうの…?』
「……さわだ、つなよ、し」
周りから弱いだの、女っぽいだの馬鹿にされていた男の子
どうにも放っておけなくて声をかけた

『なんでやりかえさないの?』
「……おれがきずついても、おれががまんすればいい……でも、ほかのこがきずつくのはいやなんだ」
『どうして?』
「…いたいのをしってるから」
当時の私には分かりっこないことを小さな身体で理解していたツナ
そんな心優しい彼の運命が決まっていただなんて神様はなんて残酷なんだろう

『ちゅ、つな……』
「つなよし……つなでもいいよ」
『つなはそれでいいの?』
「よくは、ない……けど」
『わかった!わたしがまもってあげる!』


ここまでが私が知ってる昔の記憶
そこからの記憶は小学生に上がる前まで、なにかが抜け落ちてしまったかのように覚えていない

時は過ぎ小学生に上がった頃

「刹那」
『ん?なに?ツナ』
「…みんなが、おれたちはおかしいっていってくるんだ」
『なんで?』
「"男の子"と"女の子"がずっと一緒にいるなんておかしいって……」
『なにがおかしいんだろう……ツナは私が嫌い?』
「嫌いじゃない!」
『だったらそれでいいんじゃない?』
「…え?」
『嫌いになったら離れたらいいんじゃないの?』
「…刹那はおれのこと嫌いじゃない…?」
『?なんでツナの事嫌いになるの?"嫌い"じゃなくて"好き"だよ?』
「!」
男の子は幼く、女の子は大人になるために成長しているちぐはぐの頃、ツナからそんなことを言われた
当時から何やらそんな話題が好きな男の子により引き離された男女の幼馴染みは少なくない
まあ、ツナも小学生になっても弄られる対象にはなっていたが、彼も彼で強くなり安心した一方でこれだ
不安になり眉毛が下がるツナは可愛かったけれど、離れようとしたツナに少しだけ不満があったのは確か
恋愛感情で好きと言ったわけではなかったが、彼は聞きなれていない言葉だろうと思って困らせたかっただけなんだ……
後々後悔することになるとも知らず


小学校を卒業し、私は卒業前に女子校に入ろうとしていたのだけど…ツナに話した途端

「刹那は俺のこと嫌いになったの!?」
なんて小学生低学年以来の話題を持ち出してきた上に

「刹那が並盛中に行かないんだったら俺…」
といって家を飛び出し行方不明になった
次の日にも帰ってきてないツナに、死んでしまうかもしれない…!と焦った私は並盛中に行くから死なないでツナ…!と思い、女子校の願書を取り消した

すると、何事もなかったかのようにツナが現れた
ニコニコしながら私の前へと現れたツナに

「刹那は俺のこと大好きなんだね」
なんて言われて初めて嵌められた事を知った
後から聞いた話、私のお母さんも奈々さんも私たちが離ればなれになるのは反対だったらしく、ツナと手を組んで仕組んでたらしい……
母達恐ろしすぎる

そして、この頃から除かせていた変化があった
ツナが凛々しく立派に恐ろしいくらいに強くなっていた
あの弱々しさが残るツナはどこへ消えたの?と思うくらいに成長した
と、同時に私は悟った
ツナから逃れることはできないと


そして中学生になった
このまま平和に過ごせると思っていた私たちの前に突如として現れたのは

「ちゃおっす」
小さな小さな赤ん坊だった
彼はツナをマフィアのボスにするためにわざわざイタリアから日本へときたらしい
人を傷つけるのが嫌いなツナにマフィアのボスをさせるのは反対だったけど、家庭教師も兼ねて今日から住み込みで沢田家に来たのだという
赤ん坊を外に放り投げる訳にもいかないし、決定事項ということでツナにがんばれ!と残し私は家に帰ったのだけど…

『……へ?今なんて言った?』
「ごめんね、刹那…パパの仕事の関係で私もどうしてもイタリアにいかなくちゃならなくなっちゃって……奈々には話してあるからこれからは沢田家が家よ」
綱吉くんと幸せになるのよ〜!なんて言葉を残した両親に苛立ちが生まれたのは仕方がない
そのまま来た道を戻ったのだけど、今後の展開が怖い


そして読み通り

「てめぇをボンゴレ10代目と認めねえ」
イタリアから来た獄寺隼人という人物に目をつけられたと思えば
「あなたこそが10代目にふさわしい!」
何故か忠犬ハチ公のごとく好かれてしまった上に

「10代目と刹那の関係って何なんですか?いつも一緒ですよね?」
私たちの関係に爆弾を落としてきた
まあ、私はなんだかんだツナが好きだ
それこそ逃げられないなと悟った時に気づいたんだけど……
あの頃とは違って少し大人に近づいてきた分、下手なことは言えないし……選択肢を間違えるとめんどくさいことになる
素直に私は言った

「俺の好きな人」
『私の幼馴染み』
……………ん?何かツナ変なこと言わなかった…?

