現パロで

政治家の息子(高校生政宗)×金融会社の息子(社会人で議員秘書主)



政宗ベタ惚れの逆ハー
ギャグで完全にBLの世界
元親が実兄





















 珍しく休暇を貰い行き付けの日本料亭に僕は居た。
美しい庭園。そこにある木々には可愛らしい小鳥が留まり囀る。
いつもならそれに耳を傾け酔いしれているのに…。



「侑哉、お前は今から伊達様に娶られるのだ」





 黒服だらけの空間で絶望的な言葉を聞かされていた。












 事の発端は、我が家が起業している金融会社の資金繰り悪化にあった。

 前々から危なかったのだが、不況に煽られどうしようも無くなったそうだ。
そうだ。と曖昧に言うのは自分が関与していなかった為詳しい事情を聞いていないからだ。

家業は既に兄が継いでいたので、大学を出て後、僕はとある議員の秘書として仕事をしていた。
そんな僕にいきなり家の為に縁談及び婚姻を結べと言う連絡が来たのが、丁度先週の今頃だった。

 いきなりで始めは戸惑い断っていたのだが、次第にやつれていく父と、上から伸びている紐をじっと見つめる様になった兄の行く末が怖くなり今日という日を迎えたのだった。





「侑哉本当に助かったぜ!」

「え、ぇ…兄さんが元気になってよかったです」

「あぁ!お前のおかげだ、侑哉が居なきゃ俺たち家族は皆首括ってたからな」

「物騒な…」

「それくらい危なかったってことだよ」



 音を立てながら兄の手が僕の背を叩いた。
力の強さに、飲んでいたお茶が器官に入り咽ていると、更に叩いてくる。
これは、今日の内に背中が赤黒くなるだろうと涙目になりながら思っていると、父親が部屋に入ってきた。






「父さん」

「侑哉、すまないが…」

「もう時間ですから」

「あーもうそんな時間か」

「侑哉…」

「父さん、そんな今生の別れって訳ではないのですから」

「そーだよ親父、何処いったって侑哉は家族だろ?」

「あぁ、そうだな」





 しんみりしながらも、縁談相手の居る部屋に向かう。
 軽い挨拶を交わしつつ、所定の場所に座ると、可笑しなことに気付いた。



「本日はこの様な縁談を頂いて大変ありがたく思っております」

「いえいえ、こちらこそ無理なお願いを聞いていただきありがとうございます」


 上座に就いた父が、見覚えのある男性に話しかけている。
相手は政界の重鎮である伊達氏だ。
何度か先生の付き人として会った事がある。
そんな相手が何故ここに居るのだろう?

そして、目の前には端正な少年が座っている。
少年というには精悍だが、かといって成人している様には見えない。
その子の隣にはオールバックの男性が座っていた。男性を見ていると目線が合ってしまう。
鋭い目線に居た堪れなくなり、目線を落とした。


 しかし、縁談と聞いて来たのにこの場に居るのは男性だけだ。
何故かと考えていると、父から唐突な言葉が聞こえてきた。



「侑哉、お前は今から伊達様に娶られるのだ」




 誇らしそうに言い放った父。
娶るとは、結婚の事だろう。
今一度、聞き返した。




「お、お父様?今、なんと?」

「お前は伊達様に嫁ぐのだ」

「…理解が出来ないです」




 伊達様に嫁ぐ。

衝撃的な言葉を二度も浴びた僕は、父の目の前に居る伊達様を見た。
目線が合うとにっこりと微笑まれた。




「侑哉君」

「は、はいっ」

「どうかうちの息子をよろしく頼むよ」

「は、はい、え?」

「小十郎後は任せた。私は行くよ」

「はい、畏まりました」

「あ、伊達様お送りします」

「悪いね、長曾我部くん」





 やんや、やんやと上座の二人が退席してしまった部屋は重い沈黙が漂っていた。

 今の伊達様のお話なら、僕が嫁がなければいけないのは、伊達様ではなく伊達様のご子息のようだ。

 そして、推測するに目の前の少年がご子息の様。
どうしたらいいか分からずに、そわそわしていると兄が一手進め始めた。



「あのよ?そこの餓鬼が伊達政宗か?」

「餓鬼とは…口を慎め長曾我部」

「あぁすまねぇな。右目さんよ?でどうなんだ?」




 若干寛ぎ始めた兄に、冷や冷やしながら目の前の彼を見る。
僕と目線が合うと、一瞬だけ口角を上げたように見えた。



「あぁ、俺が伊達政宗だ」

「そうかい、今回は助かったが」

「なんだ?」

「交換条件が何で侑哉なのかが聞きたくてねぇ」

「それは、Top Secretだ」




 流暢な英語と共に彼は立ち上がると、僕の方に手を差し出してきた。
きょとんとしていると、机を跨いで僕の隣に来る。



「It is early.」

「え?あの、わっ」



 二の腕を掴まれ、強制的に立たされた。
座椅子の上だったので、上手くバランスが取れずに彼に寄りかかってしまった。
慌てて謝罪し離れようとするが、いいと短く言われ胸に付いていた手を掴まれ、引き摺られる様に部屋を後にした。
途中、兄が喚いていたが気にも留めずに、彼は進んでいた。
さすが、政界の重鎮の息子だなと訳の分からない納得をしてしまうほど気が動転していた。



 暫く歩くと、彼がいきなり立ち止まったので、手を引かれるままに歩いていた僕は彼の背に顔を強かに打ち付けてしまった。



「あっ、す、すみませんっ」

「いや、」

「あの、お怪我などは?」

「ないぜ、それよりお前は大丈夫か?」




 振り返った彼が、すっ、と手を伸ばしてくる。
彼の背に打ち付けた鼻先を撫でながら、赤くなってると呟きつつ、顔を寄せてきたと思うと、僕の鼻先を生暖かいものが這っていった。
 


「え?」



 あまりに急な事で戸惑っている僕は、彼はニヤリと笑うと、近くの空き部屋に連れて行かれた。
 互いに向かい合わせに座る。



「悪かったな」

「はい?」

「俺の我儘に付き合ってもらって」

「我儘、ですか?」





 聞き返すと英語交じりの肯定が返ってくる。
意味が上手く理解出来ないと困っていると、彼が僕の左手を引いた。



「あ、あの?」

「I want to spend the rest of my life with you.Please marry me?」



 流暢な英語と流れるような動作で引かれた左手の薬指に口付けられた。
まるで童話の王子のような綺麗さで僕は一瞬動けなくなってしまった。
隙が出来たのがわかったのか、彼は口付けた薬指に冷たいリングを通した。



「これで、お前は俺のだな」

「は、はいっ?」

「お前は俺の嫁ってことだ」




 ニヤリと笑う彼に僕は恐怖を感じていた。





お嫁さん宣言



(あの、僕男…)
(あぁ、気にしないから大丈夫だ)

















2010/10/10 11:36



後書き









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