※ヤンデレ風 西軍側主で西軍全滅。











 血だまりに立ち尽くす。
二度も主を喪い、友も亡くして、なのに死ぬことも叶わなくて。
ただ、人を壊すしかできない自分がいて。
もう考えたくなかった。何も。




「侑哉」

「……」

「侑哉」





 呼びかける声に、顔を上げる。
日輪のように眩しい人。
僕からすべて奪う残酷な光。



「ねぇ?」

「なんだ?」

「僕さ、もう、疲れた」

「……」

「奪われてばっかりでさ、壊れたいくらい死にたいくらい苦しくて、それでもできなくて。忘れてしまおうかと思った。でも、出来ないんだ」

「侑哉」

「謝罪も甘言も聞き飽きた。竹千代はこんなんじゃなかった。家康、君は何がしたかったの?」

「それは」

「君風に言えば、僕の絆をすべて断ち切って楽しかった?そんなに足掻く僕が面白かった?」



 じりじりと家康との距離を縮めていく。
気付いてるはずなのに動かない家康に苛ついた。



「ねぇ、答えなよ」

「儂は、侑哉が」

「僕が?」





 いきなり名前を出されて、眉を顰めた。
家康お得意の戯言。そう思い、一歩踏み出すと、血にまみれた利き腕を刀ごと引っ張られた。
 当然、彼の手からは血が流れる。あぁ、彼も人なんだと思うと、何故か安堵する。
 そして見上げると家康の顔が直ぐ其処にある位置まで来ていた。




「儂はお前が欲しかった」

「欲しい?」

「あぁ、儂にはないものを持っていたからな」

「…それって僻み?」

「かもしれんな」

「僻みで、全部、全部壊したって?ふっ、あははははははっ!お前は一体なんなんだ徳川家康っ!」



 家康の握っていた刀を振るい落す。
ついでに指を削いでやろうと思ったが、読まれていたのかそれは叶わず、刀が地面に突き刺さった。
 と、同時に家康が僕の背に腕を回した。



「な、っなにを」

「やっと、やっとだ侑哉」

「くっ、家康っ」

「これで、侑哉は儂のものだ」





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ここで、この刀で、己もろとも刺し違えておけばよかった。

でも、彼の眼はひどく澄んでいて、狂っていて、それでも奇麗で。
己に似ていた。





2011/08/01 1:19




後書き






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