「謙也…頼む、で…」

「ふざけんなや白石!白石!!」

「迷惑かけて堪忍な…」

「お前!おい!起きろ!おい…!」

「みんなのこと…頼んだで…うっ」

「白石っ白石ぃぃぃい!!」


「クーちゃん達うっさい」


 珍しくあの健康オタク白石くんが体調を崩したらしく(多分パンいちで腹冷やしたんやろ)今日配布された課題やプリント、その他諸々を部活前に白石宅まで持って行ってやった。のだけども。せやけども。





『包帯を解いた内蔵助の腕には、植物の入ったビニール袋がテープで貼り付けられている。鮮やかな黄色い花と、深緑色の葉…。本堂に集った8人の「容疑者」は、魅せられたかのように、その植物に注目している。「これはゲルセミウム・エレガンス。全てが有毒部位とされとる。まさに究極の毒草や。東南アジアに生息する毒草で、日本に持ち込めば検閲に引っかかる」「それじゃあ、その毒が使われてるワケがないわね」「そ、そうや!小夏の言う通り、ありえへんわ!」「ところが日本にもあるんや。ある宝物庫に」続』


「これの続きを俺らで書けと?」

「せやねん…今日が締切なんやて」

「こんなん置いてくればよかったんやないですか」

「それがなぁ!俺もそうしよ思ったんやけどなぁ!」

「ここ声張るとこやないやろ」

「せやけど白石が死んだ振り貫くし白石の妹と姉ちゃんガン見してたし…」


 白石が校内新聞の隅っこでこの小説を掲載しているのは知ってたんやけど、それの締切は今日。それを当の本人は昨日思い出したと同時に腹部に激痛が走ったと証言した。


「ええやないの〜!楽しそうやし、やってあげましょ!」

「まあ小春がやるなら…やるとでも言うと思ったか!せやその通りや!けどな!これ小春、いや小夏も犯人候補の1人みたいになっとるやんか!」

「いや謙也さ…やなくて、あ〜なんやろ…太郎さん?が犯人と違います?」

「いや太郎とか俺の原型ないんやけど!せめて謙…謙次とかやろ」

「まあ白石のために一肌脱いでやるばい!」

「え、千歳の皮剥くん?わいも剥きたい!」

「違う金ちゃん」


 なんやかんやで白石を手伝ってやることになった。小春が提案したリレー方式で、俺、小春、千歳、ユウジ、光の順番で少しずつ文章を書いていく。なんかちょっと楽しそうやん!あ、他の奴らまで書いたら多すぎるからな!


 そして10分後。


「でっきた〜」

「ちゃんと繋がっとるか?」

「確認しながら書いたし大丈夫やろ」

「ほな俺のターン!!」


『「その宝物庫はどこにあるんや」と謙次くんは言いました。「アタシの考えやったら…」と小夏ちゃんが考え始めました。2人を嘲笑いながら内蔵助くんはこう言いました。』


「うわ〜謙次さん文章力ゼロっすわ〜きも」

「謙也や謙也!いやゼロじゃあないやろ!くそう悔しい!」

「じゃあ次アタシね!」

「あ〜あ、謙也のせいで小春が文章繋げにくい〜」

「黙れ!!」


『「小夏…ほんまお前は考える姿もかわええな…」内蔵助は小夏の手を取り強引に自分のもとへ引き寄せた。「っ!俺の小夏になにしてんねん!」内蔵助の腕の中から謙次は小夏を奪い取る。「やめて…2人とも…!」小夏は泣き崩れた。』


「こは、小夏ぅぅぅぅう!!」

「イヤン!内蔵助くんと謙次くんたら!!」

「もうマジキモい」

「俺は謙也なので大丈夫です謙次くん頑張ってください」

「次は俺のターンばいね!」


『「もしかしたらメイ…お母さんの病院に行ったのかもしれない」その言葉に周りは騒ついた。涙ながらに話す小夏に続き謙次が口を開いた。「謙次、そうすけ好き!」それに内蔵助も続く。「バルス!」事件の終わりが顔を覗かせた。』


「わかっとったよ」

「良さが?」

「次ユウジ」


『「待たせたな」会議室の扉を開け、豪快にかっこよく登場したのは、イケメン探偵で有名な二氏ユウヤだった。「小夏は犯人やない。真の犯人は…」「アタシのハートを奪った…ユウくん、貴方よ…」辺りの空気は槍のように鋭く張り詰めたものから一変し、やわらかい春の日だまりのような空気へと変化した。』


「なげーよ」

「長か…」

「長いっすわ」

「銀と健ちゃん練習行ったでぇ!わいも行く!」

「ユウく……一氏…一氏くん」

「こっ、こは、小春ぅぅうえ、えええ、え、小春!え!えぇ!?こ、えぇぇ!?そんな、そんなバカ…バナナ!そんなバナナ!!」

「次財前なー」

「フッ」

「鼻で笑んなクソピアスぅぅぅう」


『みんな死んだ。END』


「ええええええ!?」

「え、なに、なんで殺し…え?」

「完璧や」

「ちゃうちゃうちゃうちゃうちゃう」





「(今日は新聞の発行日や…謙也に頼んだけど…うん、大丈夫やろ。きっと大丈夫や、うん)」

「白石くん…小説どないしたん…?」

「え」

「楽しみにしてたのに。残念やわぁ」

「え…え?」

「お疲れさま」

「えええええ!?」


 おはようございます忍足謙也です。教室に入ろうとしたら白石くんが女子に励まされていました。僕は何も知りません。僕は無実です。聞こえません。見えませ「謙也」ん。聞こえません。見えません。


「謙也」

「あ…!お、おおおおはよう白石くん今日もええ天気イテテテテッやめてつねらんといて」

「忍足」

「ちゃうねん!これにはちゃんと訳があって…!」

「おいこら」

「俺だけやないから!これ書いたの俺だけやないから!!」

「今スグ続編を書ケ」

「ハァッ?……ハァッ!?」

「気になるワ〜」


 気になると言った白石の頬にキラリと光った涙を見た。お前が俺たちに頼んだのが悪い。だって俺たちバカばっかりなんやもん。いや、今のバカばっかりはダジャレとして言おうと思ったんじゃなくて、たまたまこうなっただけだからいや別にウケ狙いちゃうk


20111219:バカワイイ



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