※前に書いた隠れ恋慕の後日談(日常)に近いものです。 受けっぽい弱い政宗が苦手な方は引き返した方がいいかもしれません。
爽やかに明けた朝に似付かわしくないほど不機嫌な男が二人。 片方はベランダで洗濯物を干し、片方はそれを邪魔している。
「Hey!Honey?」
「おいっ?」
「侑哉?」
「いい加減にしろよ?侑哉」
『知りません』
ぴしゃりと肩に掛かった手を払い除けると 手に取った洗濯物の皺をとりながら、まだ空いている洗濯バサミに手を伸ばす。
「侑哉」
『なんですか?鬱陶しい。邪魔しないでください』
「洗濯物なんていいから出掛けようぜ?せっかく天気もいいしな」
『ホントに伊達くんは馬鹿なんですか?』
「なっ?!」
彼此このやりとりを何回繰り返しただろう? 万年発情期な政宗相手に頑張っている方だ。
『さっきから言っていますが、今日は学校があります』
「んなもんかんけ『あります』
『いいですか?済し崩しだったとはいえ、こ、いびと同士なんですよ』
「あぁ、そうだぜ?」
『なら、恋人の困ることをしないでくださいと何度も言っているでしょう?』
「Ah〜」
『バイト先にあれほどくるなと言っているのに来るし、ましてや学校では秘密と言ったくせに、学部が違う棟に毎回来るし。どれだけ僕が困ってるか知らないんでしょうね伊達くんは』
前科はまだまだある。 恨みを込めながらジロリと後ろに目線を向ければ、目線を背けられた。 この確信犯め。
「Sorry、侑哉」
『言葉だけならいりません。態度で示してください』
「だから、Date『それは謝罪ですることではないです』
イライラとしながら、洗濯機に手を突っ込む。 手にしたのは、政宗のワイシャツ。 何故この男が、僕の家に転がり込んできているのだろう。 なんだかどうしようもなく虚しくなってため息を吐いた。
「侑哉?」
『何ですか?』
「好きだ」
『なっ、そんなこと言って、嘘にするんでしょ』
「っ!嘘なんかじゃねぇっ!」
ガツンと窓に身体を押さえ付けられた。 鈍い痛みが身体を走ると無駄な思考が巡った。 窓が外れたり壊れてないかとか。 ぼんやりとしていると政宗が首筋に顔を埋めていた。
『ちょ』
「……」
引き離そうとすれば、背と腰に回った腕に力を入れる。 呼び掛けても応答無し。 何なんだ?と問い掛ける寸前にぼそぼそと何か聞こえた。
『な、何?』
「…か…うな」
『え?政宗?』
「だからっ!」
『っ?!』
耳元で叫ばれて身体がびくついた。 そんな僕の身体を押さえ付けるように政宗の腕の力が強くなる。 その割に目に見えてる政宗の背中が震えていた。
『政宗』
「…」
『泣いてる?』
「……だったらなんだよ?」
『いや…』
「侑哉」
『何?』
「嘘、なんていうな」
相変わらず首筋から顔をあげないものだから、政宗の低い声が耳をくすぐった。
『嘘?』
「…俺が、侑哉を…好きだってこと」
『政宗』
「俺はお前じゃなきゃ」
やっとあげた顔。長い睫毛が濡れていた。 息を飲んだ僕の唇に政宗の唇が重なる。
「侑哉、俺を否定するな」
『ん』
「好きだ、好きなんだ」
『政宗』
「もっと、俺を求めてくれ」
『政宗っ』
「本当は誰にも見せたくない」
『っ、政宗ぇ』
「好きだ侑哉」
好きだから、仕方ないだろ? いつどこで何をしてるか いつも気になっちまうんだからな
(あ、洗濯物) (俺も、手伝うぜ) (当たり前でしょ) (侑哉) (何) (愛してる)
2010.03.27. 00:14
⇒後書き
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