『それでねー、』 「苗字っている?」 友達と世間的にいうガールズトークを繰り広げていると、誰かに呼ばれた気がしたから振り返ってみた、ら、ガムをくちゃくちゃ噛みながら偉そうな態度の丸井くんだった。後に仁王くんも連れてきてるもんだから喧嘩の呼び出しかと思ったけど私はそんな、男子に喧嘩を売られるような女子じゃない。そもそも、その考えが頭に浮かんだのは2番目。最初に浮かんだのは1ヶ月前の14日のことだった。 「あ、いるよー」 今すぐ友達の腕を引っ張って、いないよと叫びたかったけどもう遅い。バレンタインのことがあって自分で勝手にギクシャクしてしまった私が恥ずかしくてしょうがない。丸井くんは沢山チョコを貰ってるけど私は丸井くんにしかチョコをあげてないんだからそうなっても仕方がないと思って忘れようとしたけど、それもムリだった。ドキドキしながら渡したあの1場面1場面が頭からこびりついて離れないのだから。 ああ、今すぐに逃げたい。こうして丸井くんが近づいてくるにつれて動きを早くする心臓を一瞬いらないと思ってしまった。私の人生の汚点。ちらちらと丸井くんを見ていると丸井くんも、なんか、ギクシャクしてるのか知らないけど仁王くんのブレザーの裾を掴んで離していなかった。そんな姿にもキュン。 「苗字」 『あ、うん、どうしたの?』 丸井くんが仁王くんを連れてきたもんだから私も競うように友達を1人召還した。デュエル!そんな感じで簡単に終わってしまえばいいと思った。だけどそれが終わらないのが現実だもん。神様はこえられない壁は与えないって聞いたことがあるけど、どっちにしろ神様は意地悪だと思う。 「バレンタイン、サンキュー」 『え、う、ううん、ごめんね、手作りとか』 「う、うまかった!」 『…ありがとう』 「それでよ…」 顔に体中の熱が集まってくるのがわかった。恥ずかしいのと緊張と不安が混ざり合って、このまま私まで熱になって空に消えていくんじゃないかとか考えた。 「今度、遊びに行かね?2人で」 ホワイトデー (2011/03/30) だって彼らは中学生!来年のバレンタインが来るまでホワイトデー!← |