※名前変換はShortページで




 スーパーの出入口で思わずあっと声をあげてしまった。そして急いで両手をお口へ。やばい。やっぱ運命だったんじゃな俺たち。弧を描く口元がバレないよう、口に当てた両手ぎゅっと力を入れた。やばい超うれしい。


「もしもしブンちゃん」
《おいお前いまどこ》
「スーパースーパー」
《今日部活》
「ええから聞いて」
《よくねぇよ》


 あのな、と俺が話はじめると丸井がちょっと待ってとガチャガチャしだした。なになに俺の話聞いて聞いて。電話の向こうでなんか言っとる。


《仁王の公開処刑!》
《仁王どこにいるって?》
《スーパーだってー》


 幸村が丸井にへぇーと返したところで俺の痺れは切れ、携帯に向かって喋る。早よ早よ。アイツ帰っちゃう。


「苗字さんがおる」
《好きな人っすか?》
「おん」
《で?》
「どうすればいい?」
《…待って、ウケる》


 電話の向こうで幸村が鼻で笑った。ひどい。だって俺、どうすればいいかわからんもん。そう告げるとまた鼻で笑われて、丸井がお前ホント仁王?え、ヘタレじゃね?仁王まヘタレじゃね?と面白くないことを言うので、とりあえずもう一度どうすればいいか聞いてみた。


《わざと前通って偶然!みたいな》
「お母さんおるもん」
《諦めて部活来い》
《女が1人になった所を狙え》
《遠くから見てればよくないっすか》


 赤也の採用。俺がそういうと幸村と丸井が大声で笑いだして、お前ダセーだとかマジヘタレだウケるだとか悪口を言われた。


《話し掛けろよ》
「え〜お母さん〜」
《もうそこで娘さんくれって言えば》
「あ!あ!帰りそう!」


 涙目だ。悔しい。長期休暇中に部活に入ってなくて補修も受けてない子に会うのがどれだけ難しいか。レジに並んでいる苗字さんと、あ、お母さんも苗字さんじゃ。籠のなかの物が次々とまた新しい籠の中に入っていくのを見てもう諦めた。俺はこの程度の男なんじゃ。ぐすん。スーパーに来た理由のネギが入った袋を右手にとぼとぼ歩く。うちの女はなんて人使いが荒いんだろう。


《はやく部活来い》
《かゆっ蚊に刺された》
《ムヒ持ってるっす》
《さすが!》
「部活風邪で休む」
《黙れ》




0824 これが一番オチないな



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -