※夢じゃない




 オサムちゃんがタバコを買いに出かけてから数秒後のことやった。ガサガサと音がして、振り向くとユウジがビニール袋をあさっていた。それはそれは真剣な表情で。よく見るスーパーの袋から次々と顔をだす調味料やら野菜やら。
 朝から謎だった。大きめの家具を買ったときのような袋を、持ちにくそうに抱えて、肩にスイカの入ったネットをぶら下げて。そのときのユウジの顔は悲しみを帯びた無表情に近い顔やった。原因は金から始まって春で終わるアイツやろうな。
 ビニール袋の一方的な呼び掛けが止まり、ユウジが口を開いた。「謙也、さっきから何ガン見してんねん」それに続けてちょいちょいっと手招きしてきた。ゲームのコントローラを置いて近づいてみる。うわあ。


「なに?なにが始まるん?」
「いやあ、暇やから」
「暇になること想定か」
「2人して何してうわあ」


 白石くんもビックリ一氏くんのお買い物。改めてじっくり見るとシュールやった。プリン醤油たくあんイカの塩辛バニラアイス蜂蜜マヨネーズ豆腐サイダー烏龍茶ヨーグルト…他にもよくわからない物がいっぱい。気になったのか自分もコントローラを置いて覗きにきた財前はこれを(特に塩辛セットを)見て、この世の終わりのような顔をしていた。


「きも」
「黙れ五輪ピアス」
「黙れホモ」
「なにするつもりやねん」
「昨日テレビで見たんや」
「あ、俺わかった俺も見たで」


 イエー!と声を揃えて白石とユウジがハイタッチ。ぱちーんといい音を部屋に響かせた。そのあとユウジがポケットから小さく折り畳まれたメモを取出し、それを俺たち3人も覗く。


「苺+マヨネーズ=大トロ…」
「これするんすか」
「ずっとしたかったんや…!」
「家でひとりですりゃええやん」
「淋しいもん…」
「なにこいつ誰?きっも!」
「しねスピードヘタレスター」


 じゃあどれからするー?白石のテンションは女子になった。それに続いてユウジが、みんなでオソロがいいねー!財前はゴミを見るような目でふたりを見ていた。そして俺はなぜか今日、テンションが低いことに気が付いた。よし、テンション上げてこうぜ野郎共!!そう思って口走ってしまった俺のボケはあいつらの完成度が高く、華麗なスルースキルによって流された。ひどい。


「まず何からする?」
「プリン醤油でうに」
「まあ定番やな!」
「じゃあヨーグルト塩辛でキャビアは最後で」


 プリンはまあまあいけた。決して「うに」に近いわけでもなかったんやけど。白石が、ええええぷっちんせぇへんの?とか騒いでめんどくさかったからお見舞いとばかりに俺はスルーしたのにユウジと財前が構うから…。


「牛乳麦茶砂糖でコーヒー牛乳」
「おええええええええ」
「謙也さんあほっすわ」
「これ組み合わせ的に無理や!」
「俺これしたい!」
「あ?バニラアイスと醤油で」
「みたらし団子…あ〜」
「醤油出番多すぎちゃいます?」


 あ〜あかん。俺だんだん楽しくなってきた!まあ本当のことを言うとこれ始めるって聞いた途端ちょっと興味持ったんやけど!あかん楽しい。新しいことに挑戦するのめっちゃ楽しいいいいい!!実験さいこうやな!ノーベル賞ううううう!!ガチャ。え?「ただいまー」え?


「お!どないしたんオサムちゃん」
「…」
「え?オサムちゃん?」
「ここ俺の家。オレノイエ。何の実験かと思ったわ」

「「「「あ」」」」


 完全に部室や思って散らかし放題だったわ〜。3人でテヘペロっとすると、それは明日の練習メニューが倍になる魔法なのであった。てか財前てめえ逃げたな。




(2011/09/11)
Plusさま提出



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