※トキヤパートナーな男主。(アイドル挫折⇒作曲) トキヤはHAYATO名義で活動中。 二人して歪んでしまってます。
五線譜の上に音符を落とす。 ワンフレーズ書いただけで、なんだか気に入らなくてノートを破く。 さっきからこれの繰り返しだ。
「あぁっ、もうっ。書きたい感じはあるんだでも、どうしたらいいんだ」
握ったシャープペンシルに力が加わり嫌な音がする。 ―あぁ前に金属製にしろって言われたっけ。 不意に部屋の片隅にあるテレビに映るパートナーが見えた。
「うっわームカつく」
その辺に落ちていた紙屑を画面に向かって投げた。 乾いた音がして紙屑がテレビの前に落ちる。 それすらもイライラする。
「俺だって、俺だって…そっちがいい…」
「それはできません」
「っ?!」
死角から伸びてきた手が首を通りながら、俺の体の前に交差した。 ふっと馴染んだ匂いがする。 振り向く前に肩に重みを感じた。
「……驚かすなよ」 「驚かせようと思ったんですからいいんですよ」 「…お前な」 「ただいま戻りました」 「…別に待ってねぇし」
素直じゃないですねと呟いたと思ったら、長く伸びた俺の襟足の毛を掻き分け首筋をなぞってくる。
「っ、やめろ」 「殆ど消えてますね」
自分の体温より熱く湿ったものが露出された首筋を這う感覚に俺は身を固くした。
「…一週間ですね」 「トキヤ、やめろ」 「長かったです」
軽いリップ音がした後すぐに首筋に鋭い痛みが走る。 痛みに顔を顰めつつ、身体の前に垂れ下がったトキヤの手を握った。
「結斗、結斗結斗」 「…トキヤ、お帰り」 「結斗」 「何?」 「…私がいない間、私のことだけ考えてくれていましたか?」 「あぁ、お前だけだよ」
それならいいです。そういって、やっとトキヤは身体を離した。 そして、回転式の椅子を回し俺の体ごと自分の方へと回す。 当然、俺とトキヤは向き合う形になり、お決まりのように顔にキスが降ってくる。
「トキヤ」 「私は片時も結斗のこと以外考えていないんです」 「トキヤ」 「もっと、名前を呼んで、私が私であるということを示して結斗」
たぶんきっとHAYATOはトキヤにとって負担になるんだろう。 でも、それも才能。俺はそれに漬け込んでいる。 本当は俺もアイドルになりたかった。 でも、こいつには勝てない。そう悟った。 だから、作る方に回った。こいつにやらせるために。 きっとそれすらも知っていて付き合っているトキヤの考えはわからない。
「トキヤ、トキヤ」 「もっと、もっと」
もっとと強請りながら、唇をふさぐトキヤに心の奥で苦笑しながら受け入れていく。 罪悪感か同情なのかはたまた恋やら愛なのかよくわからないまま、俺はこいつに繋がれる。
互いに歪んでしまった関係。 それでも、俺達には丁度いいのかもしれない。
「なぁトキヤ」 「なんですか?」 「俺が、お前とパートナー解消するとか言ったらどうする?」
「…そうですね。今以上に愛して差し上げますよ。一生私だけを見つめてくれるように縛り上げても離したりしません」
籠の鳥
2011/09/02 01:13
⇒後書き
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