※軽い設定

・主は政宗が遠乗りのときに鈴の音が聞こえた方に向かったら落ちてた。
・主は元居た世界だと引きこもり、廃人で目から生きる光が失われた子。
・政宗の下で更生。
・珍しく真面目な筆頭。
・保護者と子供の関係に似てる

これで出来ます。
恋愛要素は無いに等しいです。
それでも良ければどうぞ










 チリン、チリンと長い廊下に鈴の音が響く。
それを聞いたら直ぐ様、鈴を鳴らした主の元へ走らねばならない。
それが例え、理不尽なもの言いでも。









「Ha!遅かったじゃねぇか侑哉」

「はぁ、はぁ…す、みません」

「息まで上げて、こんなもんか?」





 廊下から聞こえる鈴の音を頼りに、主がいる部屋に辿り着き、戸を開けた途端に嫌味を言われた。



「はぁ、ごめんなさい」



 ズルズルと廊下に膝をついてしまう。
こちとら、元居た世界で世間的に引きこもりをやってた訳じゃない。
それに、この世界に来た時より全然体力はついた方だ。
 第一、今日は野良仕事だって言ってるのに鈴を鳴らす方が悪い。
しかも、昼休みで自室に戻っていたタイミングを見計らったように鳴らすとは…。

 恨めしそうに室内を見れば、寛いだ様にこちらを見る、主・伊達政宗が居た。



「侑哉、いつまでそうしてる気だ?」

「あ、ごめんなさい。し、失礼します」



 姿勢を正して礼をして、この世界に来たときに真っ先に教えられた事をする。
漸く、政宗の部屋に入る頃には上がっていた息も整ったので、呼んだ要件を。



「えっと御用でしょうか?」

「…別に、ねぇよ」

「…はい?」

「只、呼んで見ただけだ」




 意地の悪い笑みを浮べる政宗に、絶句する。




「どうした?侑哉?」

「え、いや」

「なんだ?何か無いと不服か?」

「べ、べつに」

「何で呼んだ?って顔には書いてあるが?」

「っ!?」



 咄嗟に顔を手で覆うと、西洋被れな笑い声が上がる。

 そして、一頻り笑い終わると、僕の手を引っ張る。



「え?や、だめっ、汚れて

「別に俺は気にしない」

「でもっ」

「Be quiet.」

「政宗っ」



 土に塗れた僕を引き寄せ、外が見える場所まで連れて行く政宗。
そして、僕に外を見せるように立たせた。




「な、何を?」

「…今、お前は生きてるか?」

「え?」

「生きてる、と思えるか?」



 意図がわからない。と後ろにいる政宗を見ると、ふっと笑ってぐしゃぐしゃの僕の髪をかき回す。



「お前、いい顔になった」

「へ?」

「奥州、いや、ここに、来た頃よりいい目をしてるって言ってんだ」

「そう、かな?」

「あぁ、俺が拾った時は酷い目してやがったからな」

「……」



 懐かしそうに細められる隻眼と逆に、僕の目線は泳いだ。
自分の事とはいえ全く覚えてない自分がいて、何だか居た堪れない気分になった。



「面倒みてやった甲斐があったって事だな」

「うん、ありがと…政宗」

「礼はいらねぇ、俺がしたかったからしたんだ」

「そう、だったね」

「…鈴が、お前と俺を結びつけた」



 目の前に出された手には、いつも僕を呼び出す鈴がチリンと音をたてながら乗っていた。



「これが鳴ったら直ぐに来い」

「うん」

「絶対に来い」





 僕は答えるように、鈴と一緒に政宗の手を握りこんだ。





鈴鳴り






(で、本当に何も無く呼んだの?)
(あぁ)
(ねぇ?もう仕事に戻りたい)
(A~a?それは聞けねぇ)
(なんでだよ?)
(いいから、ここにいろ)








2010/08/24 11:57





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