時間は夜の11時。ぶっちゃけ俺はかなり眠たい。なんでこんな眠たいのか分かんねぇけどとりあえず早く風呂に入って布団に潜り込みたい。だけど今俺がいるこの場所は相方の実家なわけで。好き勝手しようにもできない状況だったりする。


相方がゾンビをひたすら倒しまくっているのを俺は横でただボケっと見ている。やることもねぇしな。いや、やることねぇのはコイツのせいか。
テレビ画面の中の主人公がドスンドスンと足音を響かせて走っているのを見てゾンビがどこに潜んでいるのか分かんねぇのにそんな存在感全開でいいのかよと内心突っ込んでみるがそれもなんだか虚しい。勝也はそういうの気にならねぇのかな。
チラリと横目で見やれば真剣な顔をした相方がダダダダダダと銃を連射している。ゲームに熱中してるのか俺の視線に全く気づいていない。眉間に皺を寄せる表情はちょっとかっこいいかも。なんてぜってぇ本人には言わねぇけど。
「うお!」と突然奇声をあげた勝也につられテレビ画面に視線を戻す。画面の中では一際グロいゾンビが主人公に飛びかかっているところで、あまりの気持ち悪さに思わず俺の体も仰け反る。勝也があ!あ!と叫ぶ間にあれよあれよ画面は真っ赤に染まり主人公が死んだことを物語った。



「死んじゃったね」

「クソが」



チッと舌うちして画面を睨みつける勝也はコントローラを握り直して体勢を変える。



「優希ちょっとどいて」



横でおっかかっていた俺を押し退けてうつ伏せになる勝也に若干腹がたつ。時計を見れば何時の間にか0時を回っていた。文句を言ってやりたいがなかなか倒せないゾンビに苛立っている勝也を今刺激するのはあまり良い選択ではない。機嫌の悪い勝也は相当怖え。
仕方なく俺はずりずりと後ろへ下がる。勝也もそのうちクリアできなくてゲームを放棄するだろう。そしたら風呂に入ってすぐ寝よう。うつ伏せ状態の勝也を眺めながら俺はため息とあくびを噛み殺した。


それにしても。
うつ伏せに寝転がった勝也の後姿からなかなか視線がそらせない。後姿というよりも、ある一部分。それは俺が特に好きな部分で、ぶっちゃけて言うならば勝也の尻だ。恋人のひいき目かもしれないが勝也はスタイルがいい。背も高いし足も長い。着痩せして見えるタイプだが筋肉はしっかりついているし、何よりラインが綺麗なのだ。特に腰から尻、太ももにかけてのラインが半端ない。勝也のそれは明らかに男のそれなのだが、あの引き締まった上向きの尻は本当に形がいい。ジーンズの上から見ても分かるその絶妙な曲線に思わず喉が上下する。
いくら普段ネコだからって俺も立派な雄なのだ。むしろ何故俺がネコになってしまったのかさえ分からない。確かに身長は勝也の方が高いけど、ベッドの上で主導権を最初に握るのはいつも俺なはずなのだ。勝也はいつも最初は俺の下であんあん言ってるはずなのに、何時の間にかに俺が組み敷かれている。今さら俺が勝也に突っ込んでんのは想像できねぇけどやっぱりなんだか納得がいかない。ネコが嫌だとは今更思わないがやはり男として面白くないのだ。

相変わらずカチャカチャとコントローラをいじる勝也にも苛立ち、自然と俺の手は勝也の尻へと伸びる。こうなったらとことん嫌がらせしてやろう。放ったらかしにされたことと眠さに苛立った腹いせが理由だなんて随分子供染みたことをするもんだと頭の片隅では冷静なことを思う反面俺の両手は止まらなかった。



「優希やめろよ」

「ん?聞こえない」



テレビ画面を見たままの勝也に適当に返事をするが手の動きは止まらず上から下へゆっくりと勝也の尻を這い回り続ける。指の先まで意識して勝也が感じるであろう動きを繰り返す。さわさわとさすり、やんわりと揉みしだき、ねっとりと這わせる。ジーンズ越しでも分かるであろうその感覚に次第に勝也がピクピクと小刻みに震え始めた。
ここまできてしまえばこちらのものだ。勝也の反応に思わず口元が弛む。もともと勝也は快楽に弱い。自分が快感を得ることに貪欲でその本能に忠実だ。熱い息を漏らし出した勝也がチラリと視線をこちらに寄越す。その熱っぽい瞳が勝也の気持ちを全て語っていた。
俺は無言でニヤリと笑う。


「なあ勝也、風呂入ろうぜ」

「そんなの後でいいだろ」

「よくねぇよ」



このままいたした場合疲れきって眠りこけて風呂に結局入れないというパターンになりかねない。自分からその気にさせておいてなんだが、こちらとしては何としてもそれを避けたいのだ。



「なあ、風呂ぉ」



そう言って勝也を揺するが聞く耳を持つ気はなさそうだ。
ゲームを置いた勝也はくるりと反転して俺を抱え込むとがぶりと鎖骨に噛み付いてくる。



「したあとでいーだろ、どうせ汗かくんだ」

「だってぜってぇ寝るじゃんかぁ」



それに突っ込まれるこちら側としてはいろいろ綺麗にしておきたいというのが本音だ。あえてどことは言わないけど。あとトイレにいきたい。



「余計なこと考えてんなよ」



急にくいっと顎を持ち上げられて勝也と視線がぶつかる。
ギラギラと欲をはらんだ瞳がじっと俺の瞳を捕らえる。視線がそらせず、声にならない声が俺の喉を震わす。



「お前だってもうその気じゃねぇか」




ふっと口の端を持ち上げて意地悪気にそう囁く勝也の声に全身がカーッと熱くなる。
なんでコイツはいつもそんなに自信満々で自分本位なんだろう。いつも俺は振り回されてばかりだ。
ーー憎たらしいはずなのに。
それ以上に勝也を愛しいという思いが込み上げてくるのが、なんだか悔しい。
熱い吐息に掠れた低い声で耳元に囁かれる度、俺の思考回路はその甘ったるさにドロドロに溶かされて機能しなくなる。ーーもう、いいや。
風呂もトイレも、なんだかすでにどうでもいい。勝也の熱い唇が皮膚に吸い付く度にいちいち跳ねる身体から余計な思考も飛ばされていくみたいだ。やっぱりコイツにはかなわないんだなあ。
それがなんだか悔しくて、俺は思いきり力を込めてぎゅっと勝也の頭を抱きしめた。苦しそうにうっと声を漏らす勝也に笑みがこみ上げる。なんだかんだ言ったって、俺は今のこの状態にそれなりに幸せを感じているんだ。















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なんだか尻切れトンボ感が漂ってますね.
ちょっとRを意識して挑戦してみたのですが……見事玉砕してしまいました.
今の私にはここが限界のようです.





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