≠トキヤ
煩い、重い、うざったい。 なんでこんなヤツが人気急上昇なアイドルなんだよ。
長ったらしいスタジオの廊下を自分の控え室に向かって歩いていた。
「うにゃー!結斗ちゃんはっけぇーんだにゃあ」
「げ、HAYATOさん」
「まぁおんなじ現場だから会わない訳ないけどね?可愛いからギュッってしちゃお〜」
前方から収録終わりなのか衣装で、テレビに出てるまんまのキャラクターで僕に抱きついてきたのはHAYATOさんだった。 前に一度楽曲提供をしたことがあったのだが、それから大層お気に入りなんだそう。
「HAYATOさん、やめてください」
「ヤダ」
「素にならないでください」
「あー僕も早乙女学園に行きたい」
「大騒ぎになるんでやめてください」
「そしたら、結斗ちゃんをパートナーにして卒業オーディションで優勝して専属作曲家にするのに」
「…人の話聞いてないですね…一応、アイドル志望なんですけど?」
ずるずるとHAYATOさんを引き摺りながら、自分の控え室に入る。
「HAYATOさん」
「なぁに?」
「離れてくれません?」
「断る」
「何故?」
「だって離したらまた結斗ちゃん居なくなっちゃうもん」
更にHAYATOさんの腕の力が強まる。 あぁ控え室に入って良かったと思っていると身体が前のめりに倒れる。 手を出したので顔面は守られたが、のしかかってきたHAYATOさんの体重と反動の分で腕が痛い。
「HAYATOさん痛いです」
「ごめん」
「…ちょっとは考えてください」
「ごめん」
謝る癖に身体に巻き付いてる腕は離れる気配が無い。 膝が痛くなるので、HAYATOさんごと身体を横に倒した。
「いった〜い」
「何倍も僕の方が痛かったです」
横倒しになった所為で頭一つ分違うHAYATOさんの顔と近くなる。
「なぁに?見惚れてる?」
「綺麗な顔してるのにやる事残念だなと思ってました」
「結斗ちゃん意外と毒舌だよねぇ」
「貴方が一方的に悪いかと」
「…じゃあ、これ以上嫌われることはないね?」
「え?」
にっこり微笑むHAYATOさんに唇を奪われた。
恋する5秒前。
「んー元気貰ったから頑張ってくるね?」
「なっ、何」
「ボク意外と本気みたいだから結斗ちゃんの事」
バイバイにゃあ〜☆と元気よくドアからHAYATOさんは去っていった。 放心状態の僕を見つけた林檎先生の焦った声が聞こえたが殆ど意識は遠退いていて、いつの間にか収録を終え寮に居たのだった。
2011/10/16 00:09
⇒後書き
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