「ふぁ〜...」




今日は珍しく午後の練習が休みだった。


俺の部屋の床には仰向けに寝転びながらあくびをするなまえ。
薄いキャミソールにショートパンツという無防備な格好で、
俺が持ち込んだ本を黙々と読んでいた。


彼女が読んでいるのは日本の戦争の歴史だ。
俺はそこからよく戦略のヒントを貰っている。
中身は当然中学生には難しめの内容だ。
なまえは確か漢字が得意だったはずたから読めるだろうが、内容までは馬鹿な彼女が理解できるはずが無い。
どうせ目を上から下に滑らせて文字を読んでいるだけ、だろう。


そうだ。


彼女は、なまえは馬鹿なんだ。




お前にそんな本読めないだろ、と言ってみれば
読めるよ、理解できないけど。と、返された。




ほら。
やっぱり馬鹿だ。






「昨晩遅かったみたいだが、誰のところに行ってたんだ?」

「んー?えーと..吹雪くんのとこ。もう激しいのなんのって」

「ははっ、アイツはセックスだと性格変わりそうだよな」

「なんていうの?支配欲?みたいなのが出てくるらしいんだよね。可愛い顔してえげつないです本当」

「それはアツヤの方じゃないのか?」

「いや士郎くんの方」





そうか、と会話を切って、俺は彼女の傍に腰をおろした。
未だに本に集中するなまえの顔をまじまじと見つめてみる。

なまえは可愛いと思う。
長いまつげに綺麗な肌、くっきりした目に通った鼻筋。
少し化粧をすれば高校生の中に居ても全く見劣りしないだろう。
もともと彼女は同年代の中にいても少し大人びて見える。


...仕方ないのだ。


彼女は馬鹿なのだから。






「今日は誰のところに行くんだ?」

「んー?特に頼まれてないけど」

「じゃあ決めた」

「何を」

「今日は俺の傍に居る事。今夜は俺が相手な」

「ええー!また有人?」

「なんだ不満か?」

「いえ...滅相もございません」




ようやく本から顔を上げたなまえがジト目で俺を見つめた。
本で自分の顔の下半分を隠すようにして、目だけで「本気?」と訴えている。
そんな顔をしても、そこには反対や拒絶の意味はない。
そしてもちろん俺も本気だ。



「ああ、そうだよ。お前に隙間はやらないさ」




なまえの額にかかる前髪をかきあげて額にキスをする。
なまえがくすぐったそうにするから更にもう一度、今度は鼻先に口づけをふらし、
最後は唇を重ね合った。






これが、
俺が馬鹿ななまえにしてやれる唯一の罪滅ぼし








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