エムブロお題バトンより
Sクラス男主
夕日が差し込む教室。 バチンと規則的にホチキスを打つ音が響く。
「なぁ結斗」
「なんですか?考えなしの来栖翔くん」
「おまっ、それは朝から謝ってんだろ!つか家来が俺に口応えすんなよ」
「家来ですけど、ギブアンドテイクってもんじゃないですか?」
そういえば、勢いよく立ち上がった彼は椅子に座った。 なんというかこのやり取りを始まってから数回繰り返している。
事の発端は今日の朝のHR。 彼の大好きな大好きな(大事なことなので2回言います)日向先生から、誰か放課後に事務作業してくれと言うアナウンスがあり、彼は迷わず引き受けていたのです。
そして、放課後大量にある書類に泣きながら電話をかけてきたというわけで。 我ながら、お人よしだと思っています。
「なんで、そんなに集中力が持たないのか」
「うっ」
「ダンスや歌になれば素晴らしいのに…」
「ほら、人って得て不得手って俺のことバカにしてんのか!?」
「ええ。どうせならもっとご自身のバカさ加減に気が付いた方がいいと思いますよ」
バチンと紙束に針を打ち込む。 あーもーやめた!と机に突っ伏す彼を見ながら、手元は動かす。
再び、ホチキスの音が響く。 彼の仕上げた紙束に自分のを重ねる。 これが終われば、彼は喜ぶ。 だが、その先にもう一人いる。 なんだかそれが無性に悔しかった。
そのあと、互いに喋らずに先生に出された事務作業を終えた。 報告に行った先での彼の笑顔でまた胸が重くなったのは言うまでもなく。
自分も彼も男である。しかし、この感情は紛れもなく恋に近い。 悶々としていると、不意に腕を引っ張られた。
「おい、結斗。俺の話聞いてたか?」
「え?」
「なんだよ、お前、さっきからおかしいぞ」
「…おかしいかも、しれません」
「えっ、体調でも悪いのか?俺が、無理させたか?」
「いえ、その」
慌てている彼を見るのが居た堪れなくて俯く。
「結斗?」
「いいんです、貴方には関係ないから」
「なっ、関係ないってなんだよ!俺達パートナーだろ」
「…なら、ここで、貴方が好きだといったら何か変わりますか?」
「なっ」
「変わらないでしょう?あぁ気持ちが悪かったらパートナー解消してくれても構いませんから」
言うべきではなかった。なかったが、言ってしまったことを無くすことも今更できない。 彼に背を向けて、その場を立ち去ろうとしたが、身体が宙を舞い、強かに背中を地面に叩き付けられた。 痛みと何が起こったのか分からなかった。 目の前には、星空をバックに顔を真っ赤にした彼がいて、ますます混乱するしかなかった。
「はぁっ、はっ」
「あの?翔くん?」
「ちょ、っと、待て」
「え、だ、大丈夫?」
息を荒くしながら苦しそうにする彼の背中を撫でると、彼が自分の体の上に伸し掛かってきた。 何事かと思いつつも彼が落ち着くまで、そのまま背を撫でてやる。
呼吸が安定した頃、彼がぼそりと話し出した。
「…脅かすなよ」
「え?というよりも体調は」
「俺のはいつものことだ」
「いつもって、どこか」
「生まれつき、心臓が弱いだけだ。日常生活には支障はない」
「でも、今」
「それは、お前が脅かすから」
「…すみません」
「俺さ、お前とパートナー解消するつもりないからな」
「はい?」
「いきなり告って、逃げるなんて卑怯だろ?」
「でも、振られるのは目に見えてますし気持ち悪いでしょう」
「別に俺は気にしないし、なんならお前のこと好きだし」
「…生殺しですよそれ」
「違うって、校則に引っかかる好きってことだから。ホントだったらオーディションで優勝して言ってやろうと思ってたのにな」
好きって気持ちだけじゃ駄目なんだよ
態度で示さないと
2011/11/03 20:21
⇒後書き
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