「すっ」
『え、待って、何で獄寺くん顔真っ赤にしてるの』
「っえ」
『え?』
な、なんで困惑した表情をされなきゃならないんだ

「刹那には伝わってねぇみてえだな」
「…リボーン」
「ダメツナが流れに任せようとするからだ」
何故かツナと獄寺くんは二人して残念な顔をしていたが解せぬ
リボーンはニヒルな笑みを浮かべていただけだったけど

そのあと獄寺くんに何故か「刹那さんって呼ばせていただきますね!」といきなり敬語のさん付けわされたので、敬語もさん付けもやめてって言ったら顔が青くなりながら「恐れ多い…!」とかなんだか言われたけど強制的に辞めさせた
そしたら獄寺くんなんて辞めてって言われたから隼人くんって呼ぶことにした
隼人ってなんだかかっこいいよね…犬にはぴったりな名前かもしれない?
その時ツナが何故か不機嫌そうだったけど、その理由はよく分からない


そんなことがあってからよく3人で行動するようになったのだけど、最近のツナのスキンシップが半端ない
何故かクラスメイト達の前では前みたいな天使のツナなのに、私たちの前では普段のツナ
そこまではよかったのだけど、クラスメイトの前でも近い……教科書を忘れたからといって机を引っ付けるまではいい
だけど、身体までくっつける必要はあっただろうか?天使のようにかわいいツナだからあざとすぎる
そして極めつけはお弁当のときと帰るとき

「刹那、卵焼きちょーだい」
『ツナも同じお弁当でしょ?』
「刹那のお弁当にはいってる卵焼きがいい」
『変わらないと思うけど…はい』
お弁当を差し出したというのに動かないツナの箸
不思議に思ってツナを呼ぶと

「食べさせて?」
どこのカップルよ
いや、まあ抵抗はあるがいつも一緒にいる生活を送っているから今さら間接キスがどうのこうのいうものは気にしてはいないんだけど…
流石に好きな人にあーんをしないといけないのは恥ずかしすぎではないだろうか?
ほら見ろ、隼人くんなんて顔真っ赤にさせてこっち見てないんだからな

「帰るよ」
ナチュラルに捕まれる手
いや、流れ的に分からんでもないけどなぜ恋人繋ぎなんだい?
ツナはやはり器用だったのか……

そんな出来事がなんだかんだ続くなかで私は風邪を引き学校を休んだ
多分知恵熱なんだと思う……最近ツナの行動が分からなくて悩んでたら熱が出てしまった

「刹那も大変だな」
他人事のようにリボーンは言った
そうですね、あなたが来てから余計に大変かもしれません…なんて言葉は言えないから苦笑いで返しておいた
リボーン自体はなんだかんだ助けてくれるし面白いしかわいいし好きなんだけどなぁ……
今もいつもはツナを見守るように学校にいるけど、私の看病してくれてるし………
ただ、ツナをボスにしようとしなければいいのに


「はよっ!ツナ!如月!獄寺!」
「…おはよう山本」
『お、おはよ?』
「…………」
え?なに??私が風邪で休んでる間に何があったの……?
いつものように「おはようございます!10代目!……刹那!風邪は大丈夫か?」なんて家の前で出迎えてくれた隼人と共に学校に向かっていたら、唐突にクラスメイトの山本武くんに遭遇
前までなら不思議に思わなかったけど、何故か彼はツナを"沢田"てまはなく愛称の"ツナ"と呼んだ
……なにかあったに違いない
昨日リボーンが私が寝た後学校に行くって言ってたから嫌な予感がするんだけど

「山本もファミリーの一員になったぞ」
……ほら、やっぱり
クラスメイトをファミリーに引き込むのやめていただきたい


刹那って呼んでいいか?なんてフレンドリーな山本くんに私も武くんって呼ぶね?なんて言葉を交わしながら(隼人くんがきゃんきゃんなんかいってたし、ツナもツナで朝から不機嫌になるし大変だったけど)無事に学校に到着
昼間にリボーンに応接室に向かうように言われたけど、そこには並盛最強の雲雀恭弥が君臨している
それを知らない3人は向かっていったのだけど……多分ただではすまない
だってあの人……

「やぁ刹那…君もこいつらとまだ群れてるの?」
『はぁ……恭ちゃん、またいろんな人を咬み殺してるの』
「弱いから群れる」
『恭ちゃんは強いから分からないかもしれないけど、弱いものは力合わせないと弱いままなの!』
弱くて群れてる人たちが嫌い

「…刹那知り合いか?」
『あれ?リボーンいたの…?』
あ、そういえばツナがパンツで寝転んでる………ってパンツ姿…!!?

「……なに顔赤くしてるの」
『き、気にしないで!』
「…とりあえず今日は引き上げるぞ」

そうそう、私と恭ちゃんはなんというか…友達?
1人怪我していた恭ちゃんに手当てをしてあげてからなんだか興味を持たれ、群れるのが嫌な彼をどうにかして克服させようとしたんだけど駄目で
ツナと私なら大丈夫なようなんだけど、どうも強い人は分からない

あれ?というか私…………


友達、恭ちゃんと京子と花とハルちゃんしかいなくない?
(ファミリーは除く)




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