スラリとした長身とアンニュイな表情から目が離せなかった。
折れてしまいそうなくらい細く見える骨張った腕、伏し目がちな涼しげな目元、うっすらと開かれた形の良い唇。
顔形は明らかに突出したものはないはずなのに、何故か目を奪われる彼の存在感に自分の喉が上下するのが分かった。
さんさんと降り注ぐ真夏の太陽の下、額から頬へと流れ落ちる汗がとてつもなく色っぽい。



「……球児って、エロ」

「やめんか」



金網に指を絡めグラウンドを覗き込んでいた俺の頭を親友のマサが加減なく引っ叩く。



「ちょ、マサくん痛いんだけど」

「黙れ、キモい、死ね」

「ひど…っ!」

「酷いのはおめぇの頭ん中だろーが!球児相手に盛んなよ」

「だって!見て!あの背ぇ高いやつ!」

「ああ?」



マサの肩を抱いて金網の向こうを指差すと面倒くさそうにマサがそちらを見やる。
金網の向こうの彼は薄い形の良い唇を少し尖らせふうっと息を吐くと、長い脚をスラリと持ち上げて大きく振りかぶった。
球を投げているだけなのに、何故彼がするとあんなにも色っぽく見えるのだろう。



「それはお前が盛ってるからだろ」

「あれ、俺今声に出してたかな?」



真顔で訊くと真顔でそれすらもお前は自覚がないのかと呆れられた。
うん、前から思ってたけどマサは俺の扱いがちょっと酷すぎるよね。



「だいたいよぉ、球児なんて男くせぇし汗くせぇし童貞くせぇよ」

「ばっか!童貞臭いのはいいじゃんか」

「……やっぱお前の好みわかんねぇよ」



そう言ってまるで残念なものを見るかのような視線をこちらに向けるマサ。
言っとくけどおれは何を言われたって全然へこたれないから。
気にしてなんかないんだからな。



「なんていうか、彼の童貞っぽさは清らかな感じ?ってゆーの?」

「……頭沸いてる?」

「お前童貞バカにすんなよ、そんで俺のこともバカにしないで」

「なんでもいいけどお前どれのこと言ってんの?みんな坊主でわけわかんねぇ」

「今球投げてるやつ!背中に1って書いてあるやつ!」

「お前ぜってぇ野球知らねーだろ」

「今それ関係ないじゃん!」

「あー、背高ぇな」

「……」

「ヒューっ、球速ぇ」



じとっとマサを睨みつけるがマサは何も感じていないようだ。
話をコロコロコロコロ変えやがって。
こいつ、絶対真面目に俺の話し聞く気ねぇーな。



「お前より背高いんじゃね?好み変わったの?」

「背高いけどめちゃくちゃ細いんだよ!余計な肉がないってゆーかさ、抑えつけたら腕折れちゃいそうじゃない?」

「……」

「でさでさ、あの表情ね!暑いからなのか真剣なのにどこか物憂げってゆーかさ」

「ああ」

「あの目元と口元が色っぽいんだよなあ、幸薄そうでいい」

「……成る程」

「おっ、さすがドSのマサさん分かってきた?」

「顔は好みじゃねぇけど悪くはねぇかな、あの怠そうな感じが」

「そうなの!やる気あるんだかわかんないあの表情がなんかめっちゃツボなんだよ!さっすがマサ!分かってんじゃん!」

「つーかそう考えっとすんげぇエロいなあの表情、歪めてぇ」

「ちょ、マサさんそれ問題発言だから!てか先に目付けたの俺だし!」

「あ?関係ねぇだろ?」

「関係あるわ!マサってバカなの?!」

「お前よりマトモだから」

「だいたい、あのエロさに気づいたのは俺が先なんですけど!」

「俺も今気づいた」

「臭いとか童貞とか言ってたくせに!」

「今思えばそれも興奮するな」

「まじふざけんな!お願いだから横取りしないで」

「まあ、カズ諦めろ」






((あいつらうるせぇー!練習になんねぇー!てかいろいろおかしいから!))










「夏川、ちょっとベンチ隠れて来い」

「はい?」

「変態共を退治してくる」

「?はあ、」









end.



















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夏川くんは左腕投手で二年生。
エースで身長179cm体重60kgという隠れ設定があったりします.
変態共には全く気付いていません.
その後キャッチャーをつとめるキャプテンが変態共を退治します.


高校球児萌える……!



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