「会長〜、早く掴まってください」

「じ、自分で登れる!」

「またまたぁ〜、登れないくせに」

「ふ、普段登らないからだ!!君こそ女たるものもっとおしとやかに「はいはいわたしはそんな女々しくありませーん!ホラ、早く掴まってくださいよー手に血が上ってきちゃいます」

会長は渋々私の手に掴まりやっとの事で樹の上に上がってきた


芸達者だなぁと嫌味っぽく会長が呟いたので
お褒めの言葉ありがとうございますとわざとらしく頭を下げてみせる


因みに樹に登ろうと言ったのは私だ


だって会長が運動苦手なのは見た目からして知ってたし外に出た彼を私以外の誰かに見せるのはいやだから。


これって、独占欲?


私達は校内の樹がちらほら生える中の一番大きな樹に座り私は足をブラブラさせ、会長はあぐらから片足を立てた体制になる

最初はぶつくさ言っていた会長も風と葉の音に心を奪われたように幹に背中を預け少し上を向いて光の揺れる木漏れ日を見上げた

「…魚みたいだ…」

あぁ、そういう例え方もある

葉の隙間を縫ってキラキラと届く光は丁度水面を下から見たような感じだ

しばらく上を見上げてふと会長に視線を落とすと眼鏡を外して軽く眠っているようだった

膝の上に手と眼鏡が寄り添うようにしてピクリとも動かず、少し首を傾げた様な状態で目を瞑っている


彼が生きていることを証明出来るのは呼吸によって少しだけ動いている肩だけだった




彼の柔らかい髪がふわりと風に靡く
彼の顔を蝶が舞うように光が通り過ぎる



…魚っ…!!



正にお預けをされた猫の様な心境だ

猫がそんな芸を覚えるのかは知らないが、きっとこんな気持ちだ

食らい付きたい気持ちを頭を振って必死に押さえて誤魔化すように更に上に登ってみた

もうすぐ授業が始まるらしく生徒はまばらだ



そして何を思ったか不意に。本当に不意に私は、自分が掴んでいる木の枝をみた






「いぎゃぁああぁあぁあああぁあ!!」





「…最近よく叫ぶなお前は…どうした」

下から会長の声が聞こえた


「けっ、毛虫っ!!」

「そんなもの無視しろ」


下で気だるそうに会長が眼鏡を掛け直すのを感じた
多分顔は心底不機嫌だ

「いぃいっぱいいるうぅぅ!!」

「いっぱいって、…どれくらいだ?」

「そんなもん私に数えろって言うんですか!!」

確かにな、と感心した様に会長が云う

感心してる場合じゃないだろおぉぉおお!!


自分が今まで掴んでいた枝にも、先の葉にも沢山付いているのが見えて更にパニックに陥った

「もぅいやぁっ!!」

「おぃ、手を離すな!!」

「だって掴んだら毛虫がいる!!」

「おぉぉ落ちるぅ!!」

「当たり前だ!!」



グラリとバランスが崩れて落ちる私

最後の一言と同時に飛び出した会長が私を間一髪で受け止めた


みみみみ密着!!!!!!!


「って…ぅわぁぁあっ」


そのまま二人バランスを崩す

私は無我夢中で会長の首にしがみついた





頭から落ちる、と思われた私達の重力に沿った放物線は、爪先の方から遠心力が掛かって足が先に落ちていった

妙な浮遊間

目を開けると会長が片手で樹ぶら下がっていた

よっ、と小さく声を出して私ごと軽々しく着地する


「…」

「…大丈夫か?」

唖然とする私に会長は私の掌を覗き込む

「…ぁっ、大丈夫ですっ、」

掌を撫でるように触られて思わず手を引っ込める

大丈夫か私。赤くなってないか?

「一応保健室いくか。」

「大丈夫ですよ!」

「痒くなったら困るだろう」

ぐわしと私の腕を鷲掴みにして会長が歩き出す

捕まれた部分が熱い気がして、私は苦し紛れにふと思った事を言う





「…そういえば会長、…意外と運動神経いいんですね」












すると会長が意地悪そうにふりかえって復唱するように言った





「…そういえばお前、意外と重いんだな」






fin




指先にキス様へ
tuneより

よくありがちな展開ですね
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -