「あたし、空が飛びたい」
「ああ、飛べるさ、なまえなら」
小さい頃に、頭のいい幼なじみに言われた言葉を、未だに信じている。
有人はいつものようにあたしを馬鹿だ馬鹿だという。
頭の良い有人からしたらあたしは本当に馬鹿なのだろう。
有人とあたしは所謂小さい頃からの幼なじみというやつで、
なんでも器用にこなす有人に比べて、あたしは悲しくなるぐらい馬鹿だった。
いや、馬鹿でなければならないと思っていた。
空が飛びたいのだ。
有人曰く、馬鹿なら空が飛べるらしい。
ピーターパンは馬鹿な子を選んで空を飛ぶ旅に連れて行ってくれるのだと。
実際は純粋な子供なんじゃないかと思うが、純粋さと馬鹿さは確かに紙一重だとも思う。
純粋無垢になるにはそうとう難しい。なら馬鹿でも大丈夫だと。
確かに有人はそう言った。
「じゃあ、馬鹿になるにはどうすればいいかな」
「簡単だ。俺の言う事聞いてりゃいいんだから」
幼なじみはそう言って笑った。