※高校生、()は小声




 大変だった。今年のバレンタインデーは特に大変だった。何年ぶりかの月曜日のバレンタインデーには立海の女子たちもおお張り切り。今まで以上に大きなチョコレートも貰ったし、キラキラした包装紙のチョコレートも貰った。断るのも失礼だし、全て受け取ったのは俺なんだけど、心の底から嬉しいとは生憎思えない。何かが足りないと思った。
 女の子から初めてチョコレートを貰った幼い俺の喜び様が目に浮かんだけれど吐いた白い息と共に消えた。今、目の前にいるのはテニス部の面々。バレンタイン戦争となった一日も、もうすぐ終戦を迎える。日誌を書きおわって今日一日を振り返っていると、ユニフォームから制服に着替えている蓮二が口を開いた。


「そういえば精市。例のヤツからは貰えたのか」
「…貰ってないよ」
「友達にはあげてたぜぃ」


 ふーん、と適当に返して立ち上がり、部室のドアを開けた。俺が出るとみんなもぞろぞろ出てきて、赤也がファミレス行こうなんて言うから丸井が盛り上がっちゃって、雰囲気的にファミレスに行くことになってしまった。


「あー…」
「ゆ、幸村くん、何食う?」
「ああいいよ俺チョコ食べるよ」
「幸村、」


「(ご乱心…)」
「(ご乱心っスね…)」
「(てかファミレスで女子に貰ったチョコ食うって)」
「幸村、」


「幸村、見てみんしゃい。アイツじゃ」
「あ?」


 無視しても仁王が呼んできて「アイツ」なんて言ってくるから仁王の指さす方向を見た。その先には今日の俺のテンションをこんなことにした真犯人がいて。机に置いていたチョコが1箱落ちてしまった。(もちろん机に置ききれないほど貰ったから)


「苗字ー!」
「(バカ呼ぶなブタ!)」


『あれ、こんにちはー…ってすごいね幸村くん、チョコ』
「え、あ、違うよこれ全部真田のなんだ」
「む?何を言っていr
『すごいね真田くんこんなにも!幸村くんは?』
「俺は真田みたいにモテないから1つも貰ってないんだ」


 やばいやばいやばいやばい。なんでこんな、偶然すぎるじゃないか!バレンタインデーの放課後に寄ったファミレスで偶然会うなんて…!ってなに仁王と丸井と赤也ニヤニヤしてんだろ後でひねり潰してやろう。覚悟して、


『じゃあかわいそうな幸村くんにチョコレートケーキ奢ってあげる!』




バレンタインデー


(2011/03/09)
ホワイトデーが来るまでバレンタイン(^O^)



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