多分可能性の二人の卒業後 ≠春ちゃん 名前変換皆無
微妙に裏があるけど本番ではない。 苦手な人すみません。
ふと、耳を掠る風に身を竦める。
「ひっ」
「どうかしましたか?」
至って普通のトーンで問いかけるこいつにこれほど殺意を持ったことはない。
「どうかしましたか?じゃない。何故この体制で作業しなければいけないんだ?」
私は今、トキヤに抱きかかえられながら机に向かっている。 言っておくが、ここは私の部屋である。 我がもの顔で私越しに読書をしている一ノ瀬トキヤの部屋ではない。
「この方が私も指摘がしやすいですから」
「それだけの為に私の安息の地を侵すな」
ここ数日私は、このお気に入りである大き目のデスクチェアで仕事をしていた。 平均身長より小さい私には、このチェアは作業から仮眠まで過ごせる小さな家みたいなものだ。 それを、トキヤに半分以上占領されるわ、密着してるわで、作業がはかどらないことこの上ない。
「どうぞ、私は気にせず続けてください」
「ひゃっ」
わざと耳元で吐息交じりに答えるトキヤに、肘打ちの一つも決めたいところだが、うまいこと私の体とトキヤ自身の腕でダメージを与えられそうな場所をガードされているのでできない。 むしろ、腰の辺りをがっちりと固定されているので身動きもあまり取れない。
「どうしましたか?感じ「てないっ」そうですか」
くつくつと笑うトキヤに半ば諦めるしかないかと思った瞬間、耳の裏を温かいものが這う感覚がした。
「っあ、やっ、やめ」
止めろと言うのに止まない感覚と、それに伴って身の内から背中に伝わるゾクゾクした感覚を和らげようと机に爪を立てる。
「…触れるなら、私に触れてください」
「あっ、やだぁ、だめっとき、や」
机に触れていた左手は、トキヤの手に繋がれ、せめてもの抵抗にと右手はトキヤの膝に爪を思い切り立てるが殆ど無意味だ。 空いているトキヤの右手は残念なことに私のシャツの中に入っている。
「下着くらいつけたらいかがですか?」
「ぁ、だって、部屋、だもんっ」
「部屋だろうと、誰か来たらどうするんですか?」
「それはぁ、ん」
「少しは、女性としての自覚を持ってください」
「でもっ、んっ、トキヤしか」
「私しか?」
「トキヤしか来ないし、入れないっ」
性感帯を弄られているので、頭では言葉になるのに声にすると言葉が上手く出てこない。 本来なら、トキヤ以外この部屋に無理矢理入ってこないし、合鍵もってるのはお前しか居ないんだから入れないと言いたかった。 ぼんやりした頭で、不味いと思う。
「…我慢しているのが馬鹿みたいですね」
「出来るなら、そのまま帰ってくれ」
「仕事で疲れているパートナーを癒すのも仕事ではないですか?」
「結局お前はそれか」
わかってはいたが、もうこうなったら今日の作業は明日に回すしかない。 空中に浮いた身体を支える為にトキヤの首に抱き着いた。
性感アイロニー
「とりあえず、トキヤの曲は後回しだな」
「え?」
「春歌と一緒に書いてた曲の締め切りが明日だしな。やらないと音也と翔が困る」
「なっ」
「トキヤが邪魔しなきゃすぐ終わったし、話し合いも出来てふっつうに構ってやれたのに。また、仕事頑張れトキヤくん」
2011/11/04 23:41
⇒後書き
|