愛しい勘違い







俺には、めっちゃ可愛い彼女がいる。

名前は、名前。
名前も可愛いだろっ?

笑った所とか、泣いた所とか、ふてくされた所とか…とにかく、名前は全てにおいて、可愛いんだっ!


侑士にはよくバカップルだって言われるけどさ。

バカップル上等じゃん!
むしろ大歓迎!

あいつきっと彼女いないから、妬んでるんだぜ、俺達のこと。



でもこの間、俺達バカップルを脅かす出来事が起きたんだ…。





それはテニス部の朝練が終わって、片付けをしている時に起きた。


俺がテニスボールを片付けていると、コートを囲んでいるフェンスの向こうに、名前が居るのを見つけたんだ。


俺はフェンスに近寄って
名前に声を掛けようとした。
そしたら、名前と一緒にいた名前の友達が、こう言っていたのを、聞いてしまったんだ。



「そっか…。じゃあ名前、来週にはイギリスに行っちゃうんだね」






…………はっ?

イギリス?どういうことだよ?


俺、そんなこと聞いてねぇぞ?


俺は片付けを放棄して名前を追う。


でも、そこにはもう名前の姿はなかった。






昼休みのチャイムが鳴ると同時に、俺は教室を飛び出して名前のいる教室へと向かう。



入り口の所で名前を探す。
案の定、名前は俺が名前を見つけるよりも先に俺の事を見つけ、いつもの笑顔でやって来た。


「あっ、岳人くん!お昼一緒に食べ…」

「ちょっと来て」

俺は名前の言葉に被せるようにそう言うと、名前の手を掴んで引っ張っていく。


「ねぇ、岳人くん?どうしたの?」

俺は名前の質問には答えないまま、ある扉の前で立ち止まる。


ほとんど錆びかけているそのドアを、俺は力任せにこじ開けた。


扉の向こうから、生暖かい風が、吹いてきた。






屋上は、俺達の他には誰も居なかった。



名前は、不思議そうに俺を見ている。



「…なぁ名前。…イギリス…行くのか?」


俺はいきなり本題に入る。
「んっ?あ、うん。そうだよ。もう聞いてたんだね!今日言おうと思ってたんだけど…」

「なんでだよっ!!」

突然大きな声を出したからか、名前は肩を一瞬だけビクッと震わせる。


「何で、もっと早く教えてくれなかったんだよ!?来週って…急すぎるだろ…」

「えっ、あ、あのっ」


「何で行っちまうんだよ!俺、名前と会えなくなるのは嫌だぜ!」


「あっ、あの、岳人くん…」


「どうして急に転校なんかするんだよ!」


「……………ん?」


「……………あっ?」


―――――

「…………けっ、結婚式…?」

「うん。イギリスに住んでる従姉妹が結婚することになって、それで、是非来てねって、誘われたの」


「じゃあ、転校、とかじゃないんだな?」


「うん、違うよ!私は氷帝が大好きだから、転校なんてしません!」

俺は、一気に緊張から解放された。
俺はなんて勘違いをしてしまってたんだ…。


すると、名前が小さく笑う。

「…なんだよ」

「いや、嬉しいなって」

「…嬉しい?」

「うん。だって岳人くん、凄く必死な顔して『行くな!』って言ってくれてさ。ああ、私愛されてるんだなーって思ったら嬉しくなっちゃって」


うぅ。なんて可愛いことを言うんだ、俺の彼女は。


俺は思わず名前を抱き締めた。


「名前!俺、名前のこと絶対離さないからな!」


彼女は、何も言わず、俺の頬にキスをした。










俺には、めっちゃ可愛い彼女がいる。

名前は、名前。


俺達は、どんなことがあっても、絶対切れない赤い糸でしっかりと繋がってるんだぜ!


大好きだぜ、名前!


Fin.




鈴音梨兎様、素敵な夢小説をありがとうございます!
梨兎様のサイトで700のキリ番を踏んだときいただいた小説です。
岳人のかわいい勘違いにキュンキュンです(ノ∀`*)












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