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『佐助…?』
気付けば痛いくらい抱きしめられていて、少し顔を歪めた
『い、たいよ…』
「ごめん、離せない」
佐助の予想外な言葉にピタリと羅唯は動きを止めた。
「今度離したらまた俺様の前からお前は消えるだろ」
『佐助…?』
初めて佐助が私に昔の話をした。だけどそれは思い出せない程切なくて、ただただ私は俯く事しかできなかった。
「だから…今度こそは…」
『佐助…泣いてる?』
顔を見れば涙など流しては居なかったが、今まで見た事ない佐助がそこには居た。
「きっと思い出したら羅唯は俺様のところから居なくなる」
『なぜ…?』
「それくらい、わかってるさ」
いきなり体が離れたと思えば、佐助は自嘲気味に笑って背を向け歩きだした。
『……ねぇ佐助!』
私の言葉を聞かずに彼は歩みを止めない。無責任だってわかってる、だけど気付けば佐助に抱き着いていた
「羅唯…っ?」
『私…佐助の側に居たい……それだけじゃ駄目?』
今は、それしか言えなくて。佐助はクルリと振り返り、私に口付けた。
「もう……充分。」
愛の言葉はいらないよ
(今の俺様にはほんと)
(充分すぎる答えさ…だから)
(“側にいて”)
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