エムブロお題バトンより
Aクラス男主
昨日の夜、確かに春ちゃんから預かった黒猫と一緒に寝た。 預かったのは春ちゃんが一晩お部屋を空けてお家に帰るとのこと。
それはもうどうでもいいかもしれない。
朝起きたら隣に男の子☆みたいな展開が許されるのか…。
「おいおい。なんだよこの非現実」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫だと、思うのか?」
一応、彼は日本語が喋れるようだ。 しかし、浅黒い肌に彫りの深い目鼻立ち、青い目に黒髪。彼の容姿から見ると日本語がアンバランスだ。 まぁ、彼は片言なので、そこでバランスは取れているかも知れない。 なんて、冷静になろうと考えてるけど、予測なんてしていない出来事に完全に頭がショートしてるようだ。
「結斗、ワタシは」
「ちょっとまて、えっと、俺は、神崎結斗で、早乙女学園のAクラスの生徒で」
「結斗」
なんでそんな心配そうにこっちを見ている。 しかも、なんか涙目じゃない?
「俺、昨日、春ちゃんに預かったにゃんこと寝たんだ。ってにゃんこもいないっ。春ちゃんが泣くっ」
慌てて起き上がって布団を捲ろうとするが、彼が手を抑えてくる。 なんなのこの子?
「結斗、聞いて?」
「何を?」
「ワタシがクップル」
「は、い?クップルってにゃんこ」
「だから、ワタシがクップル」
「いや、君人間の男の子じゃん。はっ、もしかしてクップルを攫って身代金とか要求するつもりとか?いや、俺金ねぇし」
「結斗、お願い落ち着いて」
ぎゅっと抱きしめられる。 ベッドで男二人が抱き合ってる図だ。 正直、俺は考えたくない。 そして、同室の奴が実家が近いからちょこちょこ帰省するやつでよかった。 朝起きて、隣のベッドでこの状況を見たら…。 考えて少し身震いをしたら、抱きしめる力が強まった。
「ワタシがミューズにお願いしたから」
「はぁ?」
「ワタシは愛島セシル。アグナパレスの第一王子」
「王子…?んじゃ、国賓級の留学生がなんで俺のベッドでにゃんこと入れ替わってるの?」
「留学生違う。ワタシ、呪いかけられ黒猫にされました」
「あ?」
「母の故郷に放り出されて、春歌に会いました。それで結斗に出会えた」
「えーと?途中からものすごいファンタジーなんだけど」
「ワタシ、結斗が好きです」
にっこり笑うセシルに口元が痙攣する。 いきなり出てきて、寝込みを襲撃されて、ベッドの上で抱きしめられながら告白するって。
「ごめん、意味がわからない」
「ごめんなさい。でも、ワタシのミューズは結斗。だから、私の呪いが解けて、元の姿に戻れました」
「呪いが、解けた?」
「はい」
「どうやって?」
きょとんとするセシルに、なんだか嫌な予感がする。
「もしかして、キス、とか?」
妹によく読んでやった童話を思い出していた。 あぁ言った童話の類の呪いは王子様のキスでハッピーエンドだ。
俺が、告げた言葉にセシルの顔が明るくなる。
「そう、そうです!ワタシ結斗のキスで元に戻れました」
「わーお…でも、俺は君にキスした記憶ないんだけど」
「寝る前に、クップルのワタシにしてくれました」
数時間前の自分を殴ってやりたい。 早急に猫型ロボットがこんなに欲しいと思ったことはない。 あの時、もしかしたら春ちゃんと間接キス?キャーとか下心1000%で、猫に対してキスなんかしなければよかった。 下心の所為で、人間に戻っちゃったこの子どうしたらいいの?
「俺さ」
「わかっています」
「え?」
「結斗はワタシを愛してくれていると」
もしもし、お兄さん?お話が見えません。
「ワタシも結斗を愛しています。愛があればワタシ人間に戻れると言われました」
「えっ、ちょ、まっ」
君を愛したいと願った所為です。
「っ、セシル」
「はいっ」
「も、無理だから、ほんと許して」
あれから、数時間愛を囁かれ、絆された自分がとても憎い。 あまつはなんか失ってはいけないものを失い、さらに似つかわしくないミューズの称号まで頂いていた。
「結斗のすべてが愛しい。結斗の声も心も澄み切った美しいミューズの調べ」
「あーもういいよ」
「ワタシは生まれてこんなに素敵な気持ちになったの初めてです」
甘い言葉を囁くセシルに、眩暈を覚え目を閉じた。 授業サボったし、携帯に鬼のように着信があった。…明日が怖い。 うとうとしかけた瞬間、腹のあたりにもふっとした感覚。 布団を捲れば、黒猫。
「あれ?戻ってしまいました」
「猫が喋ってるっ」
「あぁ、少しおまじないをさせてもらいました」
「セシルさんあんた」
「まだ、完全に呪いが解けてないようです」
黒猫のまんましょんぼりするのは止めてくれ。 むしろ、なんで、声が聞こえるか説明
「直接、頭に声が聞こえるようにしました」
「思考を読むなっ」
これから、俺どうやって生きていけばいいんだろう…。
「ワタシの最愛のミューズとして」
「おまっ、却下っ」
2011/10/28 12:18
「なぁ?」
「何?結斗」
「クップルの時、春ちゃんとちゅうした?」
「しました」
「戻った?」
「いいえ」
「(なんだとぉぉ、俺なら戻る確実に。こいつ間違ってる)」
「間違っていないっワタシは結斗を愛していますだから戻れた」
「思考を読むなぁぁぁぁっ」
⇒後書き
